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魔法少女A 2

「さて、ようやく本題に入れるにゃ。あ、自分の姿が気になるかにゃ?」


「お前……今何て言った?」


「? アヤメは自分の姿を確認したいんじゃないかにゃ?」


 猫型生命体は不思議そうに首を傾げる。


「それじゃなくて、さっき私を何て呼んだか聞いているんだ」


「……ああ、”高速(ハイスピード)猫猫(ねこねこ)”の事をいってるにゃ?」


「そうだ……なんだそれは?」


「高速道路の高速にキャットの猫猫で、ハイスピード☆ねこねこって読むにゃ。高速と猫猫の間には記号の☆が入るにゃ」


「漢字にルビを振って高速ハイスピード猫猫ねこねこって事か?」


「そうだにゃ」


 ほわぁ~~~~~ダッッッッサぁあああ!!!!


「おぉい待て勝手に私の名前を決めるな!!」


「名前と言うか、魔法少女のコードネームにゃ? 魔法少女はみんな、固有のコードネームを付与されて、それでお互いを識別するにゃ」


「そのコードネームとかいうのの変更を求める!!」


「……コードネームが気に入らないのかにゃ?」


「ああ……気に入らないね!!」


 私は猫型生命体に対して、指を指し返しながら叫ぶ。


 ここで自分が白い手袋をしている事に気づいた。


「変更しろ!!」


「ふふ……残念ながら無理にゃ」


「チクショウめーーーー!!!!」


 私はスマホを地面に投げつけようとして、思い直してベッドの上に放り投げる。


「そのコードネームに色々と紐づけされているから、よっぽどの理由が無いとその変更はできないにゃ」


「いやダサすぎるだろ!! なんだよ猫猫(ねこねこ)って!! せめてそこはマオマオとかだろ!!」


「でも”にゃんにゃん”になりそうだったのを、流石にそれは駄目だろうって止めた人がいて”ねこねこ”になったらしいにゃ」


 ナイス止めた人っ!!


「……いやいやっ! いやでも、もっと何かあっただろ! 高速に”ハイスピード”って振るセンスはどこから来たんだよ!?」


「ボクに”テルミドール”ってつけるような()()にゃ? そんなのにセンスを求めるのがナンセンスにゃ。諦めるにゃ」


 同一人物かよっ!


「ちなみに、お前は自分の名前と私のコードネームをどう思ってるんだ?」


「……まあ、普通に意味分からないにゃよね?」


 …………。


「ははっ! ドンマイにゃ~」


 猫型生命体がふよふよとこちらに寄ってきて、ポンと私の肩に手を乗せて囁く。


「……どうしても変えられない?」


「心中、お察ししますにゃ」


 変えられない何てことあるか?


 名前を考えた奴ら、絶対に故意犯……つか、絶対にオッサンだろ!


「まあまあ、どうにもならない事は置いておいて、とりあえず変身した自分の姿を確認してみるにゃ?」


 そう言って猫型生命体は、私の前に姿見(すがたみ)の形をした大きなホログラムを展開する。


 私がそれをどけようとすると、直前にそれが私の姿を映し出した。


「…………」


 ……紫。


 スマホの時に何となく察していたが、私のイメージカラーは紫のようだった。


「とってもかわいいにゃ!」


 そこに映っている私の姿は、割とオーソドックスな女児向けヒロインと言えるものだった。


 紫を基調とした服にはふんだんにフリルがあしらわれており、スカートは短めで膝上十センチくらいだと思われる。


 足は白いニーハイを履いていて、手には同様に二の腕まである白い手袋をはめていた。


 そして、一番目立っているのは頭に着けられた大きな猫耳である。


「……あれ、メガネは? ってか化粧までされてるじゃん」


 化粧どころか、髪色がラベンダー色に染められている。


 コンタクトレンズでもはめられたのか、メガネが消えているにもかかわらず視界は良好だった。


「これが、魔法の力ですにゃぁ~」


 私は一応、スカートの中も確認して見るが、服と同様に大量のフリルが付いた見せパン的な物を履いていた。


 ……これ結構エロいな。


「でも、紫かぁ……」


「嫌だったにゃ?」


「いや……嫌ってほどでは無いんだけど、でも……さぁ?」


 私もそんなに詳しいわけでは無いのだが、紫のヒロインって何か、病んでたり中途半端な立ち位置だったりで、ちょっとパッとしない印象があるんだよなぁ……。


「キミはあんまり目立ちたいキャラじゃないにゃ? ボクは割とピッタリだと思うにゃ」


 ……まあ、変に主人公みたいに扱われるのも嫌だし、原色だと私にはちょっと見た目が派手過ぎる気がする。


 この猫型生物が言うように、確かに妥当と言えば妥当なのか。


「じゃあちょっと巻き気味で説明するにゃ。そのスマホを見るにゃ」


 布団に投げ捨てたスマホが、宙を飛んで私の手元にすっぽりと収まる。


「操作はキミが普段使っているスマホとほとんど一緒にゃ。意識だけで操作する方法もあるけど、最初は難しいと思うから後々説明するにゃ」


 私は渡されたスマホ開くと、すぐにホーム画面が表示されて、そこにはいくつかのアプリが入っていた。


「とりあえず一番左上のアイコンをタップするにゃ」


 言われた通り、左上のハート形をしたアイコンをタップする。


♡♡STATUS♡♡

LV 1

HP 10000/10000

MP  4126/5000


「すっごくゲームじゃん……」


「それが、キミの体力と魔力にゃ。HPがゼロになると魔法少女としての力を維持できなくなって変身が強制解除されるから、そうならないようにHPが減ってきたら即撤退するようにするにゃ」


 説明を聞いても、やっぱり本当にゲームそのものだった。


「……これって、解除されても死ぬわけじゃないんだな?」


「変身が継続している間は常にマジックアーマー……つまり結界が展開されている状態にゃ。HPはそのエネルギーを維持するための残量だと思ってもらえば分かりやすいにゃ」


「ああなるほど、たしかにその方が理解できるわ。で、その下のMPってのは何だ?」


 セオリーでいくと、これを消費して私は敵を攻撃……いや、除霊を行うのか?


