第二話・裏:尾行開始なのにぇ!
午後の商店街。
たい焼き屋の湯気が漂う中、みこちはたい焼きを頬張りながら、ふと視線を上げた。
「……ん?」
通りの向こう、ガラス張りの建物の前に、見覚えのある後ろ姿があった。
キャップにリュック、少し猫背――がいぶまねーじゃーだった。
「すいちゃん!がいぶまねーじゃーがいるにぇ!!」
「え?どこ?」
みこちはすいせいの腕を引っ張りながら、指をさした。
その先では、主人公が建物の自動ドアの前で立ち止まり、スマホを確認している。
「……あれ、料理教室じゃない?」
「そうにぇ!でもみこ、聞いてないにぇ!がいぶまねーじゃーが料理教室に通ってるなんて!」
「まあ、プライベートで料理習うくらいは…」
「みこに報告なしはダメにぇ!!」
すいせいがツッコミを入れる間に、主人公はドアをくぐって建物の中へと入っていった。
「入ったにぇ!!すいちゃん、尾行開始なのにぇ!!」
「いや、もう入っちゃったけど…」
「でも出てくるまでが尾行にぇ!今から“待機モード”に入るにぇ!」
みこちはサングラスをかけ、たい焼きの袋を抱えたまま植木の陰にしゃがみ込んだ。
すいせいはため息をつきながら、隣に腰を下ろした。
「みこち、これ…何分待つの?」
「がいぶまねーじゃーが出てくるまでにぇ!」
「それ、何時間かかるやつじゃん…」
「すいちゃんは“みこの親友枠”だから、最後まで付き合うにぇ!」
「その枠、ほんと便利すぎる…」
ふたりは、料理教室の建物をじっと見つめながら、静かに尾行(待機)を続けた。




