八月二十二日「天才少女とNo3」
「凛!」
その名前を聞いて立ち上がる。体が軋もうと関係無い。
「修二さん、凛は!」
「さっきも言ったが植物状態に等しい、期待はするな」
どんな状態であろうと凛は生きているのだ。
「ついてこい」
凛がいるという部屋に案内された
「この奥にいる」
修二さんが数回ノック。部屋から男の人の声で返事が聞こえた
「はいはーい」
「修二だ……拓人を連れてきた」
「入って大丈夫っすよー」
修二さんについて入るとそこにいたのは四人。
女性二人は俺が始めてNo.1パワーに襲われた時に助けて貰った二人だ。
一人は重大な怪我なのかベッドに固定されている。
もう一人、返事を返した男が水を飲んで近づいてきた。
「あんたが拓人くん?」
「はい」
男の人は俺をジロジロと見て
「……ふうん、一部がハリガネムシになった姿とか想像してたけど違うのな」
「海藤さん!」
重大な怪我をしていない方の女の人が海藤さんを止める。
「ごめんなさい、私は稲葉……紹介は後でいいわね」
と、稲葉さんはこの部屋にいた最後の一人に目を向ける。
石持 凛。彼女については説明するまでもない。
「凛!」
思わず彼女を引き寄せて抱きしめる。聞いていた通り植物状態みたいな感じで、力なく空を見つめているだけだ。
抱きしめた華奢な体は壊れてしまいそうで、なんとなく冷たいように感じる。
しかし……彼女は生きている。
「凛、何処にいたんだよ」
「路上でハリガネムシに囲まれてたぜ」
海藤さんがこれまでの経緯を話してくれた。
「ありがとうございます……」
「いいってことよ。で、凛ちゃんはどうするっすか」
海藤さんの質問に修二さんが答える。
「そうだな……この状態だし、守れる所にいて貰わねばならんな」
守れる所。その言葉を聞いて俺は声をあげる。
「俺が! ……俺が今度こそ、凛を守りたいです」
「守るったってなぁ、ハッキリ言ってラダーのサポート無しじゃあお前は鍛えられてない一般人だぞ」
「ラダーがいればいいんですよね」
俺の発言に修二さんが目を丸くする。
「まさかお前……」
俺は修二さんの目を見て言う
「はい。もう一度、ラダーを身体の中に入れます」




