廃村ハイデールと炎の双剣②
ハイデールの街並みは丘の上から見下ろすと扇の形をしている。扇状地鉱山入り口を中心に村が形成されていた。
ハイデールが如何に繁栄した村だったのか、その村の形成から見て取れた。村の中央には大きなドーム状の建物が作られており、左右には広場のような跡がある。それが扇を広げた時に大きな玉が3個ある様に配置されている。設計へのこだわりが溢れている。
その繁栄の村へと一歩一歩近づくにつれて、崩壊が目立つ様になる。木に押し倒された家、壊れた外壁、石畳の通路も盛り上がっいる。廃墟、廃村ハイデールに相応しい街並みがそこにはあった。
ゴスラルを出て、半日程の山道を登り降りしてハイデールに到着した。
ハイデールに一歩足を踏み入れると、嫌な雰囲気が辺りを包んでいる。
「ミリアン……。」
僕はライガを見た。ライガも頷いている。
この雰囲気はバンパイア、3魔女が醸し出す濃度の闇のマナである。この村にミリアンはいる。
場所は探すまでもなく、漂うオーラからあそこにいるのは間違いない。この村の中央に位置する巨大ドーム型建築。そこからあえて僕達を誘う様に存在感を放っている。
「分かりやすい挑発ね。私でも分かるわよ。あのバンパイア。」
「今日はあのバンパイアと戦いに来たのでは無い。まず、コイルズ達を探す。コイルズ達が無事なら戦わないで帰るのも手だ。」
そうなる事を望む。戦わないで済むのなら、それに越したことはない。
「既にこっちの情報も入っていますよ。戦わない選択肢があるますかね?」
「まあ、無理だろうな。奴の真の狙いが分からんが、ナギトや俺の可能性もある。アイツラは性根が腐ってるからな。」
そう言えば3魔女のバーブルもライガを憎んでいた。執念深さは良く知っている。ミリアンの目的が僕達なら、ここに足を踏み入れた時点で戦いは免れない。3魔女を倒すには崩壊の一撃が必須。そうなると、あの怪しい倒伏剣を使うしかない。使いたくないけど……。倒伏剣は予備含めて2本。余裕はない。確実に仕留めなければならない。
その時、金属音が響いてきた。剣がぶつかり合う音だ。
ライガが先に動く。
僕達はそれを追うようにしてハイデールの中へと入って行った。
そこには4体のゾンビを相手にしている剣士がいた。
バンパイアは昼間でも、日の下でも行動出来るが、ゾンビは日の下に出ると消えて行く。ハイデールは西側に西ラーフィン山脈がそびえている為、午後になると村の一部は日の当たらない場所が出てくる。
このゾンビは建物の影を利用して、ひとりの剣士を攻撃していた。バンパイア、3魔女はゾンビパウダーと言う不思議な粉を使う。その粉を掛けられた者は毒に侵された様に徐々に体力を奪われ、やがて死んでいく。そして、ゾンビ化する。ゾンビになった人間の記憶があるかどうかは微妙であるが、ゾンビになってもスキルは使える。
そして、彼等の弱点は光と聖の混合したマナ攻撃である。
その剣士も4体のゾンビに苦戦していた。
僕はメンバー全員の武器に光と聖のマナをマナ寄せした。
「加勢する!」
ライガが先行して剣士のそばに寄った。剣士はライガを見てから一歩前に出た。
「断る、彼等は俺の仲間だ。俺がなんとかする。」
そう言ってその剣士はライガの援助を断った。
ライガはそう言われると、後退りをして戻って来た。
「だそうだ。」
「気持ちは分かります。僕もそうでしたから。」
「私も。」
ゾンビ化した人間、バンパイア化した人間も元に戻す方法はない。分かっていても、目の前に仲間がいれば助けたくなるのが人の心だろう。
アイカにグロス、2名の仲間とゾンビとして戦った。ストナもゾンビ化した弟を斬った。
それがどんなに辛い事か良くわかる。でも、そこから逃げる事は出来ない。
僕は剣を構えた。
「おの剣士には申し訳ないけど、目を覚ましてもらいましょう。」
「了解、隊長。」
全員が武器を構えた。そして一気に4体のゾンビを消滅させた。
その剣士の背中は辛そうだった。
僕は何も言わずに立ち去ろうとした。
「すまない。本当に申し訳なかった。無礼を許して欲しい。」
剣士は深々と僕達に頭を下げた。
「分かっていた。知っていた。ゾンビ化した者を助けることはできないと……。しかし、彼等を斬る勇気がなかった。」
「分かります。僕達の仲間もゾンビ化させられました。その苦悩は良く分かります。」
その剣士は光の翼、3翼のひとりコイルズだった。僕達は彼の傷を癒やすのと同時に、ここまで来た経緯を話た。彼自身まだナスやカプサイシンの死を知らなかった。
「まさか、カプサイシンとナスが……。そうか、……。」
「バンパイア達は3聖女のレナさんを狙っている可能性があります。何処にいますか?」
「分からない。」
「バンパイア達に……。」
「違う。彼女は無事だ。別の仲間といる。」
「別の仲間?」
ライガがコイルズに歩み寄る。
「キャロリーではないよな。」
その一言にコイルズの目が開いた。
ビンゴだ。
ライガもコイルズに一言言い放った。
「その女、バンパイアの仲間だ。」
「え、……。まさか……。……。そう言う事か。」
