八月一日「指揮官・死神」
「紀坂、増やせ!」
修二さんの合図で紀坂さんが機械を増やそうとした、まさにその時だった。
「修二さん! 緊急事態です!」
差神さんという男性がいきなり入ってきた。
「どうした」
「大量のハリガネムシが接近しています! ハリガネムシは明確な意思を持ってこちらに向かっています!」
「……わかるか?」
修二さんは凛に聞いた。
「一個体がラダーと同じ統率能力を持って人間……つまりは寄生先の多いここを狙ってるのかもしれません」
ただ、と凛は続ける
「何故ここがバレたかが問題ね、今までここに近づいたハリガネムシは全部倒したはず……」
「なるほど……回避は難しそうだな、立ち向かうぞ!」
「了解! 伝えてきます!」
差神さんが走っていった。
「紀坂! 研究班と共に兵器の準備!」
「いわれずともやっている」
それから、と修二さんは俺と凛を見る
「お前らは避難してろ」
「でも私の兵器は」
「紀坂ので行く、ここで兵器を使い果たす訳にはいかん……それから拓人」
「はい」
「お前は大人しく凛を守ってやがれ」
「了解しました」
「修二! 準備完了だ! 受け取れ!」
紀坂さんが上から投げた物を修二さんが受け止める
修二さんはそれを眺めて
「……こりゃいい」
「軽いだろ、特性チェーンソーだ……いくか」
「おう」
お互いに頷いて二人は出て行った。
「…………」
凛がさっきから黙り込んでいる。
「どうした?」
「いえ……どうしてもここがバレた理由が思いつかなくて」
「ラダーのように統率をとるハリガネムシか……」
「因みにラダーじゃないわよ、ラダーは殆ど人工のハリガネムシだから他のハリガネムシを同族だとは認識してないみたい」
一番の可能性を真っ向から否定された、ラダーに申し訳ない。
しばらく時間が経ったがまだ戦いは続いているようだ。
俺達の場所はただただ静かだ。
凛が考え込んでるからよけいに静かだ。
「……ふー」
いきなりドアが開いた。
「あれ? 差神さん」
「ふー……」
俯きながら入ってきた差神さんはどこか様子がおかしい。
うわの空というか、自分自身の意思が無いような……
「もしかして怪我しました?」
凛が差神さんに近づく
「ふー」
差神さんが顔を上げた
「凛!」
俺は凛の腕を引っ張って引き戻した。
「何よ」
「見ろ……差神さんの目」
差神さんの目に生気は無かった、いや正しくいえば黒目が無く白目をむいていたのだ。
「差神さん……?」
凛が呟いた、その瞬間
「あああああああああ!」
差神さんはいきなり大声を上げ、そして……
上半身が爆発した。




