七月四日「卯月の推理」
数日後、映像を纏め終わった私は多発水死体事件の資料を見ていた。
「管轄内で数十件の水死体……」
資料をめくりながら石持博士の言葉を思い出す。
「ハリガネムシは外に出た後なんらかの影響を受けて強い本能があらわれた……」
私はある事を思いついて多発水死体が一つの事件として取り上げられる数ヶ月前の死亡事件を調べて気になる物を時系列順に纏めてみた。
・高層ビル飛び降り自殺
・通り魔殺人事件
・ストレス自暴自棄
・風呂場溺死
目立つ死亡事件だけでこれだけもある、改めて見てみると例年より相当多い。
そしてこの周辺に誰もが驚いたであろう出来事があった。
日本に隕石が落下したのだ。
私は隕石墜落について資料を纏めた。
「日本隕石落下について」
20××年×月×日 日本に隕石が飛来した。
隕石は大気圏突入時に約三つの大きな物に割れた、そのうちの一つは空中で燃え尽き、一つは墜落前に小さな破片に崩壊、無数の破片となって降り注いだ。 最後の一つは大きな形を保ったまま墜落、地震等の重大な被害をもたらした。
この隕石落下の一週間ほど後から死亡事件は増えている。
自分で上げた四つの事件を見直す
・高層ビル飛び降り自殺
この時、飛び降りた人は何を呼びかけても全く反応しなかったらしい。
持っていたペットボトルの水を呑んだ後に表情を変えずに飛び降りたという。
・通り魔殺人事件
犯人にはほとんど意識が無くただただナイフを振り回していた。
最終的に火事で現場に来ていた消防車のホースを切り裂き(普通は切れない)思いっきり水を浴びて大人しくなった。
・ストレス自暴自棄
ある女性が職場にていきなり発狂して走り出し、職場の簡易台所に思いっきり突っ込み蛇口と湯のみを壊して死んだ事件だ。
裁判ではこの原因を会社での重労働だとの判決をくだした。
・風呂場溺死
ある一人暮らしの老人が風呂場で死んでいたもの。
持病により意識を失った物として事故として処理されている。
そして風呂場溺死事故の数日後に多発水死体事件の最初の被害者が水死体となって発見される。
飛び降り自殺と通り魔殺人事件、この二つの容疑者の異常行動に対する説明は無い。
ストレス自暴自棄ではストレスと判断されているが状況とその他職員の証言だけで判断されている。
最後に風呂場溺死事故、確かに老人は持病を持っていた。
しかし薬も服用しており医者は極め
て稀な物との見解を示している。
全てが人間の意思による行動とは思えない、そして全てに絡むのが[水]である。
ハリガネムシは昆虫が水に入ると昆虫の体を突き破り出て行く。
多発水死体事件の時の被害者にあった小さな穴、あれはハリガネムシが出てきた跡だろう。
上げた四つの事件がハリガネムシによるものならば、当人に意思は無くハリガネムシによる操作ならば。
そしてハリガネムシが川に出るのが一番だという学習をして、以降その方法を使い続けたのならば……
そして隕石の落下、これがハリガネムシに影響を与えたとすれば時期の説明もついてしまう。
根拠も証拠も無いただの憶測に過ぎない、でもこれが全て現実で起こっているのならば……
私は資料に少し書き足しをして博士の元に急いだ。




