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ハリガネパンデミック  作者: ナガカタサンゴウ
●地域防衛自衛隊
24/56

七月四日「巨大ハリガネムシ」

 モニターに写っていたのはハリガネムシだ、長く頭がどちらかわからないようなその姿は紛れもない、ここ数日何度も見たハリガネムシだ。

  だが俺は疑った、それが本当にハリガネムシなのかと。

  俺は再度凛に聞く

「これは、ハリガネムシなのか?」

  モニターを凝視していた凛がゆっくりと頷く

「まさかここまでの成長を見せるとは思ってなかったわ」

「これが成長なのか」


 モニターに映るハリガネムシ、それは今までみたハリガネムシとは大きさが違う。

 今までが蛇くらいの長さだったのに対して今回のは異常な長さだ、縦に伸ばすと三メートルほどあるのではないだろうか。


  しかしこれはもうハリガネではない、長さと太さの比率はもとのハリガネムシのまんまなのだろうけど太い、その高さが異常な為に太い。


  これまでのハリガネムシが人を貫いていたのに対して今回のハリガネムシは車のように人を突き飛ばすだろう、そんな太さだ。

「固まらせれば……大丈夫だよな」


  凛の教えだがハリガネムシは表面が乾くとハリガネのように固くなってしまう、強化ハリガネムシは通常のハリガネムシより相当乾きに強くなっている。


  しかし凛が改造した大型強化乾燥器を使えば今までのハリガネムシは固まってきた。

  ただその出力ゆえに何度も使えない最終兵器と凛は言っていた。


「今こそ最終兵器を使う時じゃないか?」

  凛が首を横に振る

「無駄よ、強化ハリガネムシは中身まで乾かないと固まらないように遺伝子強化されてるの。

  あの大きさだと表面が少し固くなって逆に倒しにくくなるわ」

「最終兵器があっという間に効果無しかよ……」

  落胆する俺の背中を凛がはたいた

「敵は今までに無いような生物よ、対抗策が潰れるくらい当たり前」

「凛……」

「それに……今はこの状況をどうするかが問題よ」

  凛はモニターを見つめた。


 巨大なハリガネムシをその場から動かさないように修二さん達が攻撃と防御を繰り返している。


 凛が強化乾燥器を取り出した

「どうすんだよ……それは効果が無いんだろ?」

  凛がウインクをして

「効果は無い、でも人間の進歩やアイデアに無駄は無いのよ」

  凛が自信満々に言うと開いたままの研究室の扉から声が聞こえた。


「良い事を言う、その通り研究に無駄は無い、失敗は成功の元と言うじゃないか」

  立っていたのは男性だった、黒くて長いコートの真ん中をベルトで締め、サングラスをかけて異様な雰囲気を放っている。

 

 凛を横目で見た、知り合いではないようだ。

「その、どちら様ですか」

 男性はサングラスをあげて

「元治安維持隊科学者、紀坂(きさか)だ」

「治安維持隊……」

  治安維持隊と言えば元リーダーだという志奏さんがいた場所だったはずだ。

「志奏の事なら関係無い、俺は自らここを選んだ」

  そう言って紀坂さんはサングラスを取った

「ひゃっ……」

  凛が驚いて俺の後ろに隠れる。

  凛の背中を軽く叩いて俺は聞く

「その目は……」

  紀坂さんの左目は無かった、代わりに銀色の球体が埋め込まれていた。

「カメラだ、目は奴らとの戦いで失った……さて」

  紀坂さんは凛が持っている乾燥器を指差した

「それを持ってこい、周りの雑魚どもが邪魔だ……それで固まらせろ」

「わかりました」

  凛が乾燥器を持って歩きだす

「待て凛、危ないから俺が行く」

「拓人さん、これが操作できるの?」

「そ、それは……無理」

  なら、と凛は俺の方を向いて

「私を守ってください」

「もちろんそのつもりだ」

「行くぞ」

  俺達は紀坂さんの後ろを肩を並べて歩き出した。

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