翡翠姫の調略
【フローラ姫サイド】
現在、魔の森にあるアルブル王国の本当の首都に到着しました、サウス辺境泊軍と一緒にです。
度々の魔物の襲撃も、グレイお義父様が真っ先に倒してしまいます。私は迫り来る魔物に対しての索敵をして、樹木魔法で援護しているのみでした。
魔の森にある首都には、三国同盟の魔の手は伸びておらず一安心です。今はまだ猶予がありますのでグレイお義父様には、我が父である国王陛下にお会いして貰いました。
「お父様、フローラはただ今帰りました。サウス領の辺境泊当主のグレイ様自ら援軍としてお連れしました。」
父親であるヘイゼル・ド・アルブル、現アルブル王国の国王陛下です。
「ようこそ、お越し下さいました。これよりは親戚に成る身、今後も両家の為によろしくお願いしますぞ。グレイ殿」
「これは丁寧な挨拶、痛み入ります。フローラ姫はよくできた可憐な子で、我がバカ息子には勿体ないほどの美姫。お預かりする以上、責任を持っていきますぞ。まずは貴国の平定を第一に考えて生きましょうぞ。」
お父様とお義父様が堅く握手をしている姿が、私を認めて頂いていると感じる事が、本当に嬉しかった。
翡翠姫フローラはまずは三国同盟の同盟解除に動き出す。
各国の兵の中にアルブル王国の間者を、忍ばせて噂話を流し始める。それは三国共にフローラ姫を求めているという事。三国は共闘してはいるが得られるモノは一つの国だけ。つまりは他の二ヶ国は同盟という名に縛られて、得られるモノが何も無くなる。
それを各国の兵の中にいるフローラ姫が仕込んだ間者が、吹聴している。
「あの国はアルブル王国を自分達だけで独占するつもりだ、我らを捨て駒にする気だ」
「あの国はぬけがけして、自分達だけ独占する話しをしていた。自分達だげで富を得るはずだ、我らを囮にするつもりだ」
など侵攻するツトラ王国、ジル都市国家群、西デロビ国の3ヶ国は元々は欲深い指導者達だからこそ、噂話だけでも自国の利益にならないかもしれない、お互いに疑心暗鬼になり、アルブル王国の仮の首都を占領する三ヶ国の仲が急に冷え込んできていた。
急に手を組んでも連携など出来るはずもなく、バラバラになって行くのも時間の問題だった。
「今の所順調ですね、ユリウス様が来るまで、このまま内部から崩していきましょう」
「うお、おっかねー。さすが《謀姫》って言われるだけあって謀略はお手のものだな。ユリウスのヤツ、フローラちゃんを怒らせたらタダじゃ済まなそうだな」
ユリウスの父親グレイは、フローラ姫の鮮やかな手並みに身震いしている。
「あら、やだ。お義父様は、私をそんな風に思ってらしたんですか?悲しいです」
シュンとしたフローラ姫は年相応の少女らしく可愛かった。
「あー、ほら。そんなことないから。フローラちゃんなら、ユリウスがバカをやっても上手くカバーしてくれそうだなって。だからそんなに落ち込まないでよ」
「ウフフッ、やだ。お義父様。本気にしないで下さいませ。でも嬉しかったですよ。ありがとうございました」
「なーんだ、ハハハッ。……で、どうするの?首都に攻撃をかけるかい?いつまでも三国同盟の好きにさせとくのもシャクだしな」
「ウフフッ、そうですわね。ユリウス様が来るまでには首都は奪還しておきたいのも事実ですが、まだいくつかの策が完璧ではありませんので、少しお時間を置いてからに致したいですわ。ですので、私は我が国特産の茶葉で、お義父様をおもてなしさせて頂きたいですわ。どうでしょうか? お茶をご一緒してみたいですわ」
「ん?そうかい。ならご同伴にあずかろうかな。ユリウスのヤツも良い嫁を貰ったな。我が妻の、アリスにもひけをとらんな。」
二人はお茶を飲みながらも続々と入ってくる、情報を整理しながら作戦を立てていく。そして三国同盟の中でも最初に目をつけていた、ジル都市国家群は小さな都市の集合体で各都市に代表がいる。
都市国家群の総代表は、交易都市サンラルドの大商人であり領主のデベロが勤めている。
しかし他の都市国家の代表達にもそれぞれの考えてもあり、戦争反対派の都市国家もある。
フローラ姫はそこに使者を向かわせて、各都市を調略していた。
ユリウスやグレイなどのサウス辺境泊軍にお願いすれば必ず勝ってくれるのは分かっているが、やはり自国の戦いだから、例え最後に手を借りようとも被害を少なくさせる為に、フローラ姫は日夜頭を悩ませて情報収集を行っている。
そんな様子を見ているグレイ達、サウス辺境泊軍も出撃を前に闘志を燃やし出番を待っていた。
サウス領を出てから約三カ月が経ち、遂に三国同盟が仲違いを始めたという情報が入ってきた。
「皆様、いよいよ首都の奪還に向けて動いていきます。そして作戦は…………にした作戦です」
「ちょと待った。本気でそんな事をやるのかい?いくらなんでも無茶だろう。もう少し違う作戦を考えてもいいんじゃないかい?」
「お義父様ありがとうございます。そう言って貰えてもの凄く嬉しく思います。ですが私もユリウス様に嫁ぐ身で何もせずにはいられないのです。どうか、私の覚悟をお受け取り下さるようお願い致します」
「…………いいんだな?引き返す事も出来なくなるかもしれないぞ」
「はい、ユリウス様と結ばれる時に覚悟をしておりましたので」
そう言うフローラ姫の翠目は意思の強さを物語るような輝きで誰も止める事ができなかった。




