七月二十八日「ブレイカー」
「稲葉はそっちの女の子をお願い」
「了解です」
卯月と名乗った女性が俺を軽々と持ち上げる。
「悪いけど武器は置いていくね」
「あ、はい」
俺は握っていたチェーンソーを置いた。そこそこ愛着があったのだが仕方ない。
卯月さんがトランシーバーを取り出した。
「海藤、道を作って!」
「りょーかいでーす」
周りで戦っていた男達が道を切り開く戦いに変わった。
「三……二……一……ゴー!」
二人が同時に走り出した。
「大丈夫?」
俺と凛を下ろした後、卯月さんはハリガネムシとの戦いに混じり、稲葉さんが走ってる途中に受けた傷の応急処置をしてくれた。
少ししてハリガネムシとの戦いも終わりに差し掛かった所で車の音が聞こえた。
降りて来たのは修二さんだった。
「……うちの者が世話になった」
「いえ……この子達の保護者ですか?」
「まあ、そんな所だ」
稲葉さんと少し話をした修二さんは車に乗っていた数人を加勢に向かわせた。
「無事だったか」
「はい、でも俺達以外は……」
「簡易通信機を持たせてた奴からSOS信号を貰った、何が起きた」
俺は今まであった事を説明した、No.01 パワーについては凛に説明を頼んだ。
「そいつはブレイカーだな」
「ブレイカー?」
「俺達はそう呼んでいる、まだ俺がリーダーでは無かった頃に出会った最大にして最悪のハリガネムシだ」
つまりは治安維持隊の志奏さんがリーダーの時だろう。
「紀坂の体をやったのもブレイカーだ……あの野郎拠点を変えやがったのか」
「…………」
しばらくしてそこにいたハリガネムシは全滅し、俺達は治安維持隊の人にお礼を言い修二さんと共に戻ったのだった。




