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踊り子と奥義③

 バンパイア傀儡師資質のミキナとの戦況は五分と五分である。本体ミキナとユームが戦い、弓使いとテロット、斧使いはボールスが対応している。

 五分と五分と言っても実際は1対3の戦いだ。異次元の攻撃を魅せるミキナにかなり苦戦中。2体の人形を使いつつ、自身も戦って戦況を有利に動かす、脳の構造が分からない。実際のところは、ミキナ自身は攻撃と言う攻撃方法を持っていない。ユームの攻撃を躱しながら、両バンパイアを使ってユームにまで攻撃を仕掛ける攻撃方法だ。言い返せば、両バンパイアの攻撃を手段を奪えば、ミキナは攻撃手段を失う。そうなれば、ユームが彼女を仕留め可能性が上昇する。そこを狙うしかない。

 僕とエージナはボールス、テロットに加勢して、バンパイア、ミキナの両腕を倒す作戦に出た。

 僕がボールス、エージナがテロットと組んで目の前のバンパイアを倒す。

 ただ、目の前のと言っても、ミキナの戦法は相互攻撃、目の前の斧使いに気を取られていると、後ろから弓使いの矢が飛んでくると言った複雑な攻撃を仕掛けて来る。

 だからこそ、2名タッグを組み戦況を有利にする。



 僕はボールスとの交戦中であった斧使いに後ろから攻撃を仕掛けた。しかし、避けられるどころか、逆に回転斬りでこちらが攻撃された。まるで後ろに目がある様だ。もちろん斧使いではなく、ミキナの方だ。ミキナの死角を突いて斧使いに攻撃を仕掛けたつもりだった。でも、僕の動きは見破られていた。動きを読む視覚的な能力があるのだろうか?この戦場全体なら、僕が魔晶石を破壊する前に何か妨害をしてきたはずだろうが、それは無かった。全体ではない。距離なのか?対象なのかは分からないが、今いる範囲は彼女のテリトリーなのだろう。こっちの動きは監視されている。しかし、僕達にもボールスがいる。彼は演算士資質。空間把握ならボールスも負けてはいない。

「ボールス、何かいい作戦はないか。」

「ない。」

 瞬殺で否定された。少しは考えて欲しいと思いつつ作戦を思案しているとボールスが言い直した。

「作戦はないけど、案ならある。」

「案って?」

「あいつの攻撃は単純。回転撃の横と縦の使い分けだ。横方向の時は頭上が足元、縦方向の時は左右に隙が出来る。けど、あの女の操作で乱回転してくるから手に負えない。けど、弱点はある。」

 僕は相手の攻撃を避けながら、ボールスの話しに集中する。

「横回転の時の頭上だ。」

「頭上?」

「傀儡の構造的な仕組みだと思う。如何にスキルでも変わらない。上から糸で操るから、必ず人形は頭が上にくる。特に回転中は。」

「それって縦回転の時はどうなるんだ?」

「知らん。」

「し、知らん?いい加減過ぎないか。」

「当たり前だ!こっちも今戦い始めたばかりだ。情報がそもそも少ない。今回の戦いはある意味賭けに出るしかない。」

 僕は頷き、ボールスの作戦、いや案に乗ることとした。



 ボールスの案と言うのは空中戦だった。空中戦と言っても、空を飛ぶとか、上空で戦うと言った類のものではない。若干浮く。いや傾くと言うのが正解かもしれない。

 相手に空間的な錯覚を与える。

 もちろん、与えるのはミキナの方だ。

 ミキナはこちらをほとんど見ていない、ボールスの予想では彼女は探知系の能力でこっちを認識している。すなわち、人形の周囲数メートルの空間把握能力。実はその能力は案外粗い。生物の動きには敏感で手が出ないらしいが、生き物意外は認識機能に難あり。岩や地面に無意味に斧が刺さる事もしばしばあるらしい。

 ボールスの作戦はその認識能力の弱さを突く事。

 僕達のいる空間を斜めにする。

 そうする事でミキナに錯覚させる。

 では、どうやって斜めにするのか?

 こっちの作戦も単純である。ボールスの空間浮遊のスキルを使って僕の前に石を浮遊させる。僕はその石に乗って戦い、石は地面から少し斜めになるように浮きあげる。

 ただそれだけ……。

 朝の鍛錬の終わった後に遊びで始めた。石の階段浮遊攻撃の応用型である。

 欠点は2つ。ひとつ目にボールスは石の上へと上がれない。上がれないと言うより、石を上げるのに集中力を使うので、安易に他の事が出来ない。そう言う意味では、ボールスの防御力が疎かになるのも欠点である。この作戦中にボールスを集中的に攻撃されれば負ける。

 もうひとつは空間的な錯覚を起こすと言っても、目で見ればバレバレだから成功率は低いだろう。

 でも、やってみるしかない。


 斧使いの縦回転が来た。僕達は斧使いの攻撃が単純な直線状になるように避ける。斧使いの攻撃は縦回転、横、横。と言う単純攻撃となっているらしい。だから、横回転の1回目で誤認識させて、2回目罠に掛けて攻撃を封じ、反撃する。

