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トリスの日記帳。番外編  作者: 春生まれの秋。
4/13

『シャナイアの日記』より抜粋

トリスの世界の、ほんの一部です。

日記として、抜粋しました。

本編とはほとんど関係しない、アレス・トースト(アリ君のお兄さん)が関わっていた、とある戦場での、歴史的非常識な話。

西方暦1070年8月15日。


いよいよ、私の発言から端を発したこの、『お茶会』が始まる。

主賓は、この場にいる、全ての言葉持つモノ『ヒト』。

場所は、奴隷制度を擁護する南方エクセター王国と、奴隷開放を目標に掲げる北方エクセター皇国との、境界区域。

時は、決戦前日。

目的は、『戦争に於いて、無駄な死者が出ない様にする事。そして戦争に赴く者達が、せめて、悔いの無い人生だったと、誇れる瞬間を残せる様にする事。』

私、猫人族カヴィーナスのシャナイアは。

ハイルランド全土に名を馳せている娼館『宵闇の館』の店主マダム・バタフライの協力の下、両国、両軍の全指揮権を買い取った。

ただ、1日だけ。






事の発端は、私が小耳に挟んだ『戦争が始まる』と言う、戦禍の火種の絶えないハイルランドでは、珍しくも何ともないごく普通の情報だった。

長い永い刻を生きてきて、特に珍しくも無いその情報は、珍しくナィーブになっていた私の心をじわりじわりと凍てつかせた。

かつて無い心のざわめきに、居ても立っても居られ無くなった私は、上司である、マダム・バタフライに相談したのだ。

戦争が始まるのは仕方ないけれども、救える命は有るのではないか、と。

巻き込まれなくていい筈の、不本意な方々も居るのではないか、と。

せめて、両軍のトップに、本心で、語り合う場を創れないだろうか、そう、お茶会の様な…。と。


私の話しを聞いた、マダムは仰った。

「なら、1日だけでも、戦場を買ってしまいましょう。」

と。

それからの、マダム・バタフライの行動は、速かった。

私の提案から、3日の後には、戦場のど真ん中の土地を買い占め、『宵闇の館』12号店の基礎工事が、始まったのだ。

否、それだけには留まらなかった。

一月後には、立派な店舗が建ち、両国との交渉の末、交戦前日の丸1日を、買い取ったのだ。

当然私は、そこに、店長として派遣された。

言い出しっぺなので、責任者である。

私は、慌ただしく、働いた。

農作業と料理しか出来ないと軍を逃げ出した脱走兵を、身体を売って生きて行くしかないと路頭に迷っていた少女達を、戦禍によって、拠る辺を無くした者達を、心から歓迎しながら、大事おおごとになったこのイベントを成功させるべく、各所に働きかけたのだ。

冒険者ギルドや諜報ギルドに、戦争参加者全てのデータを集めてもらい。

招待客から、暗殺に来る暗殺者、お茶会への参加者への差し入れや、各人に合わせたプレゼントを用意して。

どんな形であれ、出会えた全てのヒトに、感謝と、歓迎と、祝福を込めて。

精一杯のおもてなしをすべく、金に厭目を付けずに、働いたのだ。



どうか、うまくいきますように。


スタッフや、関係者全ての方に、感謝を。





西方暦1070年8月16日。


昨日は、大盛況の内に、無事、お茶会を成功させる事が出来た。


開催の挨拶へと向かう最中、私の元まで辿り着けた暗殺者さんもいたが、バウンサーの働きによって、それも未然に防がれた。

当然、その方々も、お客様として、お茶会へご案内した。

両国のトップや、官僚は勿論、軍の代表者様方も、別け隔て無く一個人として、おもてなしをした。

強制労働力としての、今回の戦争への参加の取り止めも、確約した。

私の目指した、戦争での被害の最小化は、恙無く果たせた。

心残りは、それでも、尚、戦争は発生した事だろうか。



あぁ。どうか。この世に生を受けたもう者達よ。幸いあれ。悔いの無からん事を。

私、『我を往く者』シャナイアからの、せめてもの、手向けを。





シャナイアさんも、名前だけチラッと出した事があります。

本編とは関係ありませんが。


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