言えなかった言葉
ふと、思い立ったので。
☆
後悔の言葉は、もう、直接伝える事が出来ない。
私は、直接彼らを知らないし、彼らも、私を知らないから。
匿名性の高い、けれど、人生で、この上なく幸せをくれた、今は無き、私の楽園。
消滅したその世界で、私は、最後まで、彼に彼の作品への感想を伝えられなかった。
聞かれていたのに。
時間が無いことも、分かっていたのに。
沢山の、「のに」が、私を苛んで、今も、心を締め付けている。
だから。
ただの、自己満足なんだけど。
言えなかった、彼の素晴らしい作品群への感想を書こうと思う。
「少年の、少女への片想いは、痛いくらい、伝わっていたよ。答えられないのが、申し訳ないくらいに。」
ほんとはね。
私にだって、貴方の私へ向ける「特別」を、感じてはいたんだよ。
でも、私は不器用で。愛しい人以外、見つめるなんて、できなかったんだ。
貴方の気持ちが、嬉しくなかったなんて事、絶対に無いよ。
寧ろ、私は自分に自信が無いから、余計に、格好いい異性には気後れしちゃってたんだ。
貴方は、とても魅力的な方だから。
貴方みたいに、凄い事、私には出来そうに無いから。
これを読んでくれているのか、全くわからないけど。
自分が恥ずかしくて仕方ない「私」は、貴方に話しかけるのも、難しくて。素直に言葉が出なくて。ちゃんと、『凄く良く表現出来てて、出来すぎていて、逆に私の心にザクザク刺さるよ』って、言えなかったの。
作風も、世界観も、声の響きも。
貴方は、とても、私の好みを突いてくるから。
最近では、文章でまで。
実はね。雑誌も、チェックしてるよ。
貴方が、あの世界から得たものを、貴方なりに昇華して、表現して、残そうとしてくれているから。
文章の端々から漏れ出てる、あの日の『少年』を、私は確かに感じてるんだ。
あの頃は、素直に、貴方のファンだって事も。信者じゃないけど、自分からあんまり音楽を聴かない私が、忌避感なく受け入れられるよって事も、伝えられなくて。
伝えられたら、もっと貴方の心に暖かさを残せたのかな?
初めて耳にした頃の心の荒みが、年々穏やかになって。人格が深みを増して、外的魅力だけじゃない、人間としての魅力が、益々磨かれていくのを、いつも眩しく、感じてるんだ。
凄く凄く、活躍している貴方に。
前よりもっと、伝えにくくなってしまったけれど。
自惚れじゃないといいな。貴方に大切に想われていた事。
気のせいじゃないといいな。
自信は無いけど。
心の機微って、とても難しくて。
中々、気づけなくて、ごめんね。
ずっとずっと、応援してるよ。
騒いだりなんか、しないけど。
懐かしさで、つい、貴方の作品群を手にしてしまう事、許して欲しいな。
そんなに、沢山は、持たないけど、ちょっとだけ。
ああ。
今になっても、やっぱり、苦しいよ。
面と向かって、伝えられなかった事。
貴方と友達で居られたあの場所、あの日日。
本当に、楽しかったんだよ。
あの日の君に。
ありがとう。
作品が分かる人は、まだいい。
活躍が分かる人も。
でも、今を精一杯生きている、名前を知らない貴方達を探す事は、とても難しいから。
多分、私は、ポツリポツリ、これからも呟くのだろうね。




