Another Story (プロローグ 1/2P)
プロローグ(1/2ページ)
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そりゃ私は夢見がちだと思う。
いい大人になっても異世界小説や乙女ゲームなんか大好きだし、好きなキャラやシチュエーションなんかで妄想するのは日常茶飯事。
恋愛にも夢見がちで友達には『沙羅は結婚より恋してたいタイプだよね』とか言われる。流石に『白馬の王子様が~』とかは言わないけど、イケメンで優しくてお金持ちで私だけが好きな人、なんて誰でもどっかで願ってる事でしょ?
[漫画みたいな恋がしたい]
所謂中二病が抜けないままで年齢を更新している私だった。
だから『トイレから出たら別世界!』なんて妄想はしてた。自作小説のネタにでもしようかと思ってたくらい。
でも、どこでもドア宜しく、本当に別世界だった場合はどうしたら良いのでしょうか、神様。
「え……………?」
(トイレのドアを開けるとそこにあるのは私の部屋に繋がる見慣れた廊下………じゃない)
見た事無い白い壁に床には赤い絨毯。細かい装飾が施された額縁に飾られている綺麗な絵画。ツルッとした硝子細工の花瓶には大きな花が生けられている。
廊下は廊下でもうちとは明らかに凄いクオリティが違う。視界に映る物の全てが何を取っても『高価です』と言わんばかりに豪華に彩られていた。
目を疑う光景に思考が停止していると女の人の声がした。瞬間的に『不味い』と思ったけど、声色は私を責めるものじゃなかったので閉めようとした手を動かさずに済んだ。
「サラーラ様?どうかなされましたか?」
(………私?)
私に話し掛けている感じの声に冷や汗をかきながら視線を移せば、不安そうに見つめる初老の女性と目が合った。
「医師をお呼び致しましょうか…?」
瞬間、このメイド服を着た優美なおばあさんが何を言いたいか分かった。
(分かったけど、ちょっと待って。この状況…………なに?)
「え……と、大丈夫です………?」
「……そうですか。では何かありましたらお呼び下さい」
そう言って流れる動作で会釈をすると赤い絨毯の先に歩いて行った。
一人になった私がまずしたのは、後を振り向く事。だってさっきまでうちのトイレに入っていたんだから。
「………………オー………ノー………」
(ここどこよ)
振り返ったトイレはこれまた豪華で『トイレ?』とか思っちゃうレベルの小部屋だった。
(まじで知らない所にいるっぽい。しかも不審者じゃない感じで)
(//)