純美で滑稽 2
キャンプ場は日本海を望む高台にあり海が一望出来る。
到着時間が少し遅れたが、辛うじて海が見える場所が取れた。
けれども子供連れが多く、結構、五月蠅い。
そして男性陣は早速、テント張り。
千香良は初めて見る作業光景から目が離せない。
「何かすることある?」
けれども見ているだけでは申し訳ない。
千香良は手伝いを申出た。
「ありがとう。でも……いつものメンバーに他の手が入ると返って手間取るんだ」
三上が即答で却下してきた。
確かに皆、慣れているようで手際がいい。
百合と愛子はダッチオーブンやその他諸々をレンタルに、弓は山田と薪をもらいに行っている。
皆、千香良は三上と行動を共にすると思っているのだろう。
けれども三上はテントの設営に集中しすぎ。
千香良を構いもしない。
手持ち無沙汰は千香良だけで、途方に暮れてしまう。
「そうだ、千香ちゃんは三上と一緒に車から食材と飲み物が入ったクーラーボックスを運んできてよ。おい、三上」
北村が千香良の淋しそうな様子に気がついたようだ。
仕事を与えてくれた。
「何?」
「お前、彼女をほっといて、夢中になりすぎだ。車から残りの荷物を千香ちゃんと持ってこいよ」
三上は漸く所在なさげに立ち尽くす千香良に気が付いたようだ。
それでも、どこか様子が変だ。
千香良と目を合せようとしない。
「行こうか」
三上は愛想もなく駐車場に向かって歩き出した。
「うん」
千香良は三上に続くしかない。
「ねえ、私……何かした?」
駐車場に着いてからも三上は無口だ。
1人でトランクからクーラーボックスを降ろしている。
まるで2人きりになるのが嫌なようだ。
千香良は近づくことも出来ない。
「悪い……百合ちゃんとの会話が聞こえちゃったから……どうも……落ち着かなくて……」
「無理、無理、無理……無理だから……」
千香良は一歩退くと、脊髄反射で拒絶を連発。
流石に三上も凹んでいるようだ。
呆然とたちつくしている。
けれども千香良も必死。
海やキャンプ場は箍が外れやすい。
夜になってしまえば雰囲気に負ける。
今のうちにあり得ないと言っておくのも防衛上、致し方ない。
「そんなに、俺とするのは嫌?」
三上はトランクから降ろしたクーラーボックスを一旦、地面に置くと千香良と向き合う。
怒っても拗ねてもいない。
真剣な顔だ。
千香良は三上から視線を外して唇を噛みしめる。
「まだ……分らないから……」
すると無意識に言葉が漏れた。
正直な心の声だろう。
暫しの静寂。
遠くから子供の声が聞こえる。
車も次々と入っていく。
「だよな……悪い。行こうか」
努めて明るい声だ。
三上は車をオートロックすると地面からクーラーボックスを3個纏めて、拾い上げた。
そして、その内の2個を両肩の掛けると歩き出す。
しかし千香良は唇を噛みしめたまま動こうとしない。
「1個は持ってくれよ」
からかい口調に三上の優しさを感じる。
折角、北陸までやって来たのだ。
楽しい思い出を持ち帰りたい。
「真君……一緒に夜通し星を見るのは駄目」
「それ……良いな」
三上は背中を向けたまま重そうに片手を上げた。




