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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
95/140

純美で滑稽 5

 



 三上から聞かされた話は内容が想定外。

 千香良は反応できない。


「驚くよな。ほら……俺の姉ちゃんはオーストラリア人だから……家族構成は雇用判断の基準外って感じでさ……俺も今まで言わなかったんだ。で、姉ちゃんが休み前に打明けるって言うからさ、俺も千香ちゃんに言っておこうかと思って……」


 三上には既に消化済みの事実らしい。

 こともなげに言う。


「そうなんだ……」


 確かに連休を取るのなら事情は聞かれる。

 それに長く勤めるつもりなら、話しておいた方がいい。

 息子の話もしたい筈だ。


 しかし衝撃的だ。

 質問事項が山ほど浮かぶ。

 けれども一旦、デリート。

 イレギュラーな真実は深掘厳禁。

 

 千香良は話題をキャンプに戻す。

 

「朝ご飯はどうするのかな?」


「あぁ、先輩がコンビニにパンを買いに行った……」

 

 三上もあっさりと切り替わる。

 どうやら詳しい話をするつもりはないようだ。

 千香良の手を取ってテントへと歩き出した。

 

 そして朝食は昨日の残りのカレーとアクアパッツァとパン。

 各自が起きた都合で食べていた。

 

 最期に起きてきたのは百合と愛子。

 メイクもバッチリで抜かりがない。

 百合はピンクで愛子が黒、お揃いにノースリーブワンピースも可愛らしい。

 千香良も寝間着代わりのスエットからオーバーオールに着替えている。

 勿論、弓も昨日とは違うファッション。

 ストライプのシャツワンピースで颯爽としていた。

 

 チェックアウトはAM10時。

 全員で慌ただしく設営を解くと帰路につく。

 

 そして行きと同じく3カ所のサービスで休憩しながら、予定道理夕方には自宅に到着。


 意外なことに三上は千香良を自宅まで送るとすんなり帰って行った。

 いつもは帰り際に別れを惜しむように、長いキスをするのに……

 キャンプ場からずっとミニバンの運転をしてきたのが堪えたらしい。

 流石に疲れたようだ。


「お帰りなさい」


 車の音に母が玄関まで出てきた。 


「ただいま」


 千香良もヘトヘトだ。

 お土産の ‘ご当地ラーメン’ と頼まれていた ‘ます寿’ を母に渡すと任務完了。

 千香良はソファーに横たわる。

 するとアッと言う間に寝息を立てだした。

 

 けれども千香良は小一時間でお目覚め。

 空腹には勝てないようで ‘ます寿司’ を頂く。


「乙葵さん、子供いるんだってね……」


 千香良ふと母に乙葵の話を振ってみた。

 デリケートな話ほど、さり気なく口にするのがいい。


「だってね……」 


 案の定、母の反応は薄い。

 相葉家は素より他人に干渉しない。

 

 そして一夜明けても千香良はキャンプの余韻に浸っていた。


 千香良は満天の星空、三上は海に昇る朝日。

 お互いが見そびれた光景は写真交換してある。


『プラスター工房ムラオカ』へのお土産は ‘白エビビーバー’。

 スナック菓子だが、八村選手がアメリカに持って行ったとの噂。

 話題になる逸品だ。

 

 悩んだのが龍太個人への土産で、千香良は九州旅行の土産をもらっている。

 けれども三上の手前、止め。 

 帰り際で揉めるのだけは嫌だった。

 

 けれども夕方からは気も漫ろ。

 龍太から『アカデミーイベント』参加の再確認と詳細がラインに届いたのだ。


 千香良は興奮して夜も中々、寝付けなかった。

 それでも当日は気分良くお目覚め。


 会場は小学校体育館。

 現地集合。

 けれども千香良の体は体育館の入り口で止まる。

 握りしめた拳が掌に食い込んで痛い。


 主催者と話をしている作業姿は間違えなく龍太。

 そして、その横にエプロン姿の女性が寄り添っていた。

 エプロンは赤のギンガムチェックでアップリケ付き。

 技能試験の講習日に聞いた幼稚園の先生だろうか……

 ロングヘアーをハーフアップにした穏やかな横顔が見える。

 

(動揺するなんて可笑しいよ……)


 心の声も震えて聞こえる。

 それでも千香良は一歩を踏み出す。


 千香良は純美だからこそ滑稽に思うのだろう。




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