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お前の全てを奪ってやったぜ。と言われたがほとんど無傷な俺はどうすればいいの?悲しむマネをすれば満足してくれるのか?  作者: 月鈴
第二章 幼少期に戻って

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ムーン セレナーデ

 勇者パーティーの遠征を何回か繰り返し約2年間が過ぎたくらいだ

 勇者パーティーの評価はうなぎ登りで逆に俺の評価は雪山よりも良く滑るくらいの直滑降(ちょっかっこう)

 最近では街を歩くと罵声されたり絡まれたりカツアゲされたり突然蹴られた事もある

 まあ、しょうがないな


 勇者パーティーの遠征では近隣だけでなく郊外に行くことも多く泊まりもしばしばある野営なんかは勇者パーティーは見張りすらしない

 護衛騎士や冒険者達が中心で行う、そこに俺も混ざる

 そして、街で泊まれるときは例のごとく酒を呑んでは暴れる(15才から呑んではいい世界です、日本ではダメですよ)

 やってる事がほぼ一緒の勇者パーティー


 ただ1つだけ、アイツらは一線を越えた

 本当に簡単に越えた、それからはお猿さんのごとく頻繁(ひんぱん)にな。バレて無いと思ってるんだよな

 そして、俺と鉢合わせした運の無いピンク色の髪の毛の幼なじみさん(アルメリア)

 王太子殿下の部屋から深夜に出て来た所に俺登場

「あっ」と声が出るくらいビックリしてた

 当然、俺は一線を越えたのは知っていたからそこまででは無かった


「アルメリア、少し話さないか?」


 俺が声をかけると《ビクッ》となり小さな声で


「…はい」とだけ言った


 お互いが無言で、ユリウスの後ろを歩くアルメリアは頭の中が真っ白だった


 前を行くユリウスは昔を思い出していた。

 アルメリアと出会い体の弱い女の子が魔法を頑張り、その魔法で健康を取り戻したときの笑顔を…

 そんな頑張りを弱音を吐かずやり切る彼女に対して初めて恋をした日の事も…

 小さな動物や小鳥に一生懸命回復魔法を使っていた優しさを…

 自分で短剣を打つためにボロボロになりながらもミスリルを調達しに行ったダンジョンも…

 ミスリルを手にいれドワーフの親方に土下座して打ち方を教えて貰ったときも…

 プロポーズする為に魔の森に入り《月の妖花(つきのようか)》を探しに辺りが暗くなるまで回り、ようやく見つけたときの汗を…

 プロポーズの時に見せてくれたあの美しい涙も…


 ()()()()()()()()()()


 この街はすぐ近くに丘があり世界中の色々な花が咲く有名な丘がある

 今夜は月が良く見えるので真夜中でも道に迷わずにこの丘まで来れた

 少し風で髪が流れて、でも寒くはない

 綺麗な月が2人を照らしていた


「今まで、待たせてゴメン。待たせすぎた俺から言うのがスジだと思って。俺の初恋はアルメリアだった。婚約者になれたときは凄い嬉しかった。本気で幸せにしたいと思ってたよ。俺は確かにアルメリア、キミに恋をしていたんだ。だからもう…今日で婚約者という関係は終わりしてただの幼なじみに戻ろう」


 アルメリアは何も言えず涙が一滴こぼれ落ちる……そして今まで肌身離さず持っていたミスリルの短剣をユリウスに渡す

 それを見たユリウスは短剣を受け取り腕に捲いてたアルメリアから貰った裏に髪の毛を抜い止められた銀の腕輪を外し差し出した

 アルメリアは腕輪を受け取れず1歩後に下がると


「ごめんなさい、ユリウス。貴方を裏切ってしまったの。そして今までありがとう」


 一礼すると丘を降りる為、歩き出す


「ユリウスの前で泣くのは止めよう。悪いのは私だ、ユリウスは優しいから泣いたら許してくれるだろう。でも私はもう…」


 そう思い最後にチラッと振り返ると

 ユリウスはこちらに背を向け月を眺めていた、その姿が幻想的でまるで絵の中の物語みたいに見えた

 そしてユリウスは手に持っていた私が返した短剣を鞘から抜く

 鞘から抜かれた短剣は1度も使われる事のなく綺麗なままで、でも不格好な短剣、それと私がユリウスに贈った腕輪を天高く放り出す

 月の光に照らされミスリルの短剣と銀の腕輪が天を舞う

 そしてユリウスはいつの間にか手にしていた二振りの刀を持っていた

 1振りは薄らと赤く輝く金色の刀

 1振りは薄らと青く輝く銀色の刀

 その刀が天を舞うミスリルの短剣と銀の腕輪を交差するように1度だけ振るわれた


 途端に濃厚な魔力がユリウスから溢れ通常なら弾かれるか切れても真っ二つになるはずの短剣と腕輪が『パンッ』と弾けるような音が丘全体に鳴り響きアルメリアは立ち尽くした


 そこには粉々になったミスリルと銀が月の光に照らされキラキラと光の洪水になり優しい風が吹きユラユラと舞う、それが金属がぶつかり合い美しい音楽のように『シャラシャラ』と音を奏でていた、そうまるで恋人達の小夜曲(セレナーデ)のような


 その中に金色と銀色の刀を持ち月を見上げているユリウスの背中はあの時の部屋を出られなかった私を連れ出してくれた可愛らしかった少年が(たくま)しく成長した青年(私の王子様)がそこにはいた。

 私は今まで何を見てたの?

 どうして信じなかったの?

 青年(私の王子様)はとっても悲しげにでも、もの凄く格好良かった

 この時に始めて本当の後悔をしたのかも…


 そして一瞬だがユリウスが魔力を解放した事により足元にはあの『月の妖花(つきのようか)』が丘を埋め尽くすくらい咲き乱れて月の光を浴びて仄かに光りユリウスを優しく包みこんでいた


「アルメリア、この花は魔力の濃い場所にしか咲かない花で魔力があれば枯れないんだよ。月の光に照らされると淡く光る。だから花言葉は…」


 ()()()()()()()()()()()()


 アルメリアはそこには居られず慌てて宿に帰った。

 なんてバカな事をしていたんだろう。涙が止まらなかった。


「私は何してるんだろう」


 泣きながら窓辺にある鉢植えに目が行く

 そこにはユリウスがプロポーズの時に贈ってくれた『月の妖花(つきのようか)』が萎れ(しおれ)ていた

 王太子殿下に夢中になり世話をしていなかった

 本当にバカだと、取り返しがつかない

 夜が明けるまで泣きながら窓辺にある鉢植えに魔力を注ぐが花が元に戻る事はなかった

 それはこれからの2人の関係と同じだ


 次の日にユリウスが勇者パーティーと同じ宿から出て行ったのを知ったのは昼過ぎだった。


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