 ……てか、何ですでに減ってるんだ?


「たぶんご想像の通りにゃ。でも、MPは敵への攻撃にも使うけど減ったHPの回復にも使うからイケイケドンドンで初っ端からガンガン使わないように注意するにゃ」


 想像通りではあるのだが、この辺は実際に使ってみないとどの程度の物かはわからないな。


「じゃあ、それを右にスワイプしてみるにゃ」


 私はスマホの画面に指を触れ、右から左に滑らせる。


♥♥STATUS♥♥

状態  正常

属性  火C 氷A 風S 土C 無A 光A 闇C

攻撃力 50

防御力 50

特性  オールラウンダー型

役割  サポーター


「それがキミの魔力特性にゃ」


「属性……?」


 この火とか氷とかは、ファイヤーとかアイスみたいな魔法が使えるという事だろうか?


「属性っていうのは、火と風が高いほど使う魔法が動的で攻撃に優れるにゃ。逆に氷と土が高ければ静的、つまり防御に向いてるって事にゃ」


 だったら最初からそう書いた方がいいのでは無かろうか。


「……この数値がどの程度なのか分からないが、その定義だと私のステってなんかあべこべじゃね?」


「アヤメはかなり珍しいタイプにゃね。普通はどっちかに傾くんだけどにゃ」


「……じゃあ、アルファベットはこれ、何段階評価なんだ?」


「基本はA~Eの五段階評価で、Aに近付くほど能力が高いにゃ。それに加えてSっていう飛びぬけて優秀って評価があって、逆に全く適性が無い場合はFであらわされるにゃ」


「これはレベル1としてはどの程度の物なんだ?」


「属性の数値は潜在的な魔力の適性だから変化はしないにゃ。あと、値はCもあれば魔法少女としてはかなり優秀な部類に入るから、アヤメはお世辞抜きでめちゃくちゃ能力が高いにゃ。特にSなんて世界にも数人しかいないから、そこは自信を持っていいにゃ」


 そう言われると、素直にちょっと嬉しい。


「んで、下の奴は具体的な攻撃と防御の魔力の数値にゃ。これはレベルが上がると上昇するにゃ。属性が魔力のコントロールがどの程度上手いかという目安だとすれば、下は実際の魔法の出力にゃ。ちなみに、平均的な魔法少女の初期値が10くらいなので、アヤメは最初からその五倍くらいって事になるにゃ」


 おお……これはなかなかいいんじゃないか?


「下の特性って言うのはその魔力バランスの総評にゃ。他には攻撃型とか防御型とかあるにゃ。さらにその下の役割って言うのは、キミのパーティー内でのポジションの事にゃ」


「……という事は、もしかして私はバフ係とかなのか?」


「まあ、言葉で表すならそれが一番近い表現かにゃ?」


 派手なのは嫌だとは言ったが、それはちょっと地味すぎるなぁ……。


「そんな露骨にしょんぼりしないでにゃ? 一応、役割はサポートってなってるけど、スキルをみればどっちも出来るオールラウンダーってのがはっきり分かるにゃ」


 それは俗に言う、器用貧乏と言う物ではないだろうか。


「じゃあ、そのスキルっているのはどうやって見るんだ?」


「それも説明したいんだけど、残念ながらここで時間切れだにゃ」


 ……はぁあ??


「だからお前さぁ……」


「早とちりしないでにゃ、アヤメはこの後、パーティーメンバーと先輩達で初回研修を受けに行かなきゃならないにゃ。それにはもう、移動を開始しないと間に合わないにゃ」


「……え? 今から??」


「今からにゃ」


 マジで言ってんのかコイツ!?


「待て、今何時だと思ってるんだ? 私、まだ学校の宿題も終わって無いんだけど?」


「キミならそんなの数分で出来るにゃ?」


「ふざけんなよお前!! 明日学校だぞ!? 宿題も終わって無いのに、徹夜で行けって言ってんのか!?」


「だからぁ……その辺もちゃんと対策があるから心配しないでにゃ?」


 後出し過ぎるだろ……伝えるべき順番がおかしくないか??


「てかやっぱり、私が魔法少女になるの前提で話が進んでたんじゃないか!」


「はいはい。じゃあ飛ぶ方法を教えるから、言う通りにするにゃ」


 ああ……クソ、マジでイライラするっ!


「方法は簡単にゃ。頭の中で、宙に浮けって思うだけにゃ」


「あーもうっ! いぃーってなるいぃーって!」


 ……えーと何だっけ?


 浮く?


 ゴンッ!!


 急に飛び上がった私は、思い切り天井に頭を打った。


「感情的になると魔法の出力が狂うから、ちゃんと落ち着いてから使うにゃ?」


「……――すぞ?」

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