踊り子と奥義①
★「008」ナギト(17)♂ 武器片手剣 魔法剣士資質 Eランク
スキル:(開眼)マナ寄せ、マナ返し 回転マナ返し
〇「009」ライガ(46)♂ 武器槍 槍突騎士資質 王下Bランク
スキル:突撃の槍、亜空間魔法(収納激小)他
〇「011」ストナ(20)♀ 聖騎士資質 武器大剣
スキル:聖流剣 聖回復 亜空間魔法(特大)他
○「016」ユーム(38)♀ 炎勇旅団隊長 Aランク アーチャー資質
雨矢 千本矢 心臓の矢 瞬速矢
○「019」エージナ (80)♂ 鍛冶細工資質
スキル:熱風、火炎球、分解、適合(サーチ系)、火炎鳥
○「020」テロット (80)♂ 鉱山守資質
スキル:大地の鉄槌、稜角の翼、鉄板、
○「021」 ボールス (17) ♂ 演算士資質 Eランク 見習い
スキル:空間把握、亜空間収納、空間浮遊
リミットはあと数分。
コイルズの相方、レナがゾンビになるまでのリミットだ。
全てが見えるわけではないけど……。僕のマナ寄せ開眼で見る事が出来る範囲では、彼女のマナはまだ微かに残っている。でも、その微かなマナが闇のマナに取り込まれようとしている。
彼女を助ける方法は確実とまでは言えないけど、エージナのスキル「分解」だ。毒の解除がまず第一優先。その上で彼女の体力を戻すストナの「聖回復」。その為にはミリアンを倒す。いや、ミリアンと彼女を引き離すしかない。最大の難関がバリアである。このバリアをなんとか解除しないとレナを助けられない。もしゾンビ化すれば、もはや治す手立ては無い。
ミリアンが出現させたバンパイア兄弟、炎の双剣はなんとか倒した。でも、まだミリアンには届かない。その上、お次はバンパイアを3体出現させた。この戦い時間が無い上にきりも無い。今やるべき事はバリアを壊す、ただそれだけだ。
魔晶石化した術者はゾンビ化と同じく元に戻すことは出来ない。しかも動かす事も壊す事も出来ない。ただ、マナが尽きるのを待つしかない、マナが尽きると魔晶石は粉となって消えていく。一般的には破壊も不可と言われている。一般的には……。僕の脳裏に可能性が浮かぶ。
崩壊の一撃なら壊すことが出来るのではないだろうか。可能性は可能性だ。掛けてみる価値はある。
ナンカンがくれた倒伏剣。それが今手元(ストナの亜空間だけど)に2本ある。目の前の魔女ミリアンを倒す為に1本は残しておく必要はあるが、残り1本で魔晶石を破壊する。
ふと、オーウィズの言葉が思い出された。
「……深追いするな。今回、もし3魔女と遭遇した場合は逃げる事を想定してくれ。倒伏剣では無理だ。基本使うな。あの剣で本当にマナ崩壊が防げるとは思えん。良いか、逃げろ。」
オーヴィズの言葉に借りるなら、今が撤退する頃合いかもしれない。
このまま戦ってもレナを助け出す可能性は低い。その上、バリアの中でバンパイアを量産するミリアン。
逆を言うなら、バリアから出てこない。今回は戦わないと言う方法もありだ。
……。
でも、やっぱり出来ない。可能性があるなら、助け出すべきだ。いずれ聖京都に住まう3魔女の長女と戦う事になるだろう。その前にこのミリアンを倒しておく事は、こちらの戦局的にも優位になる。
ここで引くわけには行かない。
問題点はふたつある。
ひとつは倒伏剣でバリアを壊せても、マナ崩壊を受けたら、僕はここで戦線離脱となる。
もうひとつは炎帝御輪の効果範囲だ。炎帝御輪を中心として10メートル内にいないと炎兵鳴輪が効果を発動しない。炎の双剣の様な追撃型の攻撃では僕が中央にいないといけない。
その上で、隙を見て魔晶石に崩壊の一撃を使う必要がある。
要は相手次第となる。今度の敵はどんなやつか。
新たに現れたバンパイアは3体。
中央は長髪の女性バンパイア。見た目では魔法使い系か?
