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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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素直で容易 4

 



 コンクリートの構造体がデンと一棟。


「何が出来るんですか?」


 千香良は建物の用途を龍太に聞いてみた。


 「知らん」


 返事はぶっきらぼうな一言。

 折角、初めて千香良から話し掛けてみたのに凹んでしまう。

 無駄口御法度のオーラーも出ている。

 

 確かに知らなくても出来る仕事だが知っていた損はないだろう。

 Kバスの中ではフレンドリーだったのに、現場に入ると人が変わったみたいに冷たくて嫌だ。

 

 ついさっきまで親しんでいたのに千香良は裏切られた気分だ。

 

 千香良は’厳しい’を知らない。

 ふて腐れている。

 それでも千香良はあからさまに顔に出さない。

 千香良はこんな時、自分の容姿は損だと思う。

 あざと儚げななど似合わない。 


 それに龍太とて、まだ26歳。

 兄と同じで偉そうにしたいのだ。

 千香良は知っている。

 ふて腐れているのがバレたら、より一層攻めの姿勢に入るはずだ。

 

 正月の間、兄は実家に帰ってきていた。

 そして千香良、相手に威張り散らしてご満悦だっただろう。

 

 兄が日頃、父に扱かれ(しごかれ)ている。

 千香良は、龍太もそう違いない、と想像して大目に見てやることにした。


 態度とは裏腹に心の中のでは上から目線だ。


 日も少し照ってきた。

 冬日和だ。

 それでもドカジャンを脱ぐには寒い。


「千香良、こっち」


 千香良はいつのまにか呼び捨てにされているが、それも許してやる。


 学校での千香良と呼び捨てにされていた。

 言いやすい名前なのだ。

 それに建設現場で‘千香ちゃん’もどうかと思う。

 かといって相葉さんとか相葉君もしっくり来ない。

 苗字の呼び捨ては威張って聞こえる。

 

「ちょと、見ていろ……こうやってPコンの穴を綺麗に掃除して……埋めていく……」


 近づいて見るとコンクリートに沢山穴が開いている。


「Pコンはプラスチックコーンの略な。コンクリートで構造体を作る際にはコンクリートを型に流し込んで形成する。そして、その型枠を組むときに締めるネジがPコン。で、出来上がったらPコンは取り除くから、穴が開く。分かった?」


 千香良は頷くと、龍太から手渡されたレンガ鏝を握る。

 材料を掬う為の鏝だ。

 埋めるには手を使い、その後でPコンの穴に合せて専用の鏝で押し込む。


「恰好は一人前だな」


 龍太の顔が一瞬、綻ぶ。


 千香良は色違いで龍太と同じ恰好をしている。

 

 ドカジャンとポロシャツは支給された。

 しかしズボンは自分で用意するようにと言われた。


 そして教えてくれたのが、現場作業着専門店の『ワークマンズ』


 千香良のワークパンツはグレーのストーンウォッシュ。

 シルエットが中々綺麗で千香良は気に入っている。

 母も同じ物を園芸用に買った。

 それぐらい良い。


「お揃いか?」


 改めて言われると少し照れ臭い。


 そして千香良は思う。

 龍太は自分を律するために虚勢を張っているのだと。

 

 作業する横顔は真剣で手先は器用で淀みない。


 千香良は、その精悍な姿に少し落ち着きをなくす。

 心音はまだ正常だ。


(龍太さんはゾロに似ているかも……性格はルフィ?)


 千香良は目の前の男が自分の理想を具現化していることに気が付いた。

 

 

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