七月二十八日「交差の時」
私達卯月班が最前線の救護隊に配属されて数週間がたった。
道中出会ったハリガネムシ相手には肝のすわった海藤が警護班と共に活躍し、私と稲葉を含めた数人が救護に当たっていた。
今回はまだ治安維持隊が踏み込んでいない地域に踏み込んでいた。
「あー、歩くのだるーい」
海藤がルービックキューブを弄りながらぼやく
「仕方ないです、車が通れなかったんですから……って何遊んでるんですか」
「ん? ルービックキューブ、一面が十六マスのやつだからわけわかんなくてさ」
「周りを見張ってください、いつハリガネムシが来るかわかりませんよ」
「これが終わったらねー」
「…………」
稲葉はふざけて言う海藤の手からルービックキューブを奪って驚異の時間で完成させた。
「なっ」
「どうぞ、終わりました」
海藤の手に完成されたルービックキューブを置いて稲葉はそっぽを向いた。
「あのスピードわけわかんねぇよ……」
海藤はぶつぶつ言いながら周りを見張り始めた。
それからしばらくして周りをぼーっと見ていた海藤が声を上げた。
「先輩! あれ!」
海藤が指差した方をみると大量のハリガネムシに囲まれている人影が見えた。
「西の方向にハリガネムシの大群と人影を確認しました!」
私が叫んで走り出すと同時に皆も走り出す。
目を凝らして人影を見る、チェーンソーを持った大学生くらいの少年と
白衣を着たポニーテールの少女だ。
「救護対象は二人です!」
私が叫ぶとトランシーバーから警護班長の声が聞こえた。
「隊を分割する卯月班と二番班は右から、残りは左からハリガネムシの退治及び救護を開始!」
「海藤は二番班に合流、稲葉は私と共に救護を開始!」
「了解っす!」
「了解しました」
私は通常より小さめの竹刀を、稲葉はサバイバルナイフを取り出して右方面に走り出した。
次から拓人ルートです