コイルズは何か思い当たる節がある様だった。
「やはり、何かあるのか?」
「いや、あの女……。俺達は2名もしくは4名でチームを組む。単独行動になる事を避けるためだ。しかし、ガーナ組は6名いた。応援だと思っていたが、応援の2名は新人だ。本部が新人だけで応援に出すだろか?」
「新人って言うのが……。」
「そう、キャロリーとプリムと言う2名だ。昨年入隊したばかりで経験も少ない。」
「他の4人は?」
「ガーナ組は槍使いのガーナに風タイプ魔法使い、弓使い2名からなる中長距離を得意とする攻撃タイプの隊だ。でも、あいつらは全員がCランク以下だから、通常新人教育は行わない。今思うと矛盾がある。」
「彼等はどこへ行った。」
「この奥だ。この奥にあるドームでは冒険者が数名ケガをして動けない上に、モンスターに囲まれていると情報を受けてそこに向かっていた。その時、中発隊のガーナ達と合流した。そして途中に先発隊仲間がゾンビ化しており、俺だけがここに残った。」
「やっぱり、あのドームか。待ち伏せているな。」
「待って。」
ストナが突然叫んだ。
「ガーナさん達ってあの人達?」
ストナの指差す先に4体のゾンビがこっちを見ていた。
「槍、弓、弓、ロッド。間違いないな。」
「気をつけて、ガーナ組の連携力は光の翼でも上位だ。」
マナ寄せ開眼。
4体の闇がかっているマナがいる。アイカ達とマナの質が違う気してならない。ゾンビがパワーアップしているのか?心臓に核はない。バンパイア達とは異なるが、身体全体から驚愕な量のマナが排出されている。
「気をつけて、今までのゾンビより異常です。」
「そんなの見れば分かる。来るぞ、構えろ!」
ストナが近寄って来て……。
「ナギトの目かあのバカの感覚でなきゃ、分からないわよ。」
そう言いながら、剣を抜いた。
「ライガさんの感覚は異常ですから、来ます。まずは、槍の男に気をつけて。」
槍の男が槍を構えた。この構え、ライガさんの多段突撃だ。でも、何か嫌な感覚が全身を襲う。なんだろう。分からない。すごく嫌なマナだ。危険だ。絶対にここが危険だ。
「みんな後ろに下がって!何か来る。」
槍の男が「百段突撃」を使う、次の瞬間後ろの女が暴風を使って、突撃のマナを暴風に乗せてこっちに放った。更に左右の男女が連射と撃波をその暴風に叩き込んだ。
「むちゃくちゃだ。」
槍と矢のマナの渦巻く暴風がこっちに向かってくる。
「大地の鉄槌」
テロットが大地のハンマーでスキルを使い、目の前に土の壁を盛り上げた。
暴風のマナとの衝撃で土の壁は一瞬で粉々に崩れ去った。
「なかなか面白い技だな。」
「エージナさん、悠長に構えている場合ではないですよ。また来ます。」
ゾンビ達は再び、同一攻撃を仕掛けてきた。
「テロット防げ。」 「おう。」
再び大地の鉄槌で相手の攻撃を防げぐ。
「所詮、ゾンビだな。芸がない。最高の攻撃の繰り返しに過ぎない。お主達、我に着いて来い。」
エージナは僕とストナ、そしてボールスを指名すると右側に向かって走り出した。僕達は遅れない様にエージナの跡を追う。
エージナの足が止まる。
「こっちに注目が集まったな。やるぞ。」
そう言うと、エージナは炎のロッド(偽)を構えた。
「熱風」
このスキルは熱風を飛ばすスキルだ。そのスキルに光と聖のマナをマナ寄せしたのだ。
ゴン太が熱波に合わせて使った技と同じである。熱風は熱波に比べて攻撃力は落ちる。落ちると言うより、使い方が異なる。熱波は完全に攻撃スキル。ドラゴン属が得意とする攻撃。上位火炎系魔法使いでないとひらめかない。ひらめけない?のかもしれない。熱風は火力を上げれば攻撃も出来るが、火力を下げれば、洗濯ものを乾かせられる。攻撃から生活まで幅広く使える。
「暴風」
向こうが暴風で応戦してくる。そこに狩人が雨矢を使ってきた。風の影響を受けない攻撃を仕掛けてきた。
上空からかなりの数の矢の雨が降り注ぐ。僕とストナな石を大量に手に持って上空に投げ上げた。
「空中浮遊」
僕達の投げた石がボールスのスキルで空中に止まる。
その石と矢じりがぶつかり合い、雨矢の威力が落ちる。残って落ちてくる残矢を僕とストナとボールスで処理をした。
しかし、まだ、エージナの熱風とゾンビの暴風の戦いは終わってない。均衡状態の中、マナの長期戦となりそうである。
その時、槍使いが動いた。暴風と熱風の中央を突破して直接エージナに攻撃を仕掛けるつもりだ。
僕とストナがエージナの援護に入る。
しかし、向こうのスピードが速い。瞬足系のスキルを使って来た。予想通りの動きだが、瞬足は予想外だった。こっちが後手に回される。
槍使いがエージナを射的に捉えた。
次の瞬間、ユームの強烈な一撃がゾンビ顔面に入る。更に「心臓の矢」打撃バージョンの一撃でゾンビを完全に消し去った。
「30点。作戦は悪くない。けど、あくまで援軍の来ない事が前提だ。」
ユームはそうエージナに言い放った。
「ふん、援軍なんぞ来んぞ。」
ふたりがいがみ合っている間にライガが残り30体を倒していた。そして、ライガがドームを見上げた。
「行くぞ、新しい館へ」
そう言って進んでいった。




