六月十六日「コンビ結成」
「……ハリガネムシ?」
「そう、今この町を襲っているのはハリガネムシ、貴方の中にいるやつと同じ活性化型ハリガネムシよ」
「じゃあ俺は寄生されて……」
「大丈夫よ、死にはしないわ、そのハリガネムシは何故か弱ってるはずよ、たぶん胃酸か何かが強いのよ」
「確かに俺は胃酸が強いが……」
「ならそれが理由ね、運がよかったわね」
少女はポケットから出したメモ帳に何か書き込んで俺に顔を近づけてきた。
「目は異常なし……毛穴も異常なし……やはり感染経路は口かしら」
「あの……顔近い」
「今検証中だ……っごめんなさい」
少女は顔を離してメモをとる。
「……で、どうしようかしらね」
「とりあえず安全な施設が欲しいな」
{右}
ラダーの声を聞いて右を見た、
しかしいたのはハリガネムシではなかった。
いたのは動物園にいたであろうガチョウだった。
俺達は走り出した
「なんであいつに反応するんだよ」
「わからないかしら、ハリガネムシは寄生するのよ」
「でもあれはカマキリとかなんだろ? あれガチョウだぞ!」
「あれは活性化型ハリガネムシよ、ガチョウにも寄生するわ」
「は!?」
結構走った、少女が息切れしてきている。
俺は少女のポケットからメスを、自分のポケットから密かに拾っていた果物ナイフを取りだした。
「どうするの?」
「目を潰す」
一か八かだ……
俺はメスでガチョウの目を潰し果物ナイフで足を切りつけた。
ガチョウは歩けなくなり無残に倒れた、死ぬのも時間の問題だろう。
まさか成功するとは……なんだか身体が勝手に動いたような……
「あ、すまんメスやっちまった」
「別にいいわ、沢山あるもの」
少女はポケットからメスを取りだして笑った。
「メス持ちながら笑うなよ」
「怖いかしら」
「おう、今のお前怖い」
少女はメスをなおして
「お前じゃなくて凛ね、石持凛」
「ん、そか」
「そか、じゃないわよあなた名前は?」
「ん、ああ俺は塚井拓人」
「じゃあよろしく、拓人さん」
俺は少女が出してきた手を握り
「よろしくな、凛」
ハリガネムシを知る女とハリガネムシを身に宿した男のコンビが結成された。




