踊り子と奥義②
マナ寄せ開眼!
僕は気合を入れる。バンパイアミキナの隙を突いて魔晶石を壊してバリア無くす。その作戦だけに集中する。
ミキナの両手にマナが集中する。操りのスキル使う時には彼女特有のマナが両手へと流れて行く。その両手からマナ人形が具現化され動きだすと、両隣のバンパイアが同じ動きを始める。
右側のバンパイアが矢攻撃を仕掛けて来た。両サイド中央へ誘う様に矢を射てくる。絶妙な矢さばきと言うべきだろうか、避けているうちに自然と中央へと集められる。そこへ左側のバンパイアが再び魔吸石を投げてきた。
同じ展開だ。ユームが小声でつぶやく。
「行くよ。」
ミリアンの周り取り囲むバリアを破壊するには、魔晶石化した術者を魔晶石ごと壊すしかない。
崩壊の一撃を使えば壊せるかもしれない。しかし、向こうにも僕の事は多少把握されている。単純にそちらに行けば警戒される。
相手の気をそらした状態で魔晶石まで行く必要がある。それが今なのである。魔吸石同士のぶつかり合いで爆発が起これば、土埃が出来る。絶好の攻撃チャンスだ。
そのチャンスを無駄にしない。作戦は単純、ユームが僕とストナとエージナを抱きかかえて魔晶石前に運ぶ。馬鹿げているけど、彼女の足と力が一番素早く動ける。ライガに運んでもらうのが一番良いのだが、ライガはただでさえ注目を浴びている。下手に動かない方が良いと言う結論となった。
再び石と矢が接触して大爆発が起こった。いつくかの魔吸石は地面に落下して爆発した。土埃が舞い上がった。チャンスだ!
……。
いや、嫌な感じがする。
「待って!」僕がユームを止める。何がくる。
物凄い回転音が上空をこだまする。
「伏せて!」
さっきの新しいバンパイアが回転斬りか何かを使っているのだろう。でも、それにしては、回転音が異常。この空間全体をとてつもない速さで高速回転をしまくっている。迂闊に飛び出せば、あの斧で身体を切り刻まれる。
せっかくのチャンスなのに動けない。
マナ寄せ開眼でこの攻撃を捉える。攻撃にリズムが無い。意味も無く、この空間を回っているようで何かがおかしい。マナ寄せ開眼でもよく分からない。土埃が回転斬りの影響で晴れてくると、彼の攻撃が目の前で姿を現した。
彼自身は回転斬りのスキルを使っているだけだが、ミキナが回転斬りそのものをスキルで操ってそこら中に投げ回してた。更に奥ではミリアンが踊りを踊っている。重圧が来ないと言う事は、きっと攻撃に何かの効果を出しているのだろう。
予想以上に厄介な敵だ。
ミキナの両手の操り人形が消えた。
それと同時に斧を持ったバンパイアはバリアの中へ入っていく。
「あー、楽しい。みーちゃんのスキルやっぱり最高。ねえ、私の腕も4本にしてよ。そうしてくれたなら、こいつら一瞬で葬るわ。楽しい。最高。」
「誰一人殺してないじゃない。殺してから言いなさい。」
「ふん。これだからみーちゃんは人気がないの。いい?今の技見た?今の技。芸術じゃない?ねえ。」
「技に芸術も何もないのよ。はやくやりなさい。」
「……。つまんない。つまんない。」
そう言いながら、ミキナは両手を前に出す。両サイドのバンパイアが動き出す。
また同じ攻撃か?この攻撃の後の斧の回転が厄介である。土埃が舞っている間にバリアを壊したいのに、その土埃を消してしまう。
「みーちやん、今度はスピード10倍でお願い。」
「私はあなたの主人よ。勝手に命令しないで。」
あの踊りはスピードをあげる踊りの類か。まてよ。土埃を無理やり起こせば良いのでは?
矢や投石攻撃でスピードを上げてやる事は、基本的に打ち込む量を増やす事、こっちに打ち込む量が増えるなら、土に当たれば、その分土埃が舞う。スピードが10倍なら、舞う土埃も10倍だ。次がチャンス。
僕はエージナを通して、テロットに作戦を伝えた。
ミキナの両手にマナが集まり始めた。
いよいよ反撃の開始だ!
