純美で滑稽 3
焚き火台に掛けられたダッチオーブン。
蓋の上には炭。
炎も綺麗に上がっている。
正に絵に描いたようなキャンプ場のワンシーンだ。
否応無しに気分も上がる。
「もう、良いんじゃない」
‘パチ、パチ’とピザの焼ける音に先ずは弓がトングで炭をどけた。
そして蓋を開けると溶けたチーズの香りが鼻腔に届く。
切り分けるのは山田が持参したナイフ。
千香良には分らないが、ナイフは有名メーカーの物らしく注目の的だ。
それよりも千香良は焼きたてのピザ。
コンビニの冷凍ピザでもダッチオーブンで作ると格段に美味しい。
そして、直ぐにもう1枚を焼き始める。
「夜までは各自、何をする?釣り道具もレンタル出来るし、テニスコートもあるから」
「俺達はここでダラ、ダラしているわ」
三上の友人3人は海で、はしゃぎ過ぎたようでお疲れらしい。
短時間でも炎天下では体力を奪われる。
「私達も……」
「で、3時になったらコテージにチェックインしてクーラーのスイッチを入れておく」
百合と愛子も居残るようだ。
「俺達は釣りに行くけど……三上はどうする?千香ちゃんと一緒に来いよ」
「駄目だよ。私はどうするの、釣りなんか嫌だからね」
意義を唱えたのは弓。
弓は居残る意思表示をしていない。
それに百合も愛子も千香良と同じくTシャツにズボンだが、弓はふんわりとしたワンピースを着ている。
磯には行きたくないだろう。
「そうだ……ドックランに犬でも見に行くから、千香ちゃんを貸してよ」
近距離を親子連れが大型犬を連れて歩いていった。
様子を目に咄嗟に思いついたのだろう。
弓が隣に座っていた千香良の腕を取る。
願ってもない申し出だ。
千香良も釣りは辞退したい。
それに、折角、大勢で来たのだから三上以外とも遊びたいと思う。
「別にいいけど……」
三上は少しだけ嫌そうな顔をしている。
まだ、少し蟠りがあるようだ。
「余計なことは話さないから、心配しなくていいよ」
「真君……私も釣りは……チョッと……」
千香良は消極的に断りを入れてみる。
「そうか……女子は釣りには興味がないか……で、三上はどうする?」
北村は本当に出来た人だ。
場に雰囲気を悪くしない心使いが周到だ。
「俺は釣りに行きます。カレーだけじゃ面白くないから、アクアパッツァの魚を釣りましょう」
何だかんだ言っても三上も空気が読めるタイプだ。
取るべき行動を間違えない。
名目は友人グループでのキャンプだ。
恋人同士がベッタリはNGだと判断したのだろう。
「そうだ、カレールー……誰か買ったか?」
誰かが思いだしたように聞いてきた。
皆がそれぞれ、首を傾げている。
どうも買っていないようだ。
「あの……差し出がましいかとも思ったんだけど……『赤煉瓦』の賄いカレーのグレイビーを持ってきました……」
「マジ?」
三上が千香良を抱き上げて歓喜する。
「お手柄だよ」
「グレイビーって何?『赤煉瓦』って何で?」
「グレイビーはカレールー見たいな物じゃない……」
「千香ちゃんの家だよ」
「へ~凄くない……『赤煉瓦』の賄いカレーだって」
皆のテンションが上がっている。
千香良も気分が良い。
何より三上の機嫌が戻ってよかった。
無理をして楽しんでいるようで千香良は少し辛かった。
もしかしたら切掛けが欲しかったのかも知れない。
「じゃあ、俺は釣りに行ってくるから」
「うん、じゃあ」
そして千香良はドッグランで弓から三上家の内情を聞かされる羽目になった。




