八月八日「secret select・route.α」
【select of secret……α】
「わかった……すぐ迎えに帰ってくる」
心の中でラダーに合図をする。脳の制限を解除せよ、ブレイク。
[ブレイク・ゴー]
勢い良く飛び出すと同時に体全体が軋む、早めに済まさなければ。
俺を貫こうと飛んでくる触手は遅く、ラダーの反応で容易く退けられた。
ブレイカーの本体は俺を認識したのか逃げるのをやめて地面から出て来ている
「ブレイカー……一騎打ちだ!」
触手をラダーに任せて右手に力を込める
「終わりだ!」
右手の剣を真っ直ぐブレイカーの本体に突き立てる。
[バック! リン!]
ラダーの声の後に二つの刺さる音が聞こえた。
一つは目の前のブレイカー本体を俺の剣が刺した音。
そしてもう一つは……
俺は浮かんだ想像を自分で否定しながらゆっくりと音のした方、後ろを見る。
華奢な腹を貫いている触手とその腹が真っ赤に染まっている。
その腹は全く動かず倒れている凛がどんな状態となったか予想が出来る。
「凛……凛!!」
軋む体を無視して凛の元に走り出す。後ろからブレイカーが倒れたような音が聞こえて少し地響きが起きる。
「凛……おい!」
揺すっても凛は全く動かない。予想が、最悪の事態の予想が打ち消しては浮かんでくる。
俺は凛の左手首を掴む。ドクンドクンと聞こえるのは俺の鼓動だけ。
「凛!!」
凛の鼓動は聞こえ無かった。
「凛……お前……」
涙がこぼれ落ち何とも言えない感情が湧いてくる。
これはブレイカーに対する怒りか?いや違う
じゃあ絶望か?
それも違う
悲しみか?
違う
高速で動く頭の中での自問自答が終わる。これは……後悔だ。
何故俺はあそこで凛と共に逃げなかった、何故こんな選択をした?
また自問自答が始まる
何故だ、何故だ……何故この選択を、何故だ……
そんな後悔の自問自答をラダーの声が遮る
[バック……?]
始めての疑問形できたラダーの敵探知、その意味を理解する前に足に激痛が走った。
「っ……ああ!」
思わず倒れこんで足を見る。ふくらはぎに刺さったハリガネムシがうねうねと動いている。
「あ……」
[keep out!! keep out!!]
「り……ん」
いつか聞いたラダーの声の意味を認識する前に俺の意識は途切れた。
今回よりルートαが始まります。
次回より卯月編になります。




