八月八日「球状の本体」
出撃から約三十分、周りのハリガネムシは経験から殆ど被害も無く倒せた。
しかし今現在戦力は約半分となっている。
「ブレイカー……なんて野郎だ」
そう、戦力は殆どブレイカーに削られていた。
下からほぼランダムに、それも複数同時に現れるブレイカーの攻撃。
ブレイカーの脅威はそれだけでは無かった。
[レフト ビックキャット]
「拓人さん! あれ!」
凛とラダーが示した左を見るとライオンが走ってきていた。
ブレイカーの更なる脅威、それは繋ぎ合わされたハリガネムシの名残となる触手一本一本に寄生能力がある事だ。
ある触手はガチョウ、ある触手はライオンを操るという異常な寄生が可能なのだ。
俺は近くにあったであろう動物園を意味無く恨んで剣を構える。
「この大きさなら……サポートするわ」
凛が銃を取り出した。どこからそんな物騒な物を……
俺の目線を感じたのか銃を構えたまま凛が口を開く
「麻酔銃よ、電気信号を通しにくくする薬を混ぜてあるから」
「なるほど」
寄生主、今回で言えばライオンの動きが遅くなるってわけだ
「やぁ!」
凛が撃った麻酔弾が命中してライオンの動きが極端に遅くなる
[バック アンド ライト]
ラダーの声を聞いて剣を構えたまま凛に言う
「後ろと右にハリガネムシだ」
「了解!」
凛はいつぞやの最終兵器である乾燥機を小型化した物を複数取り出してハリガネムシが来た方向に投げる。
球状のそれは空中でヘリコプターのようなプロペラを回して縦横無尽に飛び回りハリガネムシを固まらせていく。
「ラダー、来るぞ」
そう合図して動きの遅いライオンを切り裂いた。
そうやっている間にも戦力は削られていく
「拓人さん……そろそろ本体を叩かないとキツイと思うわ」
「俺もそう思う」
俺は近くにいた修二さんにそれを伝えた
「まあそうだろうな……ブレイカーの野郎を中心に狙え! ただし無理はするな!」
周りにいた者が一斉にブレイカーの本体に向かって走り出した。
ブレイカーの本体、それは球状の物だった。その球状の物から繋ぎ合わされた触手が出ているのだ。
ブレイカーは俺達の行く手を阻むように地面から触手を突き出してきた。 それくらいの知能はあるらしい。
「凛、サポート頼む」
「わかってるわ」
凛がまた小型乾燥機を飛ばす。 突き出してきた触手は固まらなかったが遅くはなった。
「んなちまちました事やってないでぶちかまそうぜ」
紀坂さんが腕につけた銃から無数の砲丸を飛ばして応戦する。
「拓人! 今ならやれる……行くぞ!」
「えっ!」
思わず凛を見る、凛は苦笑いをして言う
「過保護すぎよ、行ってきて」
「……紀坂さん、凛を頼みます」
「過保護め」
凛を紀坂さんに預けて修二さんの隣に行く
「俺は右から行く、お前は左からやれ」
「わかりました」
修二さんが右に回ったのを見てお互いに目で合図をする。
「ラダー……行くぞ!」
[オーケー レット・イット・ゴー!]
俺は左手の全てをラダーに任せて右手だけに意識を集中させる
「やぁぁぁ!」
「せいやぁ!」
俺の双剣、修二さんの大型チェーンソーが同時にブレイカーの本体を捉えた
「やったか……っ!?」
呟いた修二さんの腹にブレイカーの触手が刺さっていた
「修二さん!」
俺がかけよってそれを切り裂き、ブレイカーの本体を見る
「野郎……まだ生きてやがる」
ブレイカーは大量の体液を垂れ流しながらもまだ動きを止めない。
「今度こそ……」
俺が双剣を構えるとそれを察したのかブレイカーの本体は地中に潜った。
「野郎……逃げる……つもりだ」
修二さんが腹を抑えながら続ける。
「ヤツを逃がすな……今やらないと……あいつは体制をつけてくるかもしれん」
俺の事はいい、修二さんはそう付け加えた。
「……行ってきます」
俺は修二さんを近くにいた者に任せてブレイカーが地中で動いた跡を追った。 何人かが後に続く。
「拓人さん!」
後ろから凛が走ってきた
「凛、待ってろ」
「貴方達だけで大量のハリガネムシを倒しつつ追えるの?」
「…………」
正直難しい。 凛や紀坂さんの兵器が必要だろう
俺は走りながら言う
「紀坂さんを呼べ」
「紀坂さんは怪我人の救助に当たってるわ、機械の体からでる人間の限度を超えた力は救助に必要よ」
凛が目で訴えかけてくる、俺は小さくため息をついて
「……前には出るなよ」
一言、そう言った。




