不知火幼年組《繭》
世界最強と言われている、冒険者クラン不知火。それは、ユリウスと狼獣人で元奴隷のユキミとでスタートした冒険者パーティーが大きくなり誕生した組織だった。
そして古参メンバーはほとんどが訳ありが多くユリウスやユキミに助けられた人だったり、元々は孤児だったりといった集団だった。
ユリウスやユキミは冒険者しながら各地の孤児や奴隷の子供等を集めてサウス領で引き取り、日常教育と戦闘技術を教えていた。
そんな彼等はいつしか不知火の幼年組(十二歳未満)《繭》といわれ世界に羽ばたくのを待っている。
この繭には実質リーダーになっている男女がいる、赤い髪短髪で気が強そうなダニエル(十二歳)と茶髪を肩くらいまで伸ばしたしっかりとしてそうなジュディア(十一歳)だ。二人とも元々は孤児のリーダーでそのままサウス領に来てからも子供達のまとめ役をやってくれている。
その中で勇者パーティーのメンバーも魔闘技の練習をしている
「お前達が勇者だな。ユリウスのにーちゃんからしばらくは俺達と訓練させるように言われてるから、よろしくな。でも、お前達あんまり強そうじゃないな。着いて来れなきゃ置いていくからな。しっかりとやれよな。」
「ぐぬぬっ、王太子の私に向かって口のきき方が悪いな。親がいないで育つとまるでサルの……ような」
ド~~ン!!!!
ダニエルがエラソン王太子に向かって石をなげた。それは当たらずエラソン王太子の顔のすぐ横を通り過ぎ近くの木に当たり木が砕け散る。投げられた石はユリウスが使っていた霧のようなモヤが立ち上る感じでスゴい速さと力強さだった。
エラソン王太子は会話の途中だったのを邪魔された感じだったが怒りよりも驚きのほうが勝っていた。
まさか、勇者パーティーの誰もが苦戦して短い時間しか出来ない魔闘技を目の前のまだ成人していない少年とも言うべき年齢の子供が平然と使い石を投げてコントロールもしている。そしてダニエルが戦闘態勢に入ったのを見ると周りの子供が一斉に霧状のモヤをまとい始めていた。
「驚かせてごめんなさいね。私達はあなた方をバカにしたい訳ではないのよ。」
優しそうなアルメリアが子供達の視線の高さに合わせてしゃがみ込み子供達に話しかけている。そしたら一人一人とモヤが無くなっていき最後はダニエルとジュディアもモヤが無くなった。
「分かった。ここにいるヤツらはみんな孤児ばかりだから、親の事を言われるのが一番腹立つからな。それにしてもねーちゃんはネメシア様に似てるな」
ダニエルはアルメリアにニカッと笑い言ってきた。
「……そう、だね。ネメシアは私の妹なの。私はネメシアのお姉さんだよ」
「あー、やっぱり。私もお姉ちゃんとネメシア様が似てるなって思ってたんだよ」
ジュディアがアルメリアの周りを歩きながら観察している。
「皆はネメシアと仲良しなの?」
「うん、ネメシア様はよく魔法を教えてくれるし、優しいよ」
「そうだよね。しかもまだ俺達と年が変わらないのに魔法部隊七番隊の隊長だからな、すげーよな」
小さな子供達にも慕われているネメシアが誇らしいが同時に悔しかった。だからこそ、努力して追いついてみせるよ。
「そうだね。まだ私はネメシアみたいに強くないから、皆に教えて欲しいな。それでいいですね、殿下。あまり子供達の悪口を言ってると王国の王太子は器も小さいっと言われますよ」
「くっ、分かった。我慢してやる、喜べこの私が貴様らの言うことを聞いてやる」
エラソン王太子は腕を組みながら上を向き高笑いをした。その下で最年少のカリン(四歳)がエラソン王太子のズボンを手にして引っ張ると、
「お兄ちゃん、オ○ッコ出る。」とモジモジ始めて、
「なぬ!?ちょっと待つのだ」と抱きかかえた瞬間に大事故が起こる。
それは当たり前のように、何故か高く持ち上げられたカリンが、エラソン王太子の顔に向かいまるで極上の蜜であるフォレストビーから採れるロイヤルハニーと見間違うかのような一滴が金貨一枚と言われるくらいの価値がある黄金の雫と似た液体が、タイミング良く大声を上げていた、エラソン王太子の口の中に寸分の違いも無くヒットしていた。
「アババババッ」息を出来ずにいた王太子に向かって、
「……カッコワルイ……」ミリアンはぼそっと呟くと周りの子供達と他の勇者パーティーが大笑いをしている。
そして、やり切った感を出したカリンはエラソン王太子にニコっと笑い離れていく。
そのまま微動だにしないエラソン王太子の肩が僅かに揺れて、その揺れが段々と激しくなり、
「え~い、キサマ。王国の王太子である私になんてモノを引っかけてくれるんだ。まさに万死に値するぞ」
突然の怒りにカリンが泣き出す。それを見ていたアルメリアはカリンを抱き締めて、
「王太子殿下。子供に怒ってもしょうが無いと思いますよ。だから器も小さいって言われるんですよ」
アルメリアの勢いにエラソン王太子は何も言えず下を向き拳を握りしめる
「お姉ちゃん、良い匂い。まるでお母さんみたいだね。」
さっきまで泣いていたカリンは会ったことのない母親の姿をアルメリアに見ていた。




