新たなる動き
「アユコ、君に見せて貰いたい物があるんだが、少し良いかな?」
突然オスカーに問われて、アユコは固まった。
目の前にいるオスカーはこのフラリス王国の第一王子、側姫の息子ではあるが、王太子に最も近いと噂されるだけあって、教養を感じる佇まいも、魅了の魔法でも使っているのかと疑うほど、人を惹きつけるオーラも持っている。
そんな第一王子との邂逅は今朝に遡る。
異世界転移してこの世界の聖女となったアユコは、教会に保護され、基本的には大司祭のお手伝いをして暮らしている。
裏の畑で育てている薬草を取りに行ったりはするが、教会外に出る事を良しとされていない為、城下町から教会へ初めて連れて来られた時に、王城にて王族と挨拶したきり、高位な人間とは無縁であった。
レオディアーナとは偶然の出会いで友人となり、頻繁に教会で逢瀬を交わしていたが、この世界が 妹が熱中していた『ドキ☆春祭りのパートナーは君に決めた!』と云う乙女ゲームに似ている為、主要の攻略対象者には近づかないでおこうと決めていた。何故なら、確かにこの世界は『ドキ☆君』の乙女ゲームによく似ているが 相違点も多いので、パラレルワールドの可能性もあるからだ。
そもそも、『ドキ☆君』をプレイした事もないし、攻略対象者と懇意になりたいとも思って居なかった。
にも拘わらず、今朝 教会の庭掃除をしていると、親しげな微笑みを称えた第一王子、オスカーが歩み寄って来るでは無いか。権力が分立してるせいか、王族が教会へ来るのは月初めの祈祷だけなので、オスカーを間近で見るのは初めてだった。
辺りに人影は無いから、自分に用が有るのだろうかと訝しげながらも アユコは丁寧なお辞儀をした。
突然すまないね、と言いながらオスカーが はにかんだ笑みを見せる。
素晴らしい。流石、公式から推されるだけある。
実は『ドキ☆君』がアニメ展開した際に、オスカーと主人公をメインとしたラブストーリーになっていた。ゲームソフトのパッケージも一人だけ多くのスペースを与えられていたし、オスカーを選ぶプレイヤーも一番多かったと聞く。
妹の推しは公爵家の跡取りだったし、アユコが良いなと思ったのは下町のボスだったから、オスカーにさほど興味は無かったが、これだけ間近の 迫力イケメンには腰が引ける。しかも彼は王に最も近いとされる第一王子である、”腐”発言でもして不興を買う訳には行かない。
「君が、先日顕現した聖女だと記憶しているんだが…」
(流石王子、聖女であっても敬称をつけぬか)
アユコが関心していると、続けて顎を掬うように手を添えられる。普通の婦女子なら、真っ赤になって気絶してもおかしくないパンチ力だ。しかし、アユコは腐女子だったので堪える事が出来た。
顔色を変えないアユコを見て、オスカーが両目を細める。いつもと違う反応だからだろう。
「少し君とお喋りしたくてね。付き合ってくれるかい?」
それでもにっこり微笑んでオスカーが言う。
「私はまだここへ来て日が浅いですが、それでも宜しければ…」
「城下町の騒ぎを抑えたんだってね、近々 勲章が授与される予定だよ。」
「そんな、私は出来る事をしただけで…全員救えた訳でもありませんし…」
アユコが顕現すると城下町は地獄絵図だった。
次々に肌に発症する黒点、痛みに呻く人々。何故かアユコが両手を握るとその黒点は消え正常に戻ったが、同時にアユコの精力も奪った。だから全員助ける事は出来なかったし、アユコがそんな事を出来ると知れ渡るにも時間がかかったから、そのまま亡くなった人も多い。
