告白
^^お久しぶりです。
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とある日の事。
「代表、話があります」
「ああ、何だ?」
ダイスから急な呼びかけに応じる俺。
いくらなんでも俺が社長という立場とはいえ、長い付き合いであるダイスを前にして立たせ、俺は王座に座る。
挙句、ダイスに敬語を使わせてしまった。
「2人の時くらいはタメ口で話てもいいのによ」
「じゃあそうさせてもらうわ」
「んで、用件は」
「俺等は最近じゃかなり力をつけてあの6大カンパニーに近づいてる所まで来ている。という点を考えて聞いてくれ
簡単に言うと、アリスの事だ」
「ん?昇進させると言う事か?」
「いや、その逆だ」
その言葉に俺は疑問に思った。
何故アリスが降格しなければならない、立ち上げメンバーの1人でどんな時もずっとそばにいてくれたと言うのにどうして、そんな仕打ちをしなければいけないのか分からなかった。
辛い時期を知っているから、ダイスも分かっていると思っていたが、答えはその逆だった。
「どういう事だ!アリスは1番最初に苦しい時もこのギルドを支えてくれたメンバーじゃないか!お前が1番分かってるじゃないか!」
「分かってる!分かってるから言ってるんだ!」
俺の激しい口調に負けずに反論する。
「ここ数年確実に力をつけて来たこのギルドには新たに入ってくる人達も皆優秀なんだ、彼女より若くて彼女よりも優秀、俺がこの間昼食を食べている時に聞こえたんだよ、なんであんな人がこのギルドにいるのかってな」
「なんだと……」
俺の怒りの矛先がそいつらに移っていく、しかし、それは次に見せられたダイスのデータによって明らかになる。
実際、アリスの働きが他の人に比べて良くない事は明らかだった。
その上役職も良いとこに就いている。
不満を持つ人がいても仕方がない。
「はっきり言うよ、彼女を降格、いや飛ばすべきだ!」
「………!」
「今我々はギルドとして多方面な活躍をしているのはヴェルトが1番分かってるだろう
その中に彼女を移転させるべきだと俺は思う」
「……それは出来ない!!」
年齢で昔の様な働きが出来なくなっているからって今までの功績を無かったかのようにただ見捨てるのは俺の信条が許さなかった。
「俺はアリスを見捨てる事は、出来ないっ!」
「じゃあ言い方悪くして言わせてもらうよ
彼女はあんたのお気に入りで採用させてんだろ!」
「ああそうだよ!!!」
俺は怒り狂ったように王座から立ち上がり、ダイスに近づき、胸ぐらを掴み高圧的な態度をとる。
「これ以上言うなら、お前を俺の独断で追放する事だって……」
「悪かったって、ごめんな」
そう言ってダイスは怒りに力を任せた俺を軽く振り払って一歩後ろに下がる。
「お前はこの歳にもなって、好きな人に告白すら出来ないなんて恥ずかしい奴だなって思うと笑いと同時にむかついてきちゃってよ
悪いな、試すような事して」
「は?」
俺は一気に話を進めるダイスに理解が追いつかない。
ダイスは理解出来ない俺を見て笑い続ける。
「いやいや、指輪まで買っておいて、ずっと彼女の事気にしてるのを知ってて見てると面白いんだよねホント」
「お、おい!何で知ってるんだよ」
「分かりやすいって本当に、指輪を自分の机に嬉しそうにしまう姿はもう最高だったよね
さらに今日こそと思って服に忍ばすけどやっぱ勇気が出なくて机に戻す姿はもう傑作も傑作だったわ」
「…くそっ、
でお前は何が言いたいんだよ」
俺はようやっと状況が飲み込めた。
ダイスが俺の行動を見て笑っていた事は後で絶対に許さない事に決めた。
「だから、お気に入りならすぐにでも自分のものにでもしろって事」
「なっ……!」
また俺の顔が赤くでもなかったのかダイスが俺を見て笑う。
「今も持ってんだろ?指輪、だからさ早く告白した方が良いぜ?
