七月四日「ハリガネ的磁場」
巨大なハリガネムシを目の前にして俺は少し怖気付いた。
「拓人さん、行きましょ」
凛は平然と乾燥機の調整をしている。
「ああ……ラダー頼む」
[ライト、多い、レフト、少ない」
「右の方が多いらしいから右から責めた方がいいかもしれないな」
「邪魔がいると威力が落ちる、雑魚は任せた」
紀坂さんはそう言って巨大なハリガネムシに向かって歩き出した。
「凛」
「わかってるわ」
凛が乾燥機を構えるのを見てチェーンソーの準備をした。
雲があるせいで薄暗い中をゆっくり車椅子を押しながら歩いた。
時々襲ってくる少量のハリガネムシは容易に切る事ができた。
[オールまわーり]
ラダーの声が聞こえたと同時に凛に合図を出す。
「凛、来たぞ」
「了解、集めて」
「ああ……ラダー頼む」
ラダーに呼びかけて左手を前に突き出す。
[ラダー、あつめる]
周りに集まってきていたハリガネムシが一同に目の前に集まりだした。
「本当に出来る物なんだな」
「当然よ」
なんでも強化されたハリガネムシは独自の磁場で統率するように遺伝子調整をしたらしい。
その磁場の構造をラダーに覚えさせたとかそんな感じらしいけど正直わけがわからない。
「下がって」
凛の合図で下がると乾燥機が作動した。
強烈な風、おそらくは熱風が前方に広がりハリガネムシ達が次々に動きを止める。
「……ここまでね」
凛が乾燥機を止めた
「どうした、まだ少し残ってるぞ」
「言ったでしょ、何度も使える代物じゃ無いって」
残りのハリガネムシは約十匹、しかも乾燥機の影響により動きも鈍くなっているからどうにかなるだろう。
「そうか、じゃあ下がってろ」
チェーンソーを構えた俺を凛が止める
「その必要は無いわ……せぇの!」
凛が乾燥機をハリガネムシの方向に投げた、乾燥機はハリガネムシの近くに叩きつけられた形となる。
「シーユー……なんちゃって」
地面に叩きつけられた乾燥機が爆発を起こして十匹のハリガネムシを粉々に吹き飛ばした。
「爆発……?」
「だから何度も使えないのよ」
「な……なるほど」
凛は肩にかかっていたポニーテールを払って
「紀坂さん達と合流しましょ」
とポケットからメスを取り出した。




