六月二十日「臨時リーダー」
早めに治療を終えた俺は待合室で凛を待っていた。
待合室のドアが開いて修二さんが入ってきた。
「具合はどうだ」
「足はまだ動かしづらいですがゆっくりと歩く程度なら」
修二さんは驚いて
「お前歩けるのか……」
「はい」
「あまり動かすなよ……あの子を待ってるのか?」
今も凛が治療を受けている手術室のチカチカと点滅しているランプを見て俺は首を縦に振る
「そうか……じゃあ安静にな」
出て行こうとする修二さんに俺は疑問をぶつけた。
「修二さんはここのリーダーなんですか?」
修二さんは少し難しい顔をして
「臨時リーダーってとこだな」
「臨時リーダー?」
「お前、治安維持隊の基地が半壊したのは知ってるか?」
「治安維持隊ってあの新しい自衛隊みたいな……」
修二さんは黙って首を縦に振る
「その治安維持隊基地が半壊した、それで本部からはぐれたある一人の男が本当のリーダーだ」
「本当のリーダー……ですか」
何故か修二さんには憎しみのような表情が浮かんでいた。
「男の名は志奏、治安維持隊では班長だったらしい」
「その人がリーダーですか」
「ああ、リーダーにして俺達の恩人、そして冷酷な男だ」
「冷酷……ですか?」
修二さんの顔は憎しみに満ちていた。
「……これ以上は今聞くな、いずれ話す」
そう言って修二さんは出て行った。