彼女はめちゃくちゃ可愛いからなーすぐにでも他の人と結婚してもおかしくないなー」
「お前……」
「早く呼べって、もしこのままビビり続けて彼女自身がギルドにいるのが辛くなって辞めていってしまうかもしれないぞ?」
「ああーもう!くそっ」
俺はダイスの思うがままになっているような気がして嫌だったが、ダイスは俺には無かった最後の勇気って奴を与えてくれた。
更に俺に任せろとまで言って来た。
やっぱり許して感謝する事にした。
「アリス、話がある1番会堂に来てくれ」
「え、あっはい」
アリスにもここでは敬語を使われてしまう。
それも考えると嫌な気がする。
会堂に着くとヴェルトは王座に座っていた。
アリスは王座の階段の少し手前で立ち止まった。
「話、と言うのは」
「今後の契約についての話だ」
俺はそう言うと何故か分かっていたかのような顔をするアリスに少し動揺をする。
「分かっていましたよ、私はもう以前の様には動けない、ヴェルトさんの様にはなれないって」
「今は他の人がいないんだ敬語は使わないでタメ口で話してくれよ」
「いえ、それは出来ません」
俺はまだ何も言っていないのにアリスは涙を流しながら話す。
そして、タメ口で話して欲しいと言うのに言う事すら聞いてくれない。
俺は忙しかった。最近はあまり2人でまともに会話すら出来ない程に。それがこの関係値を作り出してしまったのだろう。
俺は反省する。
「分かっているようだな、最近は仕事量も随分と減っている見たいだな……」
「はい、」
「俺1人でギルド全体をまとめる事も救う事も出来ない」
ダイスにはもう少しとやれと指示してくるが、流石にもう我慢の限界だった。
俺は王座から立ち上がり一段、また一段と階段を降り、アリスと同じ高さになる。
「今のギルドは俺1人じゃもう全て見れないくらいに大きくなって来て、出来る事が制限される、だが、俺はこのギルドをもっと大きくしていきたいと思っているだから……
俺も選択をしなければいけないんだ」
そう言って、少し俺の方が高かった目線が少しずつアリスの方が高くなる。
アリスは両手を口に押さえて、涙を流している。
そして俺は片膝を着いた。
「俺が仲間に裏切られてどん底だった時、常にずっと横で俺を支えて来てくれた……今まで俺は何度も助けられた…2人ならどんな困難だって立ち向かえる気がした……」
俺は緊張のあまり、顔が上下に動く。
こういうときやっぱり俺は格好がつかない。
でも、最後はしっかり決めたいと思い、アリスの顔をしっかりと見る。
「だから、これからは2人で……いや、俺がアリスを支えて行く……大好きです。
──結婚して下さい」
アリスの顔に涙が溢れる。
そして、一呼吸終えた後に返答をした。
「ありがとう…よろしくお願いします」
そう言ってアリスは俺の手から指輪を受け取った。
俺も涙を堪えきれなかった。
そして俺は立ち上がって、2人は抱き合った。
すると───
「おーい!皆んな!成功だーー!」
ダイスの声と共に会堂のドアを思いっきり開けて幹部の人達が入った来て、それに続くかのように沢山の仲間達が俺とアリスを祝った。
「おめでとう」と拍手しか聞こえない。
今俺は幸せの絶頂にいる事を実感した。
「よくやったなヴェルト」
「ああ、ありがとうダイス!」
俺とダイスを囲んで仲間達が俺に賛辞を浴びせる。
アリスの方も仲の良い人達と抱き合っている様子。
「おーおー、凄いなこの騒ぎは」
すると、奥から聞いた事があるような自分よりだいぶ歳上の声が聞こえた。
「ウィル代表!それにドラコさんも」
「今は代表を退いたただの一般人だ」
「久しぶりだな!坊主!」
「どうしてここに?」
「それはな、この男から今日、お前が結婚するからサプライズで来てくれと頼まれたからな
しかし、これで来たのも4回目か?お前は何度俺を待たせるんだ告白くらい覚悟決めたらピシッと決めてくれないと
ウチを辞める時はすぐやめたのになあ」
「その時もすぐではないですよ!緊張しましたから」
ウィルさんは嬉しそうに笑った。
俺も涙ではなく笑みが溢れた。
アリス側にはロイさんとサイファリアさんが来ていた。
アリスはこの2人によくお世話になっていたみたいでそっちの方でも涙ではなく笑顔が見えた。
「いやーあのアリスとお前が結婚なんて本当驚いたな」
「本当だな!アリスはいつもオドオドしてたからな見ないうちに立派になっているじゃないか」
「沢山の人が祝福に来てくれてお前も幸せだなぁ」
「そ、そうですね、両親には来てもらえませんでしたけどね」
そう呟くと、ウィル代表とドラコさんが目を合わせる。
しかしその後特にそんな事を気にせず幸せな時間を過ごした。
そして、ある程度人が減ったところでウィル代表から話をしたいと言われ、応接室にて話をする。
「話しとはなんでしょうか」
「お前に本当の父親の話をしようと思ってな」
「本当の?」
俺は今更になって父の事を話に出された事に対する驚きもあったが、少し嫌な予感もする。
「あの最悪な両親は本当の両親では無い」
「そうなんですね…」
こんな話をされても全く意味も分からない。
「俺がお前が虐待されてたのを助けた事覚えているか?」
「そりゃもちろん」
「お前を助けろと俺に言ったのはお前の本当父親なんだ」
「それはどういうことですか?」
俺は何故か本当の両親の記憶が全くと言って良いほどに思い出せない。
そして、ウィル代表は話し始める。