「世の人、全員を救う事など神にも出来ない。充分、君は勲章に値する人だよ。」
オスカーがそんな事を言うとは思わず、アユコは心が温かくなるのを感じた。警戒心が少し解けたアユコは、それからいくつか、オスカーとたわいない話をした。
オスカーは伝染病についての事を知りたがっていたようだが、大司祭のフレッドから口外を禁止されていた。レオディアーナには親友だから喋ってしまったが、他の人にまでペラペラ喋る訳にはいかない。
何より、オスカーは王家の人間だ。
教会と王家は敵対とまでは言わないが、仲良くしてる訳でも無いらしい。まだ元いた世界に帰る目処も立っていないので、大司祭に睨まれるのは避けたい。
互いに自己紹介した際、オスカーは手応えの無いアユコに『名前の呼び捨て』と云う手を使ってみたが、やはり手応えは無く、情報の引き出しは困難を極めた。
そして話はアユコが書物を書いている、という話題に変わっていった。普段 何をしているかと聞かれて答えただけだったが、それにオスカーは酷く興味を惹かれた様子だった。余計な事を言ったかな…と思っても後の祭り。後でそれを見せて欲しいと言われたが、はいドーゾと見せる訳にはいかない。
そこへ、オスカーの侍従が現れた。何事か耳打ちされると、オスカーは「ではまた」と言って去っていった。
切抜けられた事にホッとして、まあもう来る事も無いだろうと思って居たのに、まさか その日の夕暮れに現れるとは思いもよらなかった。
「申し訳有りませんが…アレを見せる訳にはいきません。」
神妙な顔をしてアユコがオスカーに断りを入れる。
レオディアーナには嬉々として披露した自作の書物は、殿方に見せるものでは無い。素敵な詩でも書いてあると思っているのか、オスカーは頑として聞かない。見たら目玉が飛びててしまうと思うが。
「だが、レオディアーナには見せたそうじゃないか?どうして私には見せられないんだ?」
心底 解らないと言うように困った顔を作るオスカー。
「それは…その…ティア様は、何といいますか。私の特別な人で…」
アユコがレオディアーナを”ティア様”と愛称で呼んだ事にオスカーは左目を眇めた。
「ほう? 君達は、随分と懇意にしているようだね。」
オスカーの不機嫌オーラを感じたレオディアーナが、間に入ろうとしたが、先に大司祭が割って入って来た。
「皆さん、本日はもう日も昏れます。夜道は危険ですから日を改めるか、火急であれば 客室に宿泊して頂くのは如何でしょう?教会は、いつでも客室の用意がありますから。」
大司祭の提案に、流石に泊まる訳にもいかないと そこで一旦お開きとなった。
ハルトはもう気が済んだのか、静かに教会を去っていった。
「申し訳ありません、ティア様。折角 来て頂いたのに…」
庭先の門まで見送ってくれたアユコが、しゅんとしている。
「良いのよ。こちらこそ 急に来てしまって、御免なさい。大司祭様の言う通りだわ。」
「でも急ぎだったんじゃ…」
「次はキチンと先触れを出すよ。今日は悪かったね。」
手を取り合って話すレオディアーナとアユコの側までより、割り込むようにしてオスカーが謝った。
「知らなかったよ。君達は、”随分と”仲が良いんだな。」
にっこり笑うオスカーの後ろには、どす黒いオーラが揺らめいている。レオディアーナは、それを私に焼きもちを妬いているのだと勘違いした。
