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百日草の同期  作者: 兎束作哉
プロローグ
1/62

帰ってきた幼馴染み



挿絵(By みてみん)







 幼馴染みに、10年も前に告白された。


 その幼馴染みは、告白した日に海外に引っ越してしまい、その後ずっと音信不通。連絡も何故か拒否され、生きているのか死んでいるのか分からない状況だった。母親同士が仲がよかったこともあり、生存確認は出来たものの、俺はその幼馴染みの声を10年も聞くことが出来なかった。

 声変わりしてるのかなとか、背は伸びたのかな……とかそういう想像を膨らませるばかりで、ずっとずっと会えなかった。

 もう俺の事なんてどうでも良いんだって、10年彼奴を思ってきた俺は軽く絶望していた。でも、フラれたわけじゃないから、いつかは帰ってくるんじゃないかって、フラれるまでは、俺は彼奴の隣にいるんじゃ無いかって勝手に思ってた。

そう思うことでしか自分を保てなかった。

 そんなたった一言で縛り付けていた幼馴染みから少し解き放たれたのは、19の時。警察学校で出会った同期だった。彼らと過ごすうちに、少しだけ彼奴のことを頭から切り離すことが出来た。


 初めて出来た友人に、遅めの青春に、舞い上がっている自分がいたのは確かだ。




 連絡を受けた。


 ある日、恋人である幼馴染みの母親から連絡が来た。切羽詰まったような、焦った声に、どうかしたのかと取り敢えず空港に走った。パスポートは置いてきてしまっていた。1度も使ったことがないくせに、でももし、外国の方で幼馴染みに何かあったら……そう思うと、勝手に身体が動いていた。頭よりも先に。

 空港に着けば、見慣れた亜麻色の髪が見えた。白いフードを被っていても、日本人男性の平均身長よりもある為凄く目立っていた。脚もすらりと長くて、そのオーラはまるで芸能人かという感じだった。


 白いフードを被った幼馴染みは俺を見つけると、その長い脚で駆け寄ってきて、いきなり俺に抱きついた。バランスを崩して後ろに倒れれば、俺の匂いを音を確かめるように、幼馴染みは涙も頭をこすりつけていた。


 フードがとれ、彼の顔が露わになる。

 10年ぶりでもすぐに分かった。変わらない……そう言えたかどうかは分からない。

 けど、顔の作りや雰囲気が、その俺を見つめる若竹色の瞳が10年前の幼馴染みのそれだったから。


 忘れるわけもない。

 ずっと恋い焦がれてきた存在だったから。



「春ちゃん、久しぶり」



 俺の名前を呼ぶ声は、低くなっていた。でも、その愛おしそうに俺の名前を呼ぶトーンは変わらない。何も変わっていない。

 その変わっていないという事実に俺は安堵感を覚えていた。


 よかった。よかった……



「春ちゃん、大きくなったね。僕のこと覚えてる?」

「ああ、勿論……」



 忘れるわけがない。


 そう口にはしなかったが、俺が言いたいことを察したのか、幼馴染みはふわりと笑った。その笑顔は子供っぽくて、でも10年前よりも格好良かった。

 心臓が煩くなる。

 顔がにやけていないか心配だった。やっと会えたと、凄く喜んでいる自分を知られたくない。

 あくまで、「へー帰ってきたのか」なんて言うように。



「あのね、春ちゃん、僕ピアノやめてきたんだ」



 春ちゃんに会うためにね――?



 幼馴染みはそう言って無邪気に笑った。

 幼馴染みは「元」プロのピアニストだった。






今日から5月終わりぐらいまで毎日更新、連載をします。


一応シリーズ物なので、この後に2作続く物だと思って下さい(1作ずつ綺麗に完結させる予定なので、何処から読んでも大丈夫なように書きますが……)

ジャンルがガラリと変わって、BL&ブロマンスなので、苦手な方は、どうぞブラウザバックして下さい。


それでも、おつきあいして頂ける方がいれば、ブックマークや☆5評価、感想、レビューなど貰えると励みになります。おつきあいいただけると嬉しいです。


他にも、連載小説や、短編小説もあげているのでそちらも是非。


※『乙女ゲームの世界に召喚された悪役聖女ですが、元彼は攻略したくないので全力で逃げたいと思います』本日本編完結いたしました。


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