表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過去の人、今の僕  作者: 稚早
~信頼と特別な立ち位置~
39/54

38.昔話と恋バナと

 友人との会話がどれだけ盛り上がっていても、生徒会の仕事があると必ずどこかで切り上げなければならない。その日も、ギリギリまで廊下で話してから生徒会室へと向かった、ある日の話。

「なんか、吹雪が同級生の女の子と話してるのって新鮮だわ」

吹雪が友人と盛り上がっているのを見かけていた千歳は、感慨深げに呟いた。

「何が新鮮なんです」

「だっていつも若松とかミッキーと喋ってるじゃない。だから同い年の女の子と喋ってるのは珍しいなって」

「あぁ・・・とはいえ、さすがに教室では普通にクラスメイトと喋ってますけどね」

千歳と会うのは用事があって3年の教室に行ったときか生徒会関係だから、そう思うのだろう。会議の準備をしながら、小学生のころを思い出す。叶や忠平以外にも、男子に交じってなかなかお転婆をしていたものだ。

「あんた達って、小学校から一緒なんだっけ?」

「いえ、叶と忠平はそうですけど、私と叶はもう少し前から知り合いですよ。家が近所で、公園で遊んでた時に」

「そうなの?てっきりあの2人の方が付き合い長いんだと思ってた」

「そう変わりませんけどね。叶と知り合ったの、あっちが入学するほんの数か月前でしたし」

入学して程なく2人は仲良くなったから、忠平ともすぐに遊ぶようになったのだけれど。忠平より先に叶と知り合えたことは、吹雪の中でちょっとした自慢だ。初めて声をかけたときの不安そうな顔を、今でも覚えている。けれど。

「・・・そんなに、頼りないんですかねぇ、私」

「へ・・・?」

「いえ・・・独り言です」

怪訝そうな千歳の前に、吹雪は何事もなかったかのように会議の資料を置いた。

「ねーねー、昔のあいつらってどんな子供だった?」

「叶と忠平ですか?そうですねぇ・・・忠平は相変わらずでしたね。過保護というか、何というか。あとよくキレて暴れてました」

「吹雪テメェなに余計な事吹き込んでやがる」

もはや役員かと思うほどに、遠慮なくドアが開いた。

「ちょっとミッキー。生徒会以外立ち入り禁止なんですけどー」

「女子2人の会話を盗み聞きするなんて悪趣味ね」

「ミッキー言うな。つーか吹雪、テメェこういう時だけ神谷につきやがって。大体お前も昔は・・・」

「あーーーーー!もう、いいからさっさと用件済ませなさいよ!もうすぐ会議なんだから」

この流れで出てくる過去なんて碌なもんじゃない。忠平の言葉を遮って、吹雪は無理矢理話を進めた。

「大垣が吹雪を呼んで来いだとさ。自分が遅れそうだから、追加の書類とりにきて欲しいんだと」

「あぁ、そういうこと・・・」

大垣とは、生徒会を担当している日本史教諭だ。ここ最近は、吹雪と忠平が幼馴染なのをいいことに、こうして用事を言いつけたりしている。

「職員室でいいの?」

「あぁ、奥の印刷室だと」

「分かったわ。会長、あとお願いしますね。忠平、逃げないように見張ってて頂戴」

「さすがにここまできて逃げやしないわよ・・・」

他の役員ももうじき来るだろう。千歳の不満げな返事を聞きながら、吹雪は職員室に向かった。


「・・・吹雪って、若松のこと好きなの?」

出ていく吹雪の背を見送った後、千歳が不意に呟いた。

「何でそれを俺に訊く」

「だって、あの2人と一番付き合い長いのアンタでしょ。どうなのよ」

以前から気になっていた疑問を、ここぞとばかりにぶつける。忠平は渋い顔をして、千歳の向かいに腰かけた。我が物顔の忠平の言動も、千歳は咎めない。いつものことだし、他の面子が揃うまで話し相手が欲しい。

「お前、それを吹雪に言うなよ」

「?何でよ」

「めんどくさいことになるからだよ。吹雪はまだ子供だ」

「うわぁ。でたよ過保護親父・・・そんなだから吹雪が反抗すんのよ」

「誰が親父だ。そうじゃなくて・・・あいつは多分、叶に対して複雑な感情を抱いてる」

「複雑な感情?」

「何なのかは俺もよく知らん。俺が出会った時にはあぁだったからな。でも、そんな中でアイツの中の好意だけ意識させたらきっと困惑するだけだ。頼むから、下手に刺激してくれるな」

1番近くで2人を見てきた忠平の言葉に、千歳が勝てるはずもない。面白そうで触れていい部分ではなさそうだ。

「分かったわよ。茶化したりしない。ほんと、恋愛ごとは厄介なことが多いしね」

「・・・そうだな」

千歳の言葉に、忠平は少しだけ眉根を寄せた。

「もしかして・・・ミッキーが吹雪のこと好きだったり?」

どうしてそんなことを思ったのか、自分でも分からない。忠平の表情が、誰かを想っているように見えたからだろうか。

「プッ・・・ふはははははは!なんだそれ!俺が吹雪を?傑作だなっ」

「いや、だってミッキーが構ってる女子なんて吹雪位だし・・・」

「すまんっ、そんなこと初めて言われたからツボに入ったっ・・・クククッ!」

「そんなに!?」

こんなに肩を震わせて笑う忠平は初めて見る。

「はぁ・・・面白かった」

「そりゃぁ何よりだけど、じゃぁ誰なのよ」

「?何がだ?」

「あんたの、好きな人」

「お、れの・・・?」

笑顔から一転、忠平は伏せた眼の中で瞳を泳がせた。

「何でそんなこと聞くんだ。大体、好きな奴がいること前提か」

「だって、さっきの表情が誰か思い浮かべてるように見えたから・・・」

忠平の顔が、悲しげに歪む。

「別に、そういうわけじゃない。恋愛はよく分からんから厄介だと思っただけだ」

嘘なのは明らかだった。これ以上踏み込んではいけないことも。

「そういうお前はどうなんだ?好きな奴の1人や2人・・・」

「ミッキーは私をなんだと思ってんの・・・」

一瞬、誰かの顔が浮かんだような気がしたが、それは目の前の顔と重なってすぐに消えてしまった。

(?・・・まさか、ねぇ)

千歳の思考を乱すように、生徒会室のドアが開く。

「あ、三木センパイまた来てたんですか」

ドアを開けた後輩は、忠平を見ても驚くことなく足を踏み入れた。すっかり顔なじみである。

「あぁ、用事があってな。すぐに出る」

「そ、そうよ。会議あるんだから出た出た!」

「お前なぁ・・・」

自分の中に沸いた疑念と共に、千歳は呆れ顔の忠平を外へと押し出したのだった。


お読みいただきありがとうございます

吹雪が忠平のことを悪く言ったのは来てるのに気付いてるからだったりします(笑)

吹雪はなかなかやんちゃな娘でした

吹雪の叶に対する感情もこの章で明らかになる予定なので、お付き合いいただけると嬉しいです

また、番外編を書きたいとも思っているので、こんな話が見たいーなどありましたらぜひリクエストください(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