そもそも朝イチで、聖女とオスカーがイチャイチャうふふしているのを見たばかりだったし、オスカーには見せないのにレオディアーナには見せたと聞かされて、オスカーのプライドに傷がついたと思ったからだった。
(あらまあ、随分と心の狭い…)
今まで、婦女子と云う生き物は、オスカーに 意のままに操られていると言っても過言では無いくらい、オスカーの要求を拒む事など無かった。
見せろと言われれば、それがどんなに 手に入れるのが難しい物でも 探し出して献上するくらいには、オスカーの発言は絶対だった。
それをアユコが断ったのだ。
流石、聖女と云うべきか、腐女子と云うべきか。
ヘンリーはずっと大人しくしていたが、オスカーが二人に歩み寄って嫌味を言い出すのを見て、顔がニヤけた。
兄様も人間だったんだなぁ〜と感心している。しかし、教会での収穫は無かった。黒石を見せて貰えるどころか、早々に大司祭に追い払われてしまった。
教会を離れ、玉の宮殿が見えてくるとレオディアーナは口を開いた。
「オスカー様、黒石はどうしますか?」
「一応、現物は確認したいからね。後で日を改めよう。まあ、あの場には”大司祭様”も居たから、話が流れて良かったよ。内情を探ってると思われるのは得策じゃない。」
「分かりましたわ。では後日。」
微笑んで、玉の宮殿まで送ってくれた二人にわかれを告げる。
「ああ、また後日。」
手を振って去って行くオスカーとヘンリーに、レオディアーナがまた会うには、長い長い 時間がかかった。
何故なら、レオディアーナが逮捕されてしまったからだ。
◇◇◇◇◇
あくる朝、いつもの様に身支度を整えていると、急な来意が告げられた。
しかもやって来たのは、先日教会で会った男と二人の軍人だった。彼は、新品のように立派な軍服を着ている。よく見るとそれは団長服の様だった。
そして、ハッキリとした口調でこう言い放った。
「アクアビット公爵、レオディアーナ嬢。貴女を傷害容疑で、その身を捕縛する!」
言うなり二人の軍人がレオディアーナの脇を固める。侍女のミントは今にも飛び掛りそうな顔をしていた。
「傷害?」
レオディアーナはまだ 驚きから戻って居ない。
「そうだ。陛下より王城にお連れする様にと命令が下っている。大人しく着いてくるように。」
陛下、と言われてレオディアーナは先日、魔術塔で一人の男を氷漬けにした事を思い出した。
あの男が申し立てをしたのかも知れない。心当たりのあるレオディアーナは、嫌がる侍女を宥めて、軍の馬車に乗り込んだ。
訳を話せば 赦して貰えるだろう、そんな甘い考えは 謁見した陛下の言により、木っ端微塵に消し飛んだ。
◇◇◇◇◇
《レオディアーナ嬢逮捕》
この情報がオスカーの耳に入ったのは、レオディアーナが王城を去った後だった。
報告をして来た侍従のウェルトに三回も同じ事を言わせたにも拘わらず、ちっとも頭が理解しない。
(逮捕? レオディアーナが?)
逮捕とレオディアーナが結び付かなくて、オスカーは混乱した。レオディアーナが何をしたと言うのだろう。
「ですから…魔術師への暴行です。貴族用の地下牢に入れられたようです。」
「魔術師って…ああ、あれか!。逆だろう!レオディアーナが暴行を受けそうになって、反撃したやつだろう?あれなら、既に陛下に報告済みだ!」
あの時、陛下は確かに難しい顔をしていたが、レオディアーナを責める事など何も言っていなかった。
それがどうして『逮捕』になるんだ?!
