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七本槍の道化衆2 マルクロードと旅の踊り子  作者: 熊野文助


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廃村ハイデールと炎の双剣③

 廃村ハイデールの中央にあるドーム型の建物は演劇場型建築であった。

 その中央に立っていたのはバンパイア3魔女のひとりミリアン。


「芸が無いわね。ノルディーナの時と全く一緒。バンパイアもお頭は空っぽかしら。」

 ストナが挑発するように大声でミリアンに言い放つ。

「あなた名前は?」

 ミリアンがストナに名前を聞いてきた。

「ストナよ。何?」

「ちぃ姉様の天敵槍使いライガ、主殺しのマナ小僧ナギト、小生意気な悪女ストナ。名前を覚えてあげたわ。あなた達3人の脳みそをえぐり出して誰が一番空っぽなのかを確かめて上げるわよ。」

 そう言って高らかに笑い出した。

「そうね。あなたの無い脳みそにはうらやましいかしら。」

 ストナも負けずに言い放った。

 何、この女同士の前哨戦は?


 ミリアンはストナを睨めつけてから、目をつけて何かを唱え始めた。

「来るぞ。」

 マナ寄せ開眼。

 彼女のどす黒いマナが体内で動いているのが感じる。

 まだ攻撃は仕掛けて来る様子はない。

 気持ち悪いマナが彼女の周りに集まっている。

「どうなの?なんの攻撃?」

 ストナが僕に状況説明を求めるものの、全く分からない。ただ、嫌な予感だけがする。

「攻撃には思えないよ。でも、何か狙っているのは確か。」

「そんなの見れば分かるでしょ。もっと無いの?」

 ストナの口撃に相手をしない事にした。

 ミリアンのマナが強まる。

 そのマナが3つに分かれた。そして、ミリアンの手前で渦巻きながら形を作り出した。竜巻、いや円柱に近いマナの渦巻きが、ゆっくりと回転しながら棺桶の様な物体を吐き出す様に出現させた。

「まさか……!」

 突然、ライガが声を漏らした。僕もライガと同意見だった。

「生き物って亜空間に入れられないのでは?」

「入れないなんてルールは無い。」

 ユームが会話に入って来た。

「入れられるんですか?」

「生き物や死体は無理だ。」

「結局無理って事ですよね。」

「生き物を石化させたり、物体化させれば可能だそうだ。」

「結局無理って事でしょう。」

 ユームが棺桶を見上げた。

「棺桶と一体化させれば、問題無い様だな。ふざけてやがるがな。」

 棺桶と一体化?どんな風に……。そこまで考えてこれ以上悩むのは意味が無いと感じでやめた。


 ミリアンの前に3つの棺桶が並んだ。

 彼女がその棺桶の前へと出てきた。

「自己紹介がまだだったようね。我が名はミリアン。我が主バンパイアロード、3皇姫のひとり。」

「知ってるわよ。いちいち名乗らなくていいから。」

 ストナが再び話を茶化す。バンパイアも感情があるなと思えるくらいむっとした表情を一瞬見せて、再び何もなかったかの様に話出した。

「我が主から直接眷族化された者には主の力をひとつ受け継ぐ事が出来るのよ。お姉様達はそれぞれ、「蠱惑」「飛翔」を受け継いだわ。そして私は「眷族化」今生き残ってる我が主の力を受け継ぐ同族は残り3人。私だけが「眷族化」を使えるのよ。」

「だから、何よ!」

 ミリアンはゆっくりとストナを指差し、次にユーム、エージナ、テロットと指先を向けた。

「ごめんなさいね。女とドワーフに興味はないの。」

 その次にライガに向けた。

「貴方はちぃ姉様に傷を負わせた人間、眷族化なんて絶対にいや!」

「俺も同感だ。」と言うとライガはミリアンに中指を立てた。

 ミリアンは少し笑みを浮かべると、再び指先をコイルズに向ける。

「ごめんなさい。その顔趣味じゃないの。」

 そう言って今度はボールスに向けた。

「あら、貴方、顔に死相が出ているわよ。死を背負う人間なんて初めて見た。不思議。でも、興味無いわ。」

 そう言うと最後に指先を僕へと向けた。

「マナの小僧。ちぃ姉を殺し、主に心臓に剣を突き刺した男。憎くて殺して殺し足らない。でも、綺麗な顔ね。意外と好みだわ。うーん。そうだ。こうしましょう。この闘いが終わった後で、ナギト、貴方を眷族化して差し上げるわ。そして心臓の核を抜いて、東ラーフィン山脈の永久氷河に突き刺し永遠の苦しみを味わせてあげる。どう?」

「ふざけるな!」僕もミリアンをおもいっきり睨んでやった。

「あら、やだ怖い顔。でもね。決して悪い事ばかりでは無いのよ。眷族化は私と1年間添い遂げるのよ。永遠とも思える眠りの中で身体と心もひとつとなり、あの方の力を手に入れられるわよ。残念な事はひとつだけ。私はあの方の能力を授ける事は出来ない事ね。」

