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蜃気楼の街 モガナート②

 オアシスの街ノルデーナは活気に満ちていた。

「凄い人、炎英離都に引けを取らないわね。」

 ストナも少しテンションが高い。旅の疲れが吹き飛んだかの様に露店を物色し始めた。

 ユームとオーウィズが僕に近寄ってきた。

「今から宿を取る。夜に出発するから、昨日の様に夜更かし厳禁だ。」

 オーウィズが全員を見て言い聞かせた。(ストナとフミヅキは既に居なかったけど。)

 ただ、昨夜マナ研究会?で一番、はしゃいでいたのはあんただ。とは誰も言わなかった。ストナも居なかったし。


 夜に砂漠を縦断する。

 それまでの間、暫く休息と買い物をする事になった。

「ナギト、これどう?」

 ストナは鉱石(多分宝石では無いと思われる)が散りばめてあるネックレスを首にかけて僕に見せてきた。

「良いと思うよ。」

「じゃ、買って。」

「え?」

「せっかくだからプレゼントして。」

「え……。」

 僕は財布を取り出したが……。そのネックレスの値段。高!

「お、お金が無い……。」

 僕は値引き交渉を試みたが、全く取り合ってもらえなかった。ただ……。

「お前さん達はいつまでいるんだい?」

「明日には立ちますけど、1週間後にはまた立ち寄る予定です。」

「そうか、来週からここで祭りがある。今年は雑技団も来るぞ。その時までにそのネックレスが売れてなければ、その値段で売ってやろう。」

 僕はストナを見た。

「ま、仕方ない。それで手を打つわ。もし、その前に私が死んだら、お墓に供えてね。」

 死んだらって。

「それなら、わしはこの鉱石が欲しいのお。」

「俺はこれかな。」

 マルマルとライガが露店に乗り込んできた。

「あなた方は自分で買って下さい。」


 僕が露店で話をしていると、後ろから声がした。

「七本槍の道化衆、ナギトさんはあなたですか?」

 突然の声に僕は振り返った。そこには冒険者風の男女が4人立っていた。

「そうですけど……。」

「私達は光の翼と言う冒険団の者です。」

 光の翼?久しぶりに聞く名だった。僕が七本槍の道化衆として最初の冒険。あの迷いの森で話をしたナス、ナディが所属している冒険者旅団である。

「ナスさんが所属してる冒険者チームですよね。」

「そのナスの事で話があるんだ。」

 ……?話?


 僕達は光の翼と場所を変えて話す事になった。

「ナスとナディの居場所を探している。」

 カプサインと名乗った剣士はそう僕達に告げた。

 

 光の翼は北のクラスタルに本拠地を置く、大陸全体で活躍している冒険者旅団である。数百名近くいると言われている。その中でもAランクが10名以上らしい。

 通常はそのAランクを中心に数名パーティーで組み任務をこなす。

 ナスとナディが行方不明になったのは1年以上前、迷いの森の全貌調査の最中に連絡が取れなくなったと言うのだ。

 最近になって「アタゴ山の戦い」の資料が一般公開され、その中に僕達「七本槍の道化衆」の名前があったのだ。迷いの森で死狂の館を発見した日と、ナス達との連絡の途絶えた日が近い事を知り、僕達を探していたと言う事であった。

「その時って、まだナギトしか居ない時でしょ。どうなの?」

 ストナが話を聞いて僕に質問してきた。

「僕が死狂の館に入り込む2日前の夜に2人には会った。でも、次の日には帰ると言っていたから、その後は会ってないかな。」

「その時、何か言ってましたか?」

「うーん?確か翌日に迷いの森を散策して帰ると言っていたと思う。」

「それだと、2人も死狂の館でバンパイアにやられた?」

「多分違うかな。死狂の館は2人と別れた日の夕方に僕達が封印を解いた事で現れたから、あの2人は入って無いと思うけど。ただ、あの後入って行った聖騎隊が全滅しているから、封印の外に何も無いとは言い切れないけど。」

 僕は記憶に残っている限りあの夜の事を話した。まさか、あの日以来行方不明になっているとは思ってもいなかった。光の翼も最近になってようやく捜査が出来る様になったらしい。死狂の館の事件以来一般公開が禁止されていたと言うのだ。先月一ヶ月間、迷いの森の捜索を行ったが何も出てこなかったと。もし、モンスターに殺されていたなら、あの2人なら何かしらの痕跡を敢えて残すだろうが、それすら残っていなかったそうだ。

「すみません、お役に立てなくて。」

「いや、ありがとう。私達はもう少しここに留まるから、何か思い出したなら、帰りにでも声をかけてくれ。」

「まだここで何かするのですか?」

「来週の祭りでB級マルクが売りに出されるんだ。それを狙って帰ろうと思う。」

「B級?」

「手が出ないのよ。一般人には、高すぎて。」

「ストナは、持ってるの?」

「持っている訳ないでしょ。あんなの金持ちだけよ。」

「最高級のマルクは城が建つ値段よ。」

「げ、B級は?」

「家くらいかな。」

「い、家!」

 誰がこんな露店で家を買うんだ?