オスカーが混乱していると部屋のドアが勢い良く開いた。
「兄様!!!レオディアーナ様の事、本当なんですか?!」
着替えの時に報告を受けたのだろう、シャツのボタンは留まっていないし、後ろからヘンリーの侍従が騒ぎながらやって来るのが見える。
「…落ち着け。俺も今、報告を受けた所だ。」
オスカーの一人称が 私から俺に変わっている。取り繕う余裕が無いのだろう。それはヘンリーにも云える事だったが。
「ど、どうしましょう、僕がレオディアーナ様を巻き込んでしまったのでは…っ」
天使のような顔は青ざめ、うるうると涙が溜まる。
この二人の王子は、周りが騒ぐ程 敵対して居らず、寧ろ周りが騒がしいだけ、とも云えた。突然ノックも無しにドアを開けられても咎められない位には、仲が良い。
「今更だろ、それは俺たちも承知の上だ。しかし、別件の可能性もある。取りあえず、本当かどうか確かめる。それから陛下に確認しよう。」
「…レオディアーナ様は、釈放されるでしょうか…」
オスカーの胸元にヘンリーが縋り付く。
「…陛下は誤解しているに違いない。きっと、すぐに釈放されるさ。」
オスカーはにっこり笑ってそう言ったが、胸の内には言いようの無い不安が渦巻いていた。
◇◇◇◇◇
ハルト・ウェストンは、正式に団長に就任した。
色々ごねてみたが結局の所、団長のドンドラが腕を失った事は変わり無く、辺境の地で療養する事になり、そうなれば王都を離れるしか無く、ハルトは漸く団長になる決意をした。団員が応援してくれたのにも心は動いた。
それなのに、団長としての 初の仕事は、令嬢を王城に連行すると云うものだった。
しかも先日、教会に押し掛けた自分の後に現れた、それはそれは美しい令嬢だったから驚いた。こんな人が罪を犯す訳が無い、思わずそう思ってしまうくらいには、レオディアーナは美しかった。
大司祭に喧嘩を売った事すら忘れて、帰宅出来たのは僥倖といえよう。あのまま騒ぎが大きくなれば、団長云々の話すら危うかったに違いない。
何かの間違いでは無いか…、そう思うものの、命令は絶対だ。しかも今回は陛下直々の王命だ。逆らうには根拠がいる。仕方なくレオディアーナのもとへ行けば、取り乱す様子も無く、優雅に馬車に乗った。本物の罪人が、こういう時にどれだけ醜く騒ぎ立てるか 良く知っているハルトは、「やはり間違いなのでは…」と繰り返し思うのだった。
丁寧にお連れしろとの命令だったので、腕や足を縛る事無く、連れ添うパートナーのように王城に上がった。
歩く度に隣から フワリと良い香りがして、ハルトはそっと深呼吸を繰り返した。
玉座の間の扉まで送って行くと レオディアーナ、一人が中に呼ばれたので、ハルト達は軍に戻る事になった。扉前には衛兵が居たので 聞き耳を立てたい気持ちを抑え、速やかに仕事に戻ったが、あの後、レオディアーナがどうなったのかは分からなかった。
◇◇◇◇◇
激震は教会にいるアユコにも走った。
それを知ったのは、オスカーが陛下へ直訴した後だったが、レオディアーナが釈放される事は無かった。
アユコは教会の自室をウロウロ彷徨い歩いた。とてもジッとしてなど居られない。
そして、一生懸命『ドキ☆君』のストーリーを思い出そうとしていた。この世界は、あの乙女ゲームと完全一致では無いが、良く似ているから 何かヒントになりそうな事は無いかと、必死で頭の引き出しを開けていた。
(ええと、そもそも聖女がプレイヤーだから、物語を盛り上げる為に、悪役令嬢のレオディアーナ様が…でも、”レオディアーナ逮捕”なんて、合ったかな?)
悪役令嬢である”レオディアーナ”が断罪されるのは、全て終盤、ハッピーエンドの手前だ。そこが 一番の見せ場とも云える。
こんな誰ルートにも入っていない内から、レオディアーナが退場する訳が無い。
そう言えば、レオディアーナが悪役令嬢として登場するのは、王家の王子と公爵家の跡取りルートだけだった。他のルートの場合は、また違う令嬢が悪役として登場する。
(つまり…二人のルートではないって事?)
他の三人のルートの場合、レオディアーナが逮捕される事もあったのだろうか?
関係ないルートなのに、逮捕されるレオディアーナが可哀想。何もそこまでしなくても…と思うが、この世界が『ドキ☆君』のパラレルワールドだった場合は話が違ってくる。『ドキ☆君』には無いイベントかも知れないからだ。
そもそも、『ドキ☆君』のストーリーですらアユコは知らず、妹が隣で『尊い尊い』と喚いでいた断片的な情報しか無いのだ。
(うう、ティア様のピンチなのに、何も出来ないなんて…っ!!!)
