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ドワーフの村エチャメール④

 ナンカンの工房に全員が集まっていた。


 エージナは少し大きな宝箱を持っており、僕達の座っている真ん中のにその大きな宝箱を置いた。

「炎兵鳴輪って知っているか?」

 全員がなにそれ?と言う表情だった。

「炎兵鳴輪って何?」

 エージナは僕の腕を指差した。

「炎帝御輪には名工サーゴとカルメが2つのアイテムを合わせた。ひとつが有名な炎粉飾剣。これは炎帝御輪のマナを循環させてマナの消費を抑える仕組みだ。そしてもうひとつ。」

 そう言ってから、エージナは宝箱を開けた。


 そこには6個の腕輪が入っていた。

「これが炎兵鳴輪だ。炎帝御輪の効果をこの6個を持つ者が共有出来るすご物だ。」

「え?火のマナの攻撃を無効化出来るの?」

「そうだ。」

「ただ……。」

「ただ……?」

「炎帝御輪から10メートル以内にいる必要がある。」

 ……

 ……

「……。それだけ?」

「それだけ。」

 ストナが食いつく。

「すごくないですか?炎帝御輪の10メートル範囲内にいれば、炎帝御輪と同じ効果って。」

「そうだ、但し6個しかない。炎帝御輪含めて7名しか使えない。炎帝御輪や炎兵鳴輪の作り方は現代に残されていない。おぬしと一緒に取ってきたツタの傀儡の核と柔芯鋼がベースになっているのは分かっているが、それ以外は知られていない。その為、増やす事は出来ない。魔王大戦で失われた1個はそのままだ。」

「魔王大戦の1個?」

「元々この炎兵鳴輪は魔王大戦の後半にカルメがサーゴに追加で作らせた物だ。最終戦の時、8勇士が持って行った。大地の英雄パウロール、従者カルメ。聖の英雄ウリエル、実弟ローゼル。火炎の英雄マリーナ、弟子リグナ。マナの英雄エイディ、盟友レフト。その炎帝御輪が使えたのはエイディとリグナのみ。最終戦にエイディは炎帝御輪をリグナに譲り、エイディ自身は炎兵鳴輪を持って戦いに向かった。そして帰らなかった。現在、炎帝御輪と炎兵鳴輪6個だけが残っている。」

「炎兵鳴輪なんて聞いた事ないです。」

「一般的には知名度は低いだろう。炎帝御輪や炎粉飾剣の様に大戦後も残された物ではない。この炎兵鳴輪は大戦後にカルメ自身の手で村に戻したからな。ほとんどの人がその存在を知らない。それ以上に魔王大戦で活躍した名工作でも、破損、紛失で名前が残っていない物は多々にあるわ。お主が探しているマナの剣の真の名前を知っているか?」

「真の名前?」

 エージナはナンカンからカルメの書を受け取り、とあるページを開いた。

「月影満闇忍寄其光不滅刀。」

 長いわ!

「アホでしょ。その名前付けた人。誰がそれ覚えるの?」

「アホは我師に失礼じゃぞ。だが命名者は書いてないな。ただ、エイディは受け取って即座にマナの剣に改名したと書いてある。」

 さすがエイディ。グッジョブ!

「冗談はさて置き。」

 そこまで言うと、エージナは炎兵鳴輪を2個取ってひとつをテロットに渡して腕に着けた。

「残り4名を選出してくれ。お前達の話では、その3魔女は厄介な踊りを使うだろう。戦うならこれは必須となる。」

 ライガが2つ取ってひとつをストナに渡した。ふたりはそれを着ける。

 ユームが残り2個を取り、ハズキに渡そうとした時、ボールスが声を出した。

「自分に行かせて欲しい。力不足はわかってる。でも、ナギトと共に戦いたい。」

 その一言にハズキがキレた。

「あんた、自分の立場分かっている?見習い、見習いがどんだけ足を引っ張るか……。」

 そのハズキをユームが止める。何も言わずにライガを見た。ライガがボールスに言った。

「お前の思いは理解した。しかし、相手は3魔女だ。更に旅券団の後ろ盾もある。ノルディーナでの戦いや魔境での戦いでも、誰がいつ死んでもおかしくなかった。はっきり言っておく、俺はお前を守る義理は無い。それでも来るか?」

