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過去の人、今の僕  作者: 稚早
~毒舌な後輩~
12/54

12. 仰げば尊し?

委員会は、1時間もしないうちに解散となった。

思いの外早く終わった。

それはいいのだが、時雨の肩は苛立ちですっかり跳ね上がっていた。

荒い手つきで、鞄にプリントを放り込む。クシャッ、とよったしわが、時雨をさらに苛立たせた。

「お疲れさん。よく我慢したな。えらいえらい」

この1時間、何度怒鳴ろうと思ったか分からない。

時雨が耐えられたのは、この声の主のおかげだ。

「ンだよあいつらぁ!好き勝手言いやがって!」

「落ち着け、声が大きい。図書館だぞ」

委員長、副委員長が、立候補ですぐに決まったまではよかった。

前に出たその二人が、自分勝手な進行を始めるまでは。

「あれは、さすがにやりすぎだがな」

「だよなぁ!?(オレらは委員長だから、当番なしねー)とか・・・ふざけんなっつーの!アンタがとめてくれなかったら怒鳴ってたよオレ」

勝手に話を進める度に怒鳴りそうになっていた時雨を抑え、忠平はさりげなく2人の暴走を阻止していた。おそらく、全員が忠平に感謝していたことだろう。

「あいつらが2年だからできたことだ。先輩権限ってやつだな」

「その紙もちゃっかりとりあげるしよぉ・・・」

忠平の鞄の隣、一枚だけ別にされたプリントに、時雨はからかうように鼻を鳴らした。

「取り上げたんじゃない。預かったんだ。人聞きの悪い」

プリントには、今日話し合った内容が記載されている。活動内容を、生徒会に報告するためのものだ。

——それ、生徒会に持っていくんだろう?これから黒瀬に会う約束があるんだ。丁度いいから俺から渡しておこう——

そう言って手を伸ばした忠平には、遠慮を装って断る隙がなかった。結構です、なんて言うこともできず、2人はプリントを差し出したのだった。

「俺は親切心で預かっただけだぞ」

「よく言うぜ・・・」

指摘こそしなかったが、時雨は見逃さなかった。

件の2人が、忠平の申し出に露骨に顔をしかめていたのを。

「あれ、絶対自分の好きなように書き換えるつもりだったろ」

大方、当番のところから自分達を抜くつもりだったのだろう。提出用なのにシャーペンで書かれたプリントが何よりの証拠だ。口をとがらせた時雨に、忠平は眉をひそめて手を伸ばした、人差し指がベチン、と時雨のでこを弾く。

「ってぇ!なにすんだよ!」

「誰が聞いてるか分からないのに、下手なことを言うもんじゃない」

気持ちは分かるけどな、と小声で付け足して、忠平は表情を崩した。

「そんな調子だと、目をつけられるぞ」

「・・・別に。痛くもかゆくもねぇよ」

説教はごめんだ。時雨は続きを聞きたくなくて体を起こし荷物を手に取った。どうして、たった1つ歳が違うだけで上下関係が決まるのだろう。それも、自分の好きなように委員会を進めるような輩に。自分の尊敬できない相手を目上として扱いたくなんてない。昔からの時雨の信条だ。

「でも、生きづらいだろそれじゃ」

「えっ・・・」

逃げようとする忠平の声は、予想に反して全てを見透かしたように寛容だった。

「そんなにカリカリしてたら疲れるだろ。正論で口撃するにしても、少し考えたほうがいい」

たった2つしか違わない、それなのに、忠平の言葉は時雨にとって大人びた、尊重すべき意見に思えた。

「・・・考えてみる」

今日初めて話した相手の言葉だ。素直じゃない時雨には、相槌が精一杯だった。

「あぁ、そうだ。折角だしお前も来るか?」

「・・・は?」

「コレを渡しに行くついでだ。うちの生徒会がどんな奴らか、見てみるといい」

例のプリントをひらひら揺らす忠平は頼もしくも、何かを企む魔王のようにも見えた。


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