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ドワーフの村エチャメール②

 ドワーフ達は一斉に僕へと向かって膝をかがめた。

「ナギト様、申し訳ありません。」

 村長含め30人位のドワーフ達が僕に詫びを入れている。

「ナギト王の登場だな。」とオーウィズとストナがこっちに聞こえる様な声をチャチャを入れてくる。

 その後ろでボールスがニヤニヤしてこっちを見ている。更にはその遠方でテロット達ドワーフとライガや炎勇旅団のメンバーが宴会を始めている。

 何がどうなっているのか?

 僕達がエチャメールに到着した所から話を戻したいと思う。



 境界なき魔境から北上して僕達はドワーフの村エチャメールに向っていた。オアシスの街ノルデーナを出から既に1週間近く経っていた。

 戦いと移動で身体はかなりボロボロだった。

「お風呂に入りたい。」

 ストナがボソッと呟く。

「温泉でもあればいいけど。」

「山奥だから意外とあるかもよ。」

「ボルケーノならそうでしょうけど……。」

 ストナの顔にも疲れがうかがえる。さすがに聖騎隊隊長クラスでもへこたれる疲れた旅だ。

 ライガやユームもどことなく疲れ感がある。ハズキは僕達と同じで疲れ切っている。

「もう、動けない。」

「珍しい、ストナがそんな事を言うなんて。」

「今回は言わせて、今回だけは……。魔王城以上に疲れた感がない?分かってる。このくらいでめげるな。でも、今日だけは……言わせて。」

 魔境出口の休憩から丸1日歩き続けていた。山道を上がったり下ったりと終わりの見えない歩行は気持ちが萎えてくる。その萎えが余計に力を奪う。この丘を越えれば、そう思って進むが目の前には終わりなき道であった。

 エージナとテロットが道案内してくれたから無事に魔境を抜ける事が出来たと言っても過言ではない。


 日も暮れ暗闇が増し始めた頃、目の前に村明かりが見え始めた。

 着いた。

 その一言に尽きる。

 村の入り口に人影が見える。

 夕刻の時、テロットが先に行って宿の準備をしてくると言って飛び出して行った。テロット達が出迎えに来てくれた様だ。

 人影が少しずつ、形がはっきりとしてきた。

 それと同時に疑問が生まれた。村の入り口に映し出される影の中にドワーフ以外であきらかに人間の影がいるのである。しかも、どこかで……。

 ストナの歩きが一気に早くなる。

 最終的には駆け足になる。僕はもう走れないのに。

 その人影とストナの人影が重なり合う。

 ……

 ……

 ふたり?いや、ストナの一方的な声が聞こえる。

「ふざけないでよ。何がおかえり?こっちはあなたを心配して安全行動取らせたのよ。」

 やはり。

 ストナがオーウィズを羽交い締めをしている。

「待って、ストナ姉、俺の言い分も聞いてくれ。」

「何が言い分よ。ふざけないでよ。どうせ、あなたがエチャメールに行きた言って、無理やり火勇旅団を誘導したんでしょ。わかってるわよ。」

「ストナ姉、ギブ、ギブアップ…………。」

「……。落ちた。」

 オーウィズがストナの羽交い締めで意識を失った様だ。世界広しと言え、オーウィズにここまで出来るのはストナ位だろう。

「やり過ぎでしょ。」

 僕の一言にライガがストナの肩を持った。

「こいつには少し位いい薬だ。やり過ぎはこいつの方だ。さすがにここまで自由に行動されては警護なんて出来ない。」

 ライガはそう言って、オーウィズを担いで街の中に入って行った。


 僕達には来客の際に使用される小屋が用意された。そこには炎勇旅団のメンバーが既に待っていた。村長には翌日会うことになり、今夜は疲れを癒やす為にまずは休息を取ることになった。