 ライガの一言に沈黙が続く。

「行きます。行かせて下さい。」

 ボールスの目に強い決意のある事が見て取れた。ライガはどう答えるのだろう。僕はライガの動向に目を向けた。ライガは暫く黙っていたが、ゆっくりと答えた。

「分かった。しかし、今回は七本槍の道化衆として行動してもらう。それには七本槍のリーダーに許可をもらう必要がある。」

 七本槍のリーダーって僕じゃん。

「どうするの?リーダー?」

 ストナが嬉しそうに話してくる。絶対にこの人は僕の決断を楽しんでいる。

「きょ、許可します。」

 ユームが僕の背中を力強く押した。

「よし、そうと決まれば今夜は飲むぞー!」

 出立の宴会は夜遅くまで続いた。



 僕は少し夜風に当たっていた。

「ナギト、少し話がある。」

 僕の隣にオーウィズ王子が座った。

「何ですか?」

「契約を結んで欲しい。」

「契約?」

「盟友の契だ。お互いに助けが必要な時はもう片方が助ける契約だ。」

 突拍子もない話しに冗談かと思えた。

「そんな契約結ばなくても、七本槍の道化衆は貴方の部下の様なものですよ。」

「そう言う主従関係ではない、友人として約束だ。」

「友人なら要りますか?それ。」

 オーウィズは真顔で僕を見た。

「この話はストナ姉にはするな。いいか?」

 あまりの真剣さに何か怖さも伺えた。

「ナギトは次期国王候補が何人いるか知っているか?」

 あまり国内の事情には興味はないのでそんな事知る由もない。僕は首を横に振った。

 オーウィズは人差し指と中指を立てた。

「2名。第一王子の我が父と第四王子の叔父の2名だ。王になる為の手続きを知っているか?知るわけないか。」

 知らないけど、なんかちょっと癪に障る言い方だと思う。

「現在王からの指名と直下15家の過半数の支持、並びに王位継承権を持つ者の過半数の同意だ。一応、自分やストナ姉も含まれる。」

「結構面倒くさい。」

「ナギト、ミルロワールの王女って知っているか?」

「み、みるろ?」

「ミルロワールだ。今なき帝国北方の国。」

「北方の国って。」

「そう、マナの一族の国だ。帝国は自分の支配下に置いた国にもその王家を名乗る権利を与えている。名目だけだが。マナ一族の4国で唯一残った王家、それがミルロワールだ。」

「僕はマナの一族自体知らなかったから、そんな事知らないよ。」

「だろうな。叔父、第四王子は数年前にこのミルロワールの王女を妻に娶った。そこから国内に支持者を増やし始めた。」

「そうか、オーウィズのお父さんのライバルか。」

 オーウィズは下を向いて、息を飲んだ様に見えた。それから、もう一度僕の方を見た。

「私は……、いや、私達は……。そのミルロワールの王女こそ、3魔女のひとり、長女リリラだと考えている。」

「え?」

「いいか、誰にも言うなよ。あのモンスターは王家の中枢、首根っこに短刀を当てて人質を取っている様なものだ。こちらも迂闊に動けない。」

「でも?本当に?ミルロワールってバンパイア……。え?」

 僕の脳裏にバーブルの記憶が蘇る。3魔女の次女バーブル。彼女はエイディの母親だった。マナの一族ってバンパイア?

 そんな訳があるはずもない。

「ミルロワールの王女は嫁いで来た時にリリラだったのか?途中で入れ替わったのかは分からない。ただ、城の一角を王子の部屋として、そこから滅多に顔を出さない。」

「でも、王宮にバンパイアがいれば、それなりにマナを読める人がいれば気づくと思うけど。バーブルやミリアンのマナの異常性はマナ寄せ開眼を使わなくても漂う空気で分かるから。」

「そう思うだろ。だから、この話は一時期禁句になっていた。気のせいだとして。でも、バンパイアの仲間にグリーテル・リトダがいた事から話が変わりだした。あの男ならマナを外に出さない装置くらい簡単に作り出せる。」

「どうすれば……。」

「近々、必ず聖京都は大きな変化に突入する。今、この事を危惧している何人かで最低限対処する手はずは整えている。だが、向こうがバンパイアとして戦いを挑んでくるなら問題無いが、王位継承の戦いで叔父を使って来る可能性が高い。そうなれば……、間違いなく内戦だ。国力の衰退だけは避けなければならない。」

 オーウィズは懐から2枚のコインを出して、僕に見せて来た。

「これは?」

「好きな方を取れ。」

 僕は右側のコインを手に取った。

 ……

 そのコインはオーウィズともう1人の女性の肖像の入っていた。偽造コイン?

「ジジイが10歳の誕生日に特注させたコインだ。くだらないだろ。このくだらないコインは私と姉が持っているだけ、世界で4枚しかないコインだ。お前に1枚やる。」

「いや、そんな大切なもの。もらえない。」

「タダではない、報酬の先行払い。近いうちに魔女と戦いを仕掛ける。その時、ナギトの力を貸して欲しい。」

「もちろん。」

「私達は必ず、技法たたらは探しておく。マナの剣は必ず復活させる。だから、それまでは深追いするな。今回、もし3魔女と遭遇した場合は逃げる事を想定してくれ。倒伏剣では無理だ。基本使うな。あの剣で本当にマナ崩壊が防げるとは思えん。良いか、逃げろ。」


 その後でストナがやってきたのでこの話は打ち切られた。


 僕はナンカンにもらった倒伏剣をもう一度と手に取った。オーウィズの言う通り、手に持った感覚はマナの剣に似ている。しかし、全くの別物だ。マナ崩壊しないと言う保証はない。3魔女との戦い以外使わないので、ストナの亜空間に入れてもらう事にした。


 翌日、僕達、すなわちストナとライガ、そして炎勇旅団からはユームとボールス、最後にこの村のエージナとテロットの7名でイーダーオーツに向けて出発した。

 僕が炎帝御輪を着けて、残り6名が炎兵鳴輪を着けての初めての冒険であった。

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