いつも通り、右側のバンパイアの矢の応酬が始まった。ミリアンが踊り始めると、矢の嵐が矢の壁になる。
発射と同時に……いや、発射する前にもう一矢が発射する様な感覚で矢の壁が迫ってくる。
大地に突き刺さる。と言うより、大地をえぐるように土埃では無く地面が爆発してこっちに迫って来た。
「テロット」エージナが叫んだ。
エージナの叫びと同時にテロットが「大地の鉄槌」を使い。ハンマーで地面を叩くと、地面が大きく盛り上がり、壁となる。
しかし、矢の壁の前には無力で矢の壁に当たった瞬間。粉々に破壊される。破壊されると更に内側に大地の鉄槌で壁を作る。
その繰り返しが行われ、結果、完全に視界が遮られた。
チャンス到来である。
僕がそう思った瞬間、いや、その一歩先にユームが動き出していた。僕達3人を軽々と持ち上げて一瞬に魔晶石前まで運んでくれた。
小声で「後は頼む」と言うといつの間にか消えていた。
「はい。」
ストナが倒伏剣を取り出した。僕はそれを手に取った。不安が身体全体に浸透する様な感じである。あのマナ崩壊の感覚が蘇る。崩壊の一撃から剣が割れていき、その割れが手、腕へと伝染する。その感覚は今でも消えない。
大きく深呼吸をして、記憶から思いを消す。今は戦う時なんだ。自分自身に言い聞かせる。
そして、マルマルの麻袋から魔吸収石を取り出してエージナに渡した。
エージナは受け取ると「分解」のスキルを使う。魔吸収は割れて中からマナがあふれ出した。
僕はそれを倒伏剣にマナ寄せをする。
倒伏剣の周りをマナが回転し始める。マナの剣と同じである。あとはこの剣を魔晶石に突き刺して崩壊の一撃を決めれば……。
「待って!」
ストナが止めた。
「考えてみると、エージナさんの分解でこの魔晶石壊せられない?」
その通りだ。エージナのスキルで壊せるのなら、僕が危険を冒す必要は無い。微かに見えた抜け道はエージナの一言て直ぐに道を失った。
「無理だな。我々が使う分解は単純に混ざり合ったものを分けるスキルだ。身体に入った毒の成分を分解して抽出する事や。鉱石に入ったマナを分解して取り出す事は出来る。もちろん。だが、魔晶石はマナと人が融合して結晶化した物だ。我々のスキルでは手が出ない。」
……、そうですか。やっぱり僕がやるしかないんですか。
僕はこれ以上どうこう考えるのを諦めて、マナが取り巻く倒伏剣を魔晶石に突き刺した。
魔晶石にヒビが入る。正解だ。これで魔晶石は割れる。しかし、このままでは、僕の手が壊れる。本来なら直ぐに手を離したい。けど、出来ない。マナと繋がっているのか、手は離れない。
ヒビが剣まで伝わって来た。
剣が壊れる様子はない。
や、ヤバい。
その時、ふと、魔王との戦いを思い出した。
「マナ返し」
僕は咄嗟にマナ返しを使った。
押し寄せてくるマナと僕のマナが衝突して、手が離れた。
その瞬間、剣が粉々に砕けた。
そして、それと同時に魔晶石も砕けていった。
……。そして僕もマナの衝撃で意識が吹き飛んだのであった。
……。
「ナギト、大丈夫?」
視界が開け、僕は周りを見回した。
「戦況は?」
「今、ライガ達が戦っている。」
僕は重い身体を持ち上げる様に上半身上げた。近くにストナとエージナがいた。
「お前さんやるな。本当に魔晶石を破壊するなんてな。だが、まだ終わって無いぞ。、あの女性を助けたいんだろ。今しかないぞ。チャンスは。」
僕はマナ寄せ開眼でレナを見た。まだ、ゾンビ化していない。
「ストナ行こう。」
僕達はレナの元へ駆け寄った。
バンパイアとの戦いはライガがミリアンを相手に五分で戦っている。攻撃力はライガに分があるが、スピードはミリアンの方が上。逃げながらを攻撃してくるミリアンをライガが追従して戦う形になっている。ライガなら大丈夫だろう。
ユームとテロット、ボールスがミキナと応戦している。ミキナの戦いセンスはユームと同等。ある意味、それ以上だ。ユームの攻撃を受け流しながら、バンパイア2体を操って戦っている。どう言う理屈かがもう良く分からなくなっている。とにかく戦いセンスの塊だろう。右側に弓使いと左側に斧使いを扱って、防戦一方に見せかけて巧みにユームを両サイドのバンパイアの攻撃範囲に誘い込み、矢や斧で攻撃を仕掛ける。弓使いバンパイアは通常テロットと戦っている。そして、斧バンパイアはボールスが応戦中。この2体を操りながら、ユームと戦い全く引けを取らない。
テロットは互角だけど、ボールスは少し押され気味だ。応戦したいが、今はレナの回復を優先する。
レナは横倒れており、身体全体から闇のマナが溢れ出ていた。
でも、ほんの少しだけど、彼女のマナが残っている。
「エージナ!」
「大丈夫なのか?」僕はエージナの顔を見て頷いた。
エージナはレナの上に手を置いて「分解」と唱えた。
その瞬間、闇のマナが彼女から溢れ出ていく。ゆっくり彼女のマナが強くなり始めた。
エージナが片手を上げた。
直ぐにストナが駆け寄る。僕のマナ寄せで聖回復を使った。
身体から闇のマナがぬけていき、身体に血の気を帯びてきた。良かった。
僕達はレナをストナに預けて、加勢に向かった。
3魔女のミリアンはここで倒す。