レオディアーナは、突然この世界に来て孤独だったアユコの同志であり、親友であり、心の支えだった。
出逢ってまだ日は浅いが、友と云うのは、月日の長さでは無く、心の深さで測るものだからだ。
権力が分立しているからなのか、王家や軍の情報が教会に流れてくるのには時間がかかる。箝口令でも引かれてしまえば、一生外に漏れない情報もある。
普段、聖女が教会外に出る事は良しとされていないが、お説教は後で纏めて受ける事にして、アユコは身支度を整えると そっと教会を抜け出した。
この世界がどんな原理で進んで行くか解らない。でもそんなの、元いた世界だって同じだ。
どんな世界も等しく、未来は誰にも解らない。
だから、今、最善だと思う事をしなくては。
取り返しがつかないのが人生なんだから。
真っ暗闇の道を進みながら、アユコは自分を鼓舞し続けたが、茂みから勢い良く現れた人に驚いて気絶しそうになった。
「うううぅ…!!!」
咄嗟に口を覆ったので叫び声を上げる事は無かったが、尻もちをついたアユコの心臓は今までに無いくらい激しく打ち鳴らしていた。ドンドコドコドコ!!!
こんな暗闇の中を踊り出て来た人物は、アユコをビビらせた後、地面に蹲っている。体は震え、うめき声は苦しそうだ。
気を取り直したアユコは、その人に声を掛ける。着ているドレスから、高位の人間だと知れる。
「あの…? 大丈夫…ですか?」
恐る恐る声をかけても、うめき声が響くだけだ。
意を決してアユコがその令嬢に近づく。暗くて良く見えないが、顔はまだ幼く、七~八歳に見えた。そしてその顔には黒点が幾つも現れている。
(呪いだ…!!)
アユコの直感がそう叫んだ。
すぐに彼女の両手を握り、浄化を施す。自身の精力が減っていくのを感じると、彼女からは黒点が消えていく。
呼吸も安定して来たのを確認し、さて どうしようと思った。
たった今、教会を抜け出して来たのだ。
彼女が病気なら、教会に戻って薬を処方して貰わねばらないが、これは城下町で起こった呪いと同じだと思う。
それなら呪いを浄化出来たから、目が覚めれば健康に戻る筈だ。
何より今は、レオディアーナがどうしているのか気になる。
勿論、後からこの事を教会には報告するつもりだけど、今 戻ってしまえば、夜にこっそり抜け出す事は出来なくなるかも知らない。教会は『聖女』を外に出す事を酷く嫌う。
うーん、と考えていたが、令嬢が目を覚ます方が先だった。
「あれ…私…」
「あ!気が付かれましたか?気分はどうです?」
アユコに抱き抱えられて、虚ろだった瞳に力が戻ってくる。そしてハッとした様子で、胸のペンダントを外した。
「こ、これ!これを着けたら、急に苦しくなって…!」
カランとペンダントが落ちる。アユコは慌ててそのペンダントを両手で握ると、すぐに浄化した。
そう、このペンダントの中央にある黒石には、呪いの呪式が書き込まれている。また体から力が抜けていったが、この位ならたいした事は無い。
令嬢に詳しく話を聞かなくてはと、振り返ると。
「私!殿下に抗議致しますわ!」
小さな彼女は、暗闇でも分かるくらい体を震わせて 真っ赤になっている。
「えっ」
「こんな、こんな侮辱、初めてですわ!赦しません!」
困惑するアユコをよそに、彼女は元気になった勢いで猛然と走り出した。
普段であれば、殿下に抗議する事も、猛ダッシュする事も令嬢に有るまじき事ではあったが、死の淵から蘇った彼女に怖いものなど無い。
仕方なく、彼女の後ろを猛ダッシュして着いて行くしかアユコに道は無かった。
(え、ええーっ どこへ行くの?
殿下って、オスカー様?!)