八月二十二日「西方に待ち受ける者」
「てかさー、車じゃダメなのかよー」
やる気のない海藤の発言に稲葉が溜息をつく
「何とか被害を逃れた数台の車、それは生き残った人の救助と食糧などの確保に使うって……聞いてます?」
「いや、聞いて無い……ってぇ! 叩くなよー」
海藤は叩かれた頭をさすりながら探知機を見た。
「どう?」
「東の反応はもう無いっすねー、探知圏外っす」
「そう……」
西と東、二つの方角を示した探知機。
皆で話し合った結果、反応的に近いであろう西に向かう事となった。
「うーん、反応的にはもうすぐの筈なんすけどねー」
海藤が呟いた瞬間、トランシーバーに通信が入った。
『こちら先発隊長、前方にハリガネムシの大群、そして戦闘中の人を発見した! 先発隊だけでは対処出来そうに無い量だ』
先発隊長は動揺しているように感じた……気のせいだろうか。
私はボタンを押して話す
「護衛班長です、護衛班からの救援はどれほど必要でしょうか」
「先輩……救援には行けなさそうっす」
先発隊長からの返答が来る前に海藤が口を開いた
「そうですけど……アレはなんなんですか」
稲葉の声が少し震えている
私は二人、いや護衛班の皆が見ている方向を見た。
「え……」
思わず言葉を失う、目の前にいる無数のアレは……ハリガネムシ?
全員が目を疑っただろう、自分が見たものを否定したくなっただろう。
なんたって目の前のハリガネムシの大群、驚くのはその多さじゃない
ハリガネムシは……ハリガネムシが……
「武装している……!?」




