七月七日「踊る死神」
銃を構える海藤を見つけたのは武器庫の前だった。
銃口の先にはサバイバルナイフを持った白衣の男性、そしてその後ろ、武器庫の扉の前には稲葉が布を抱えて固まっている。恐らく男性が持つナイフは稲葉の物だろう。
「稲葉ちゃんを離しな」
「…………」
もちろん白衣の男性は答えない。
海藤が白衣の男性に狙いを定めた時、稲葉が叫んだ。
「海藤さん! 火気厳禁!」
「あっ!」
ギリギリのところで海藤は銃を下ろした。白衣の男性の後ろにあるのは武器庫、もし貫通でもしたら大爆発するだろう。
「なら……」
海藤は内ポケットからサバイバルナイフを取り出した。
「一気うちと洒落込もうか、ハリガネ野郎」
海藤がナイフを構えるといきなり男性の目に黒が戻った。
「え……うわ!? 何でナイフ!? 何で武器庫!?」
驚く事に男性の意識が戻ったのだ。
「なっ……」
これには私含め三人共戸惑った、男性が生きているとなれば単純に男性の動きを止めるわけにはいかないのだ。
「僕は……何でここに?」
男性はナイフを落として困惑している。
海藤がナイフをポケットに直した、その瞬間男性の目がぐるんと回ってまた白目になった。
「え……」
「なにぃ!?」
私達が戸惑った一瞬の隙を突いて白衣の男性はあり得ない速さで走り出した。
海藤が稲葉の元に駆け寄る、私はトランシーバーを取り出した。
「卯月より各班に連絡、逃しました! 白衣の男性は出入り口方面に逃走」
トランシーバーから落ち着いた隊長の声が聞こえた。
「俺だ、そいつが出入り口から勢いよく出て行くのを目撃した隊員がいる、あり得ない速さだったらしい。
とりあえず警護以外の各班は地下研究所に集合だ」
「了解しました」
各班長が同時に返事をした。