 そう言って、僕に向かって片手を広げ、ゆっくり指を折り手招きをした。

「断る。」

 僕は思いっきり言い放った。しかし、彼女は何も気にも留めずに再び話出した。

「あら、でも、貴方に選択権は無いのよ。そして……。」

 再び指をライガに向けた。

「貴方達は憎たらしいけど、嫌いでは無いわよ。私の可愛いナスちゃんとグラードちゃんを一瞬にして葬ったその力。嫌いで……、むしろ好きね。その強さ。楽しみなの、壊してみたくなる。ゆっくりと骨と肉を生きたままバラバラにする。……最高。」

「ユウもお前がバンパイアにしたのか!」

 僕の問にミリアンは暫く黙っていた。

「誰?ユウって?……、私の可愛い奴隷にそんな奴いないわよ。……、……あ、あれか。ゴミか。」

 ゴミ……!僕は一瞬だけど、全身が怒りで煮え立った。

「ナギト、挑発よ。」

 ストナが間髪入れずに僕のてを握ってくれ、少し落ち着きを取り戻した。

「ゴミなんて言ってごめんなさい。屑をつけ忘れたわ。ゴミクズ。あれは本当にゴミ屑。ゴミ屑以下よ。ちぃ姉様と教授があの方の眷族化を真似る装置を作ったけど、全く使えない。核が駄目!核が直ぐ壊れるの。その壊れた部分からマナが漏れ出し、次第にマナを失い、力を失い、意識を色を失う。最後には透明になっちゃうの。ゴミでしょ。だから嫌いなのあの装置も偽眷族も。」

 そこまで言うとミリアンは少し浮き上がった。

「今から私の自慢のコレクションを披露するわ。」

 そう言ってミリアンは3つの箱に手を伸ばそうとした。そこにライガが大声で叫んだ。

「バーブルも大した事ないな。魔王の力を受け継ぐ?「飛翔?」それこそゴミ屑だろ。そもそもお前達は浮く事が出来る。「飛翔」なんかゴミ屑以下だな。」

 ミリアンがライガを睨めつける。

「ちぃ姉様をバカにしないで!浮遊と飛翔は別物よ。私達は浮く飛び跳ねるだけたけど、ちぃ姉様は空を自由に飛べるのよ。相変わらず、腹立たしい。出てきなさい。」

 ミリアンはそう言うと、箱を叩いた。

 箱は角から崩れる様に落ちていった。その中からバンパイアが現れた。

「紹介するわ。」

 ミリアンが左側の一人目に手を伸ばした瞬間に、右側のバンパイアが一気に天井へ飛び上がり消えていった。

 ミリアンは唖然としていた。何があったんだ?何かの攻撃?

「あいつ!またも逃げた!」

 逃げたんだ。このバンパイア、統率が取れてないのか?

 右にいたバンパイアがミリアンに言った。

「ミリアン様、私があのバカを捕らえて参りましょうか。」

「いや、いい。あいつはこの戦いが終わった後に締め上げるから。貴方達は。」

 再びミリアンがこっちを指差す。

「あいつは半殺し。こっちの可愛い子は両手を引きちぎっても良いから生かしておく事。残りは灰にして良いわよ。」

「分かりました。」

 そう言うと2体のバンパイアは剣を引き抜いた。

 赤く大きな炎の大剣が天井まで炎を吹き荒れて現れた。


「まさか、双炎剣か?」

「双炎剣?」

「聖京都で唯一SSランク認定を受けた双子の兄弟だ。史上初のSSSランク認定目前の任務で帰らぬ人となった。聖京都史に詳しい人物なら知っている。」

 僕はストナの方を見たけど、彼女は首を横に振った。彼女も知らなさそうだ。

「死狂の館の戦いの被害者?」

「違う。その前だ。」

「その前?」

「最初の魔災害、クラーケンの戦いだ。」

 クラーケンの戦い。この戦いで5人のSランクの冒険者含め、100名以上の冒険者が亡くなったと言われている。

「双炎剣と呼ばれた最強の兄弟。予想外だな。」

「……、て、言う事は!」

「そうだ、最初の魔災害もコイツラの仕業だったと言う事だ。」

 魔災害。クラーケンの戦い。死狂の館の戦い、アタゴ山の戦い。全ての元凶は3魔女だったなんて。

 ミリアンは両手を上に上げた。すると何処からともなく女性が現れた。その女は宙に横たわったまま動かない。

「レナ!」

 コイルズがその女性に向かってそう叫んだ。

 彼女がレナ、コイルズの相方。

「レナをどうするんだ。」

「どうもしないわよ。敢えて言うなら景品かな?貴方達がこのふたりに勝つ事が出来たなら、返してあげる。」

「ふざけるな!」

「ふざけてないわよ。これ知ってる?最近はやりのヤバい薬。教授の遺産よ。ゾンビパウダー増強剤。ゾンビパウダーをカプセル化して直接口に入れると20分でゾンビ化出来るのよ。欠点は凶暴化して私達ですら手に負えない事かな。それじゃあ、始めるわよ。」

「まて!勝手に、決めるな。」

 コイルズの静止を無視してカプセル状の何かをレナの口に入れた。その瞬間、レナの体内から闇のマナが吹き出し始めた。

「お楽しみの始まりよ。」

 ミリアンは嬉しそうに笑っていた。

 

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