 ただ、先に着いていた炎勇旅団のメンバー全員には漏れなくユームの説教が待っていた事は言うまでもない。


 長かった。魔境への旅は終わりを告げた。



 日が昇ると僕とボールスは久しぶりの鍛錬を始めた。

「ナギト、強くなったな。」

「??、僕は何もしてないぞ。」

 僕はそう言いながら、足を上げる。

「見た目のぎこちなさが無くなった。体幹がしっかりしてきたな。」

「体幹って、何もしてないから。」

「意識して歩いていただろ。魔境への行き帰り。」

 僕は少し考えた。いや、行きは確かにユーム師匠の言いつけ通り体幹移動を意識していたけど、帰りは疲れ過ぎて何も考えられなかった。

 ユームが顔を出した。

「お、やっているな。感心。感心。どうだ少し組手をやってみるか?」

「組手?」

「仮想戦闘訓練だ。相手を倒すのではなく、相手の体幹を崩した方が勝ちだ。ナギト、まず私とやろう。」

 いきなり、ユーム師匠と組手をする事になった。ただ、体幹を崩したら負けなら、体幹を崩さなければ負けない。ユーム師匠にも……。


 甘かった。


 試合開始と同時にユームの正拳突きがみぞおちに食い込む。体幹を崩さない事だけに意識し過ぎて、攻撃されれば体幹が崩れるどころではない事に気付いた。

「もう、少しやろうか。」


 その後、ユームと3回組手をしたが守り一辺倒で手がないままで体幹を崩されて負けてしまった。

「この組手をふたりでやりな。それぞれの弱点が見えてくる。」

 そこまで言うとユームは行ってしまった。僕達は暫く慣れない組手で時間を過ごした。



 エチャメールは村長制度を取っている。ドワーフ村の中には長を置かない村もあるそうだが、ここは昔から村長制度が守られている。村長の権限と義務の中に「技法たたら」の書を守ると言うものがあり、技法たたらは大事に守られている。本日は村長がお昼に歓迎の宴会を催してくれると言うので、僕達は昼前に村広場へと向かう事になった。


「ナギト殿に村長が直接会って話がしたいと言っておる。それ以外はテロットが会食の場に案内する。」

 エージナの案内で僕とストナ、オーウィズは村長と話をする為村長の家に向かう事となり、テロットがライガと炎勇旅団を歓迎パーティーの場へ連れていく事になった。と言ってもパーティー会場と村長の家は目と鼻の先らしいが。

 テロット達が出てから、ストナの支度が終わるのを待って出発する事になったが、ボールスは準備が遅れた為、僕達と一緒に行く事となった。

 


 そして……。

 今、村長一同が僕に向って膝をかがめているのであった。

「ちょっと、待って下さい。僕は8勇士のエイディと直接関係がある訳ではありません。」

「いえ、本来私達がきちんと保管すべきものでした。本当に申し訳ございません。」

 そう言うと、再び全員が頭を下げた。


 要するに、無くしたと言う事である。

 マナの剣を復活させる唯一の方法、僕の持つ「技法玉鋼」とこの村が所有する「技法たたら」、このふたつが揃う時封印は解け、再びマナの剣は復活する……。はずだった。

 これが運命なのだろうか。

 僕の何も言えずにただ立ち尽くしていた。

「すみません、技法たたらは盗まれたのですか?」

 オーウィズが話の方向性を変えた。その言葉に、村長は更にばつが悪そうな顔をした。

「そ、それが……。……でして。」

 何を言っているのか聞こえない。

「すみませんもう一度お願いします。」

「……でして。……でして。」

 全く聞こえない。比較的近くで聞いていたオーウィズが頷いている。分かったの?今の話?

「分かりました。」

 そう言ってから、オーウィズはこっちに近寄ってきた。

「分かったの?今ので?」

「要するに分からないそうだ。盗まれたのか?紛失したのか?」

「……。」

「ま、今は食事にするか。」

 そう言って、オーウィズは僕とストナの手を取ってパーティー会場へと歩き出した。



 村長の話を要約すると、「技法たたら」は8勇士であるカルメが魔王大戦へ行く前に先々代の村長へ預けた物。

 カルメは自分が戻って来なくても、村長の蔵で代々守って欲しいと技法たたらを託した。

 その時、技法たたらは封印の箱に入れ、封印の鍵を村長が守るという事がこの村の掟となった。

 魔王大戦を終え、カルメは帰郷したが、その保管の任を村長に託したままだったと言う。

 先代の村長の時、就任式に鍵を受け取ると、村人全員に村の宝である「技法たたら」の書を見せた。まだ存命だったカルメも一緒に。

 エチャメール村長の任期は50年。

 20年前、現村長にバトンが渡された。その時、本来なら鍵も一緒に受け取るべきだったが、受け取っていなかった。誰もが村にはカルメが残した「技法たたら」がある事を認識していたが、その鍵については忘れていた。

 そして、この村にオーウィズと炎勇旅団が訪れて、「技法たたら」の書を確認しようとした時、鍵がない事に気がついた。

 紛失ではなく、受け取っていない。村長の屋敷、先代の家も探したが、鍵は発見されなかった。

 恐る恐る封印の箱に手を伸ばすと、封印の箱には封印されておらず、「技法たたら」もなくなっていた。

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