右側は腕が4本に双方で弓を構える異型バンパイア。左側は片方だけの腕が長いバンパイアである。見た目、後方攻撃タイプ3体と言う感じである。
ただ両サイドの異型の2体はマナがおかしい。生きている感じがしない。元々バンパイアが生きているかどうかの議論では無く、マナが腕だけにしか無い。核は何処にあるんだ?
中央のバンパイアは炎の双剣と同じ様なマナをしている。言い換えれば、強敵の可能性が高い。一般的なバンパイアは闇のマナと自身のマナが混合している。バーブルやミリアンも同じ。でも、炎の双剣の2体とこの女性バンパイアは闇のマナに自分自身のマナを隠している。
マナの扱いが絶妙なのだろう。
要注意だ。
女性バンパイアが目を開けた。
辺りを見回している。そして大きく背伸びをした。
「んー!」
再び周りを見回し、僕達を指差し始めた。その後で落ちている炎双剣を拾った。
「えー、もしかして、テンくんとサーベやられちゃった?」
女性バンパイアはミリアンを見た。ミリアンが頷く。
「だ、か、ら。言っているでしょ。私も一緒に呼んでよ。いつも私だけ仲間はずれ!なんで?」
ミリアンは何も答えないでいる。
「私達は5人で最強なのよ。な、の、に。カーとマイミはブサイクと女って理由でバンパイア化にしない。どうなっでるの?」
「うるさい。女は嫌いなの。あなただけは特別にしてあげたの。ちぃ姉様の命令で!それが限界。うるさいのは嫌いよ。さっさとあいつらを殺しなさい。」
ミリアンはそう言って、女バンパイアに命令した。女バンパイアは嫌そうに再びこっちを見た。
「ふーん。あの子が良いな。ねえ、みーちゃん、あの子をバンパイアにして。」
「何度も言うが私をあだなで呼ぶな、主人だお前は私の奴隷。忘れるな!」
女バンパイアはストナを指差していた。
「私にだって後輩を持つ権利をくれてもいいじゃない。ケチ!まあ良いか!」
そう言うと女バンパイアは数歩前に出てきた。そして僕達に一礼をした。
「皆さんはじめまして、ミキナと言います。Sランクの冒険者であり、冒険者チーム赤の魔槍のリーダーを務めていました。資質は傀儡師。私の横にいる二人はカーとマイミ。本当は生きていたんだけど、この後ろの女がバンパイア化を嫌がったから死んじゃった。でもリトダ教授が作ってくれたの。玩具だけど、私は満足。」
そこまで言うとミキナは両手を前に出した。すると両方の手に片手サイズの操り人形が出現した。その操り人形を動かすと左右のバンパイアが同じ様に動き出した。
「さあ、カー、マイミ、皆さんにご挨拶!」
そのミキナは両手を少し上に上げた、操り人形にミキナのマナが注がれる。すると、両隣のバンパイアにも同様にマナがあふれ出した。
この女、かなり強敵だ。
「みんな気を付けて、両サイドのバンパイアから遠距離攻撃が来る。」
僕が叫ぶのとほぼ同時に右側のバンパイアが両手にある弓で連射を始めた。連射と言うより連弾に近くものすごい勢いで矢が両サイドへと飛び出し、避ける僕達を中央へと集めさせた。
そこへ左側側のバンパイアが袋から大量の石を長い右手で抱えてこちらに向けて放り投げた。
単なる石ではない。魔吸石?いや、魔吸石の爆弾だ。
「みんな石に気を付けて!」
僕が声を上げると空中の魔吸収石に矢が当たる。その瞬間に魔吸石は内部から爆発する。その衝撃波が周りの魔吸石を誘爆した。ものすごい爆風の衝撃波を受けて僕は吹き飛ばされた。
土煙で前が見えない。
「ナギト大丈夫?」
隣にストナがいた。
「ストナは?」
「私は大丈夫。ユームさんに助けられた。あれは何なの?」
「多分魔吸石を改造した石だと思う。石の中に核がある。」
「核があると爆発するの?」
「自分でも良く分からない。あの石のマナを見た時にリトダ教授が見せた水のマナ攻撃を思い出した。あの時のマナはマナの核の中にマナの核が大量に入っていたけど、今回は入ってない。でも、マナの核の中にマナが凝縮されている様なマナだった。」
