六月十七日「卯月班結成」
「……各隊の状況は未だ掴めない、出入り口を閉じている瓦礫の処理には三日ほどかかるだろう、負傷者は休養に、動ける奴は瓦礫処理にあたれ」
謎の生物が出現した翌日、隊長は冷静に指示を出した、その後に声を張って叫んだ。
「これよりここにいる俺らで臨時チームを結成する! 残ってる班は集まって座れ、欠員が出ている班は立っとけ」
瓦礫処理に当たっていた海藤がこっちに歩いて来た。
「神杉班には斉藤が入れ、……ここは志奏班か」
私と海藤は敬礼をして
「はい、志奏班欠員一名……」
言葉が出なくなった私の代わりに海藤が続ける
「欠員者は班長、只今二名です」
隊長は少し考えて
「稲葉、こい!」
隊長に呼ばれて来たのは海藤よりも若い女性隊員だった。
稲葉と呼ばれた女性隊員はまだぎこちない敬礼をして
「稲葉彩女、隊長のお言葉により志奏班に配属となります!」
隊長は稲葉の頭に手を載せて言う
「そんなに力まんでいい、こいつは新人だが腕は相当だ」
海藤が稲葉をまじまじと見つめる
「期待の新人ってヤツですか」
「まあ、そんなところだ」
その後隊長は忘れ物でもしたかのような気軽さでこう言った。
「あ、卯月お前が班長な」
「え?」
「この班で一番キャリアがあるのはお前だ、志奏が優秀すぎたからお前はサブだっただけで班長としての素質は充分だ」
そう言って隊長は違う班の元に歩いていった。
私は海藤と稲葉の方を向いて
「……改めて臨時班の臨時班長となった卯月 桜よ、臨時の班だけどこれからよろしく」
「よろしくお願いします!」
「固いなー彩女ちゃん、あと先輩は臨時を強調しすぎです」
そんなわけで臨時の班、志奏班改め卯月班が結成された。