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廃村ハイデールと炎の双剣⑤

 魔災害クラーケンとの戦い。

 聖京都史に残る二大魔災害のひとつ。(今は三大に変わったけど、僕が座学で習った時は……。)

 70年以上前に南の漁場に出没したクラーケンの討伐。冒険者100人と水夫計200人以上の巨大船団を組織して、巨大クラーケンに戦いを挑んだ。結果、ほとんどの人は帰らぬ結末となった。

 魔災害と言う言葉が生まれた最初の悲劇である。

 聖京都が誕生して日が浅く、南の漁場とは何処なのか?クラーケン出没の情報の出どころは?クラーケンの戦いへと至る記録およびその後の記録も含めわずかしか無く。200名以上が亡くなったと言う事だけが明確に残っている。

 謎に包まれていた魔災害も3魔女の仕業だった。そもそも、魔王大戦の余波はまだ終わってないと言って良いのだろう。

 自分の目の前にいるミリアンもその余波のひとつだ。


 炎の双剣。兄と弟のマナが変わった様に見えた光景。赤と青のマナを見間違えたとは考えにくい。なぜ見間違えたのか。見間違えではないと考えるとひとつの仮説が生まれる。

 あの時、赤色(兄)のマナだった場合、どうして変わったのか。可能性は2つ。ひとつは二人共が赤と青のマナを持っている。しかし、いくら双子とは言え、そもそもマナの質をお互いに持つ事が可能なのか?

 もしふたつ同時に持っているなら、闇で隠す必要がない。

 そうなると、考えられる可能性はもう一方になる。


 身体の入れ替わり。


 そんなスキルがあるのか知らない。

 でも、それが一番しっくりとくる。


 兄弟の最強冒険者。テンペストとサーべション。巨大剣を使い全体攻撃を相手を翻弄する兄。その攻撃の最中に長剣での精密攻撃でトドメをさす。相手を翻弄させる交差攻撃。攻撃後の火炎の追撃。マナを巧みに使った肉体強化。全てにおいてスペシャルな能力ではあるが、それだけで当時聖京都最強と呼ばれるほどなのかとも思えてしまう。

 でも、これに身体の入れ替わりを巧みに使えば、攻撃の威力は爆大に増す。


 考えれば考えるほど、僕の推理は確信へと変わっていく。


 もし、僕の推理通りなら、この勝負、僕達に分がある。

 僕はストナに作戦を教える。ストナは少し怪訝な表情を見せたが、作戦は了承してくれた。

 後は、もう一度、あの二人のうちの一人をこっちへ誘き寄せられるかだ。

 状況は先程とは全く違っている。3魔女のミリアンが踊りを踊り出したのだ。僕達には巨大なデバフが掛かり、動きが制限され、身体がうまく動かせない。もちろん、この炎帝御輪の効果でミリアンのスキル効果の威力を下げているが、それでも身体に掛かる重圧は脅威となる。この状態であの兄弟とまともに戦えるのはライガとユームだけだ。下手に手を出せば、こっちがダメージを負う。どうしたらいいのだろう。

「ミリアンの動きを止めれば良いのか?我々に任せろ。」

 エージナがそう言うと胸を拳を当てた。

「どうやって?」

「簡単だ。」

 エージナはそう言うと、炎ロッドを取り出した。


 ミリアンが立っているホール中央の舞台全体にバリアが掛けられていて、こちらの攻撃は届かない。バリアは上空から下の床に至るまで球状に覆われている為、入る余地は無い。おまけにこのバリアをかけている張本人は魔晶石化しており、マナが尽きるまでバリアを貼り続ける事になる。隙の無い完全防御の中にいることとなる。

 その中で自由に踊っているミリアンの踊りを止める方法なんてあるのだろうか。

「我が合図をしたら動け。数分だけしか無理だぞ。」そこまで言うと、走ってミリアンの方へ行ってしまった。


「何をする気かしら?」

「分からないけど、合図が来たら、動くしかない。」

「そうね。長期戦はこっちが不利ね。」

 僕達はエージナが後ろ姿を目で追った。


 しばらくすると、エージナが両手を挙げてこちらを見ずに手を振った。

 合図が来た。


 ストナが躊躇なく、動き出した。


 僕もストナを目で追いながら、エージナを見た。

 エージナが炎のロッドを上に掲げた。その後、何かを叫んだ。何を叫んだのか最初は分からなかったが、次第に事態を把握出来る出来事が起こった。スキル奥義「火炎鳥」だ。

 地中から巨大な火の鳥の様な火炎が本人を中心に回転する様に全てを燃やし尽くしていく。

 火竜巻や火嵐と基本的には同じ威力と言われている。しかし、なぜか火炎鳥だけ奥義と言われる。その所以はこのスキルの美しさにある。本物もフェニックスが舞う様に火炎がほとばしる。