 暗闇砂漠をゆっくり進んで行く。

「方向を間違えなければ、明け方には着く。しっかり歩け。」

 僕とストナはボールスに近づいた。

「ブルケンさんの能力って、暗闇の砂漠でも使えるの?」

「多分?真っ暗な洞窟でも問題無かったからな、大丈夫だとは思う」

「思う?」

 僕達は聞き返してしまった。

「地図があればの前提だよ。」

「地図?」

「あの人のスキルはあくまで辞書を脳裏に表すだけだから、地図が正しくなかったり、辞書が間違っていてもそれに追従してしまう。」

「地図はどこで手に入れたんだ?」

 ボールスは首を傾げた。

「炎英離都よ。」

 代わりにストナが答えてくれた。

「蜃気楼の街モガナートとマルクの反物は炎英王の貴重な財源だから、場所だけでなく存在すら公開されていないの。門外不出よ。炎英離都や炎英魔宝学院も例外でないわ。ただ、マルクの研究機関が炎英魔宝学院にはあり、その伝手でモガナートへの地図が残っていたらしいわ。でも、怪しい地図ね。」

「その地図がまちがっていた場合は?」

「砂漠で迷子ね。ま、でも、私とボールス君の亜空間魔法に食料と水は大量に持ってきているから、問題は太陽が昇ってきた後の暑さね。」

 僕は月明かりに照らされる砂漠を眺めたが、木陰になりそうなところはどこにも無かった。

「ヤタガーラさんが来てくれていたら……。」

「彼は無理だよ。死刑になるから。」

「死刑になる?」

「炎英新都の人間が許可なくモガナートに近づくと死刑って、噂があるらしい。」

「怖、ボールスは大丈夫なのか?」

「俺達は炎英離都側だから、問題ない。あの人は炎英新都から派遣されてきているから、連れてこなくて正解だよ。」

「こわ」

「マルクを手に入れれば、城が建つからな。俺達も用心しないと、炎英新都側の兵隊に絡まれれば、戦闘になるかもな。」

「だからな夜中なのか?」

「さあ?」

「着いてどうするんだ?中に入れるのか?殺されないのか?」

「さあ?」

 さあって、僕はストナを見たが彼女も首を傾げて「さあ?」と言っている様だった。

 あまり、未来の事は考えずに、歩く事だけに専念した。




 ひたすら歩く事、数時間。夜が明ける頃に目の前に丘が見え始めた。

 「見えたか。」

 夜明けとともにその丘の全貌が目の前に姿を表したのであった。巨大な丘の上にそびえる巨大な城。丘全体を囲う様に建つ巨大あ城壁。砂漠の要塞と言っても過言でない程の作りの城下町。しかもこの砂漠は不自然な程に丘は緑に覆われ、城壁の上まで伸びる巨大な木々を見る事ができる。異空間に造られた城。まるで幻でも見ているかの錯覚に陥る。手を触れると消えてなくなるのではないだろうかと思う。

 蜃気楼の街モガナート。誰が命名したのか分からないが、まさしく蜃気楼を見ている様であった。

「姿勢を低く。」

 オーヴィズの突然の一言に僕達は緊張の糸が張り詰めた。

「炎英王軍がいる。門衛をしているな。」

 僕は隠れる様に城門の前を見た。

 数千人くらいいる。

 なんだこの量は?

「聖京都の国王軍全軍より多い!」

「国王軍は冒険者資格のある者しかいない少数精鋭軍隊だ。こんな寄せあつめ軍団と一緒にするな。」

 オーヴィズからガチに怒られた。

「ナギト、国王軍はどうか知らんが、目の前の軍隊の一人一人の動きを見てみろ。」

 ライガの言った通りに炎英王軍の一人一人の動きに注目して見てみた。確かに動きが歪だ。軍隊らしからぬ動きである。統率を感じ取れない。よくよく見ると結構老人が多い?元軍人でもない様な気もする?

「あの人達は誰ですか?」

「ボルケーノ西部には兵役義務がある。毎年この時期に訓練があるらしいがその一環としてここを守っているのだろう。」

「一般人?」

「今は兵士だ。」

「どうするんですか?」

 僕がオーウィズに聞くと、オーウィズはニッコリと笑って僕に答えた。

「強行突破と行こうか!」

 はあ?

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