誰か嘘だと言ってくれ
短編です
番号札には、20番と書かれていて、目を細めて笑う、気味の悪い男が俺に向かって手を挙げた。
「20番の方、どうぞ」
促されるまま席に着く。ここはいったいどこなんだ?
「さて、本日はご死亡、ご愁傷様でございます。まずはお書きいただいた書類を確認させていただきます」
バインダーに挟まれていた書類にさらっと目を通した男は、すぐ俺に向き直った。
「ココの、死亡理由の欄が空白ですと、成仏コース、輪廻転生コースがすぐにはお選びいただけません」
勉強嫌いな俺だって、その辺の言葉は知ってる。つまり俺、死んだのか?
「亡くなられた当時のご記憶はございますか?」
「いや、頭痛い程度の記憶しかないです」
「当方でもお調べすることは可能なのですが、直接の死因しかお調べできないのです。成仏や転生には、“なぜそのような死因に至ったか”の情報が必要でして」
「俺の死因って何なの?」
「頭部外傷のようです。強い力が頭に加わったことで、脳の血管が傷ついて、あふれ出した血液によって、脳が圧迫され、機能を失ったことによる死亡ですね」
男がPCを弄るとそう言う情報が出てくるらしい。
つまり俺は、誰かに頭を殴られて死んだ、と・・・。俺は生前、誰かに恨みを買うような人間だったんだろうか。思い当たる節は・・・あるにはある。俺結構やんちゃしてたから。
「あぁ、生前の行いに、“恐喝”や“窃盗”が含まれていますね。このままですと、転生や成仏をすぐにお選びいただけません。しかし死の理由が他人からの攻撃等であれば、精算処理を行っていただいた上で、選択が可能になるケースがございまして・・・」
ぐちゃぐちゃと説明されても、役所の仕組みはよくわからない。ソレが顔に出ていたようで、男は少し考えるしぐさをした後、一枚の紙を出してきた。
「ご相談なのですが、夢枕出現申請書というものがありまして、現世で生きる方の夢枕に立って、お話をするという制度なのですが、ご利用されますか?」
「それなら俺を殺した奴の夢枕に立てるかもしれないってことだな!」
「ただし、出現先はランダムで、生前関係の深かった方のなかから無作為に選ばれるので、必ずしも目的の方の夢枕に立てるというものではありません」
「それでいいよ」
「では、あなた様の本来残していた寿命を一年分使わせていただいて、夢枕申請を進めさせていただきます」
男に促されるまま書類を書いて、俺は「夢枕に立つゾウくん」という阿保みたいな機械に入れられた。ガスが充満してきて、眠くなって、気を失った。
目を覚ますと俺は変な世界にいた。妙に殺伐としていて、なんだか仄暗い。すれ違う人間すべてが喧嘩している。でも中学高校の頃、俺が喧嘩した相手もちらほら見える。これは、多分、俺の幼馴染の夢だろう。喧嘩っ早くて、就職した後も、上司殴ったとかですぐクビになったり、目が合ったサラリーマンに喧嘩吹っかけようとする、狂犬みたいな奴だった。俺、結構アイツと仲良かった気がしてたんだけど・・・アイツが俺を殺したのか・・・もしくは別の誰かか。とにかく本人に話を聞いてみよう。
歩いていくと、複数人と喧嘩する幼馴染が居た。
時間が惜しいから、飛び入りで喧嘩に参加した。久しぶりの喧嘩で、体も動かせてちょっとすっきりした気がする。
「久しぶりだな、元気してたか?」
「久しぶり!どうしたんだよ?」
「俺さ、俺を殺した奴探してるんだ」
「・・・はぁ?」
俺はついさっきまでいた役所みたいな場所の事、死に至った理由を探るために夢枕申請書を使ったことを話した。
幼馴染は勉強が苦手な奴だから、あまり複雑な説明はしないほうが良い。
「だからさ、俺を殺した奴、お前知らない?」
幼馴染がそうじゃないことを祈りつつ、藁にもすがる思いで、そう聞いた。
ちょっと悩んだ後、幼馴染はこういった。
「お前殺したのはバナナだよ」
——は?——
そんな、お笑いみたいな・・・。