 観るものの心を奪う。


 フェニックスが2羽、3羽と分かれていく。

 巨大な鳥だったフェニックスが最終敵には人間くらいの大きさになり、数10羽となり、次にはミリアンのバリア周り何度も周り始めた。


 ミリアンの動きが止まった。


 今しかない。

 ストナが一体のバンパイアに攻撃を仕掛ける。バンパイアがもう一度こっちを向いた。

 ストナの「聖流剣」で相手を翻弄する。バンパイアが何かを仕掛ける瞬間に僕が間に入っていく。

 もう一度、相手の剣と刃を交える。

 剣を交える感じは兄弟どちらかは分からない。でも、必ず向こうが仕掛けて来る。その時が勝負だ。

 攻撃に転じた。マナが動く。青。弟だ。

 そのまま突きを連発してくる。入れ替わる気配はない。サーベーションの攻撃には隙が無い。守りに徹するのが最善策。気をつけなければならないのはただひとつ。突きを完全に避ける事。突きの後の炎の追撃による衝撃波を受ければ、完全に隙を突かれる。

 5連突きを避けた時、身体に重りを感じた。

 ミリアンが踊り始めた。

 ここは引くしか無い。


 僕の目に突然違和感が飛び込んできた。

 違和感以外に言い様が無い表現。

 来る。入れ替わりのスキル。

 ここはやるしかない!


 考えみると絶妙なタイミングだ。ここで入れ替われば、突きが来ると考えていると、巨大剣の一撃を受けてしまう。その緩んだ隙に更に入れ替われば、僕を完全に倒す事ができるだろう。今度は間違えなく首を狙って来るだろう。

 でも、今度こそ先手はもらう。


「マナ返し。」

 僕は入れ替わりのスキルを使ったと思える瞬間に「マナ返し」を使った。空を斬る様に相手向って剣を斬った。

 マナ返しは敵のマナ攻撃をそのまま返すスキル。

 このスキルは反射ではない。

 打ち返しに近い。

 的が大きく、距離が近いなら弾きかえせるが、外す事もある。

 しかも、返せるのはマナ攻撃だけなので、衝撃波は受ける事になる。結構使い勝手の悪いスキルだ。

 だけど、打ち返しだからの用途はある。

 マナの動き変えて、効果を鈍くさせる事も出来るが、使ってみないとどうなるのか分からない。効果の読めないスキルではある。

 

 今回はマナ攻撃ではない。だから、効果が鈍くなる方のスキル用途だ。

 どうなるのかは分からないが、入れ替わりを封じる事は出来なくても、何らかの衝撃を与えて隙を作れれば、こちらに分が出来る。


 スキルを使ったが相手に変化は無い。

 今目の前にいるのが兄なのか、弟なのかは分からない。マナ返しがどの様な効果をしたのかも分からない。

 脳裏で時間だけが流れる。

 ……。

 ……。


 その時、目の前のバンパイアの心臓部分からの槍の先が飛び出してきた。

 そして、バンパイアの心臓の核が崩れた。槍の先を袈裟斬りにしてバンパイアの胴体を切り裂いた。

「ナギト良くやった。」

 ライガが後ろに槍を持って立っていた。

 もう一体もユームが仕留めた様だ。

「何かした?動きが悪くなった。」

「相手のスキルを混乱させただけです。」

 ストナも駆け寄って来た。

「ナギト、衝撃波は無い?」

「大丈夫、今回は無かった。」


 あいつらの中で何が起こったのかは分からないが、隙を作ることには成功した様だ。

 その隙をライガやユームは見逃すこと無く仕留めてくれた。

 

 ミリアンから凄まじいオーラが出てきた。

「うぉーーーー!」

 大声で吠えると両手の剣を下に叩きつけた。

 剣はテンペストとサーベーションが持っていた剣だった。何処から取り出したのだろう?

「お前達は許さない。絶対に許さない。よくも、よくも私の大切なコレクションを壊してくれたな。」

 そう吠えると再び棺桶を3つ亜空間から取り出した。

「ミキナ、お前がなんとかしな。」

 ミリアンがそう言うと中央のバンパイアが目覚めた。

 髪の長い女性のバンパイアだった。

 その両サイドは異型のバンパイアが2体並んでいた。ひとりは腕が4本あり両サイドに弓と矢を持っていた。もうひとりは右手腕だけが2倍くらい長く、大きな袋を持っていた。

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