 その為、この縦回転で出来た線を軸に回転したように錯覚させる。

 横回転が来た。僕は約10度くらい傾けた様に石を配置してその上を動きながら、攻撃を回避する。

 更に2回目の横回転の時に、30度くらいの傾きする。

 この時、僕の方へ来た時は通常通り避けるが、ボールスの方へ行った時に斧と地面が接触する。そうなれば、相手に隙が出来る。そこを突く。


 当初の予定通り、1回目の横回転で向こうの攻撃が若干斜めになっていた。

 うまくいきそう予感がする。

 2回目の横回転が来る前に角度を30度錯覚させる位置へと移動する。

 斧使いがこっちへと来た。予想通り。傾きがさっきより大きい。そして……、次にボールスへ向かった。

 カジャ。

 斧が予想以上に地中へとめり込んだ。

 今しかない。僕は相手の心臓目掛けて攻撃する。


 何か、嫌な予感!

 左奥に異様なマナが交差した。


 その時、僕はある失敗に気づいた。

 もう一体のバンパイアを無視した事だった。あの魔吸石爆弾投下バンパイアが動かずに立ちすくんでいた事に気がついていたが、動かない為、相手にしなかった。

 この感覚、確実に傀儡師ミキナの対象が斧使いから爆弾使へと移ったのだ。

 さっきボールスを加勢する前に倒しておけば良かった。後悔先に立たずだ。今、悔んでも仕方ない。逆に言うと斧使いを倒すのは今しかない。


 斧使いの心臓直前まで剣先を持っていった時、爆弾使いのマナが乱反射した。乱反射としか言い様のない動きを身体の中を飛び回り、突然、……弾けた。


 ……。

 その瞬間、爆風で僕の身体は吹き飛ばされた。

 ……。

 一瞬、意識が飛んだ。次の瞬間倒れた体勢を戻そうとすると、僕の首筋に短刀が置かれていた。

 ミキナだった。

「あなた、やっぱり、危険ね。」

 ユームは?かなり、遠くにいる。爆風で同様に飛ばされた様だ。ボールスも斧使いに押さえられている。

 ライガとミリアンは更に遠くで交戦中、エージナとテロットは見えない。ストナは僕の後方だろう。

 完全に絶体絶命だ。

「みーちゃんは、あなたを殺すなと命令したけど、私は反対。危険すぎる。マナを見るその目、噂に聞くマナの一族エイディの継承者。あの人はあなたの目を欲していたけど、今ここで消すのが正論ね。」

「どう言う意味だ。」

 目?エイディの継承?意味の分からない単語が次々に出てくる。

「教えてもここで死ぬのよ、あなたは。考えるだけ無駄でしょ。さようなら。」

 短剣が喉元にゆっくり突き刺さった。


「乱舞、射!」そう聞こえた。

 突然の掛け声だった。ユームの声だった。

 マナが光る様に動く。新しいスキルを覚えた時に起こる現象だと思う。

 でも、もう遅い気がする。もう少し早く覚えて使っていれば、僕は助かったかもしれない。

 ミキナの短剣を止める事は出来ない。僕は目を閉じて死を悟った。

 ……。

 ……。

 ミキナの動きが止まった。ミキナのいや、辺りのバンパイアのマナが消えた。

 目を開けるとミキナは片手に短剣を持ったまま絶命していた。

 ミキナの身体が徐々に崩れ始めた。短剣もそのまま地面へと落ちていく。斧使いも弓使いも同様に崩れ落ちている。


 乱舞。格闘系資質の最高奥義と呼ばれるスキル。

 現在、そのスキルを使える人が存在しないとまで言われている。魔王大戦の時、連合軍に使い手がいたと報告されているが、その使い手も大戦中に戦死した為、幻のスキルのひとつと称されている。

 格闘系であるのに、瞬殺で周囲数メートルのモンスターを破壊した。何千人と言う大軍とたった一人で戦った。などと言う伝説だけが残るスキル故、魔王大戦の遺物。空想の産物。

 この人はそれを手に入れた。

 

 考えてみると、エージナの火炎鳥もこの類に入る。そして、敵ではあったがミキナの傀儡士資質、そして、炎の兄弟の入れ替わりのスキルもそうである。

 奥義に匹敵する能力だった。ようやく長い戦いが終わった。毎度の事ながら、僕はメンバーに恵まれている。ユームがいなければ、今回は完全に死んでいた。ストナの聖回復もそうだ。エージナ、テロットにも助けられた。ボールスにも。そして、何よりライガの存在は大きい。どんな敵にも彼がいるから怯まずに戦える。本当に良い人達に巡り会えた。


 帰ろう。エチャメールへ。


 その時、唸り声が鳴り響いた。

「くそがー、全員殺す。絶対に。」

 ミリアンだ。そうだ。3魔女は心臓の核を潰しても蘇る。崩壊の一撃を喰らわせないとダメだった。

 ラストの戦いだ。行こう!

 僕はミリアンの声の聞こえた方へと走り出した。

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