賢明で愚か 3
子供達は予め用意された木材を電動工具を使って組み立てていた。
材料の支度を済ませて体育館に戻った千香良は、その光景に笑みを溢す。
やはり工作のイベントとあって、付き添いは父親が多いようだ。
心配そうに見守っている。
けれども中には上手に工具を使えない子供も見受けられ、父親が代わって組み立てていた。
元ヤン男の甥っ子もタッカーを両手で持って奮闘中。
身長は120センチぐらいだろうか……
小学1年生といえば6歳か7歳。
確か、三上の甥っ子も7歳と聞いた。
「ご苦労さま……おっ、千香ちゃんも手伝いに来てくれた」
ぼんやりと子供達を眺めていたら、声を掛けられた。
千香良は笑顔で頷く。
「ぼち、ぼち、かな……」
左官組合の人達は頃合いを見計らって来たようだ。
殆どの親子がプランターテーブルを完成させている。
「じゃあ、次は天板に珪藻土を塗るから、先ずは鏝と鏝板を取りに来て下さい」
そして、龍太が説明をしながら、手本のパホーマンスを始めた。
左官組合の人達もそれぞれのブースを見て回っている。
プランターテーブルの天板は30センチ角で珪藻土を塗り込めるように枠組がしてあった。
そこに練り上げた土を鏝で平らに広げるように塗っていく。
「お~」と歓声が上がったと思うと、小さな声で「簡単そう……」などと言っている。
「では、初めて下さい……」
龍太の掛け声で、子供達が鏝板から珪藻土を鏝で掬い取ろうと、悪戦苦闘。
見ている限りでは簡単そうだが、早々、上手くはいかない。
「千香良は高学年の子達を見てやってくれ」
手持ち無沙汰にしていた千香良に龍太が役割をくれた。
確かに高学年の方が手間は掛からない。
低学年の子らは鏝で上手に出来ないと手を使い出す有様だ。
体育館内の至る所で笑い声が響いている。
なんてったって左官仕事は時間を掛けられない。
天板を平たく仕上げたら直ぐさま、デコレーションに取り掛かる。
皆、それぞれ創意工夫をして楽しそうだ。
千香良が手伝わせてもらった親子は薔薇の型抜きに挑戦。
手先の器用なお嬢さんで出来映えは上々。
父親も我が子の作品にご満悦のようだった。
そして、参加者が帰って行くと、体育館内は閑散としてしまう。
千香良も後は片付けをして帰るだけだ。
「たまには焼き肉でも食いに行くか?」
龍太に初めて誘われた。
幼稚園の先生らしき女性は、いつの間にか帰ったようだ。
「でも……」
「あぁ、彼女は用事を思いだしたってラインが入っていた」
千香良は絶対、嘘だと思った。
それでもラインに断りを入れる心理は分からない。
大人の礼儀作法なのだろう。
「左官組合の人達と?」
千香良はイベントの打ち上げとして左官組合の人達も一緒と考えた。
「おっさん達は居酒屋で飲むらしい。誘われたけど千香良は未成年だから断った。行きたかったか?」
「別に、特に、酔っ払いは苦手だし……」
千香良は自分でも意味不明な反応をしていた……




