表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去の人、今の僕  作者: 稚早
~少女漫画と高校生~
49/54

48.三角関係って王道だよね

誘拐されるように車に乗せられ、連れてこられたのはとある一軒家の前だった。

「吹雪、ここって・・・」

「えぇ、あのバカの家です」

(三木)の表札のかかった門をくぐり、吹雪は一ミリもためらうことなくチャイムを鳴らした。バタバタと忙しない足音が、こちらまで聞こえてくる。

「吹雪!新刊あったk・・・!?」

ドアを開けた瞬間は輝いていた忠平は、千歳に気づくとピタリとその動きを止めた。顔から血の気が失せ、目が激しく泳いでいる。

「なっ、なんで神谷が」

「さっき偶然会って、せっかくだから遊ぼうと思って」

「そ、そうか。悪かったなお遣い頼んで。それじゃ・・・」

吹雪が差し出した袋を受けとると、忠平は目を合わせることもなく踵を返した。隣で、吹雪の目が黒く輝く。

「言っておくけど、会長と出会ったの本屋だから、中身知ってるわよ」

その一言で、忠平は玄関の前で逃げ切ることなく崩れ落ちた。

「おまっ、馬鹿か!なんでわざわざここに連れてきた!」

「いいじゃない別に。あんたが少女漫画にドハマりしてることくらい」

「わーっ!?」

つい先日の自分と叶を見ているようだ。口をふさぎに来た忠平を、吹雪は慣れた様子でかわしてみせた。

「えーと、ミッキー?」

「・・・忘れろ」

「いや、あのね・・・」

「わ!す!れ!ろ!いいな!」

忠平にはよく怒鳴られているけれど、これほど迫力に欠けるのは初めてだ。自分のことを棚に上げて、千歳はにやにやと相好を崩した。

「だーいじょうぶ、誰にも言わないわよ」

「嘘だ!絶対言うつもりだろてめぇ!」

「信用ないわねぇ、大丈夫よ」

「会長も読んでますもんねー」

この後輩は敵か味方か、天使か悪魔か。吹雪の言葉に、今度は千歳が沈む番だった。

「ふっ吹雪あんたねぇ!」

「なんだ、お前も読んでるならおあいこじゃないか」

「ち、違lっ・・・」

「まだいいだろそっちは!女なんだから少女漫画読んでてもおかしくない。こちとら吹雪にまんまとはめられたんだぞ」

「はめられたなんて人聞きの悪い。おすすめしただけじゃない」

悪びれることなく言ってのける後輩は、忠平に対してなかなかの小悪魔だ。

「と、いうわけで、どうです会長。隠すのが馬鹿らしくなってきたでしょう?」

「お前、そんなことのために人を売りやがったのか・・・」

うなだれる忠平の手には、しっかりと今日のお目当てが握られている。相当楽しみだったのだろう。口では文句を言っていても、意識は完全にそちらに向いていた。吹雪の言っていた通り、これはなかなか(いいもの)だ。

「プッ、確かに。ミッキが読んでるなら、私だって読んでいいわよね!」

「馬鹿にしてんだろてめぇ・・・」

千歳が回復した分、忠平は消耗したように息をはいた。

「そうだ。私この後忠平の部屋でダラダラ新刊を読みながら語る予定なんですけど、会長もいかがですか?」

「えっ、でも・・・」

「・・・ここまで来たんだ。好きにしろ」

今までずっと我慢してきた機会が、目の前にある。千歳は0.01秒だけ悩んで三木家の門をくぐった。


 たまに、見張られているんじゃないかと思うタイミングで電話がかかってくることがある。吹雪からの課題図書に手を付けて、丁度投げ出した瞬間だった。着信の名前を見て、少しだけ寿命が縮まる。

「も、もしもし吹雪?どうしたの」

『おはよう叶。今暇?」

君から借りた本を投げ出したところだなんて言えるはずもなく。

「大丈夫だよー。どうかした?」

僕は心の中で深呼吸をしつつ無難な答えを返した。

「それが・・・ちょっと面倒なことになったのよ」

「面倒なこと?」

「ちょっと、忠平の家に来てくれる?」

「忠の家?」

「そう。頼んだわよ」

有無を言わさず電話を切られ、僕は仕方なく腰を上げた。

急がば回れというけれど、急いでないから回るのだ。

あえての徒歩を選んで、僕は梅雨の合間の晴れ間を味わうことにした。

とはいえ、いつかは着いてしまうもので。

10分もせずに到着した僕を出迎えたのは、疲れた顔の吹雪だった。

「どうしたの、疲れた顔して」

「丁度良かったわ。もう、収拾がつかなくて・・・」

「本当に何が・・・」

言い切る前に、家の中から不穏な声が聞こえてきた。学校で何度も聞いた、子供のような言い争い。

「神谷、さん?」

「そ。本屋で偶然会ってね。忠平と同じで隠れ読者だったから連れてきたんだけど」

ヒロインをとりあっている2人のどちらとくっつくかで喧嘩になっちゃって、と吹雪は肩をすくめて見せた。

「何やってるんだか・・・」

「私はどっちも好きだから何とも言えなくて・・・やっぱり私が語れるのは叶ぐらいだわ」

「えっ、いや僕は・・・」

「はい、これ最新刊。貸してるのとあわせて、読み終わったら教えてね」

「・・・ハイ」

この様子だと、もしなっちゃんと語れるようになったとしても解放されそうにない。僕は諦めて追加された課題図書を受取った。


お読みいただきありがとうございます

また少し次の更新まで開いてしまうかもしれませんが、お付き合いいただけると幸いです^^;

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