「あれもリトダ教授の遺産かしら。どれだけはた迷惑な物つくるの、あの人は。」
後ろから咳き込んでエージナがやって来た。
「面白い攻撃だ。」
「面白くないわ。」
「あのバリアをなんとかしないと、この先は無いぞ。」
「一応作戦はある。」 僕がそう言うと。
「だめ!」
ストナが即座に否定してきた。
「どうせ魔晶石にあの剣で崩壊の一撃をするつもりでしょう。絶対にだめ。今度手が壊れたら戻らないかもしれないのよ。」
「でも、やるしか無いんだ。」
その時、後ろから誰かが覆いかぶさってきた。ユームだった。彼女は僕とストナふたりに被さる様に間に入って来た。
「良い心がけだ。ストナ仲間を信じろ。そして4英雄が怪しい物を残すと思うか?」
そう言うとユームはストナの頭をおもいっきり撫で回した。
「大丈夫だ!ナギトの骨は私が拾ってやる。」
……、それだめな奴でしょ。ストナも素直に頷くなよ。もう少し止めて欲しかった。
「ただ、タイミングだ。ナギト達が視界から消えれば、あいつら攻撃をナギトに向けてくる可能性がある。そうなると剣が壊される可能性だってあり得る。」
「今みたいに土煙が待っていれば、分からないわ。」
「そのとおり、良いか、良く聞け、もう一度仕掛けさせる。あの爆弾攻撃がきたら、私がお前達3人をあの魔晶石の前に背負って行く。煙が無くなる前に、バリアが無くなれば、ライガとふたりで一気に叩くから、その後で加勢しな。」
そう話していると、土煙が開けてきた。向こうの様子が見えてきた。……。きた?
ミリアンとミキナが言い争っていた。
「いつも、いつも、みーちゃんは爪が甘い。見て!見て!この状況、ここでテンくん達投入したら、私達の勝利でしょ。なんで遠距離攻撃型と支援しかいないの?みーちやんって実はおバカさん?」
「いい加減にしなさい。主人に逆らうならあなたも吊るすわよ。」
「あー、あー怖い怖い。頭の悪い女主人って最低なのよ。いい!みーちやんの眷族化はバンパイア化させても心までは完璧に出来無いの。だから、私みたいに言いたい放題のバンパイアや話の出来ないバカが生まれるの。」
そうと何故かミキナは踊りだし。
「はぁー、私の夢!魔王様にもう一度眷族化してもらって、このバカさんとおさらばする事。」
「無理よ。一度眷族化した者は出来ないわ。」
「やってもらわないと分からないでしょ。それまで、私はおバカみーちやんを主人として慕ってあげるから、もう数体接近型を出してよ。そうすれば次の一撃で、あの子達ともさよならよ。」
ミキナはそう言ってこちらを見回した。
頭は切れそうだ。あまり下手な手を打つとこっちの動きが読まれてしまう。危険な相手である。すると、僕と目が合った。
「あ、あの子か!師匠の生け捕り命令の子。確かに可愛いわね。でも、私はその横の女の子の方が欲しいけど。ごめんね。私の攻撃は精密性に欠けるの。次は全員、粉々にしちゃうかな。」
そう言うと両手を上げ、操り人形を構えた。両脇の2体も動き出す。
「みーちやんまだ?」
ミリアンがマナを集め出した。そして、再び棺桶が1つ出てきた。
「えー1個!ケチ?バカ?どっち。」
「うるさい、私にもマナの限界があるよ。これで我慢しなさい。」
再び棺桶が割れ、バンパイアが現れた。
男性だか、背が低い。更に、背中に身体の2倍くらいの大きな斧を持っていた。
「はー?あり得ない、あり得ない。何でトンなの?弱い奴ここで出す?」
「自分で動かせばいいでしょ。」
「はぁー?これだからバカは嫌!」
作戦がモロバレの声で話している。しかしこれが罠の可能性もある。でも、今最大の任務はバリアを解くことだ。
一瞬、静けさが辺り包んだ。
ほんの一瞬だけ。
ミキナの腕が少し上がると、戦いは始まった。




