大らかで打算的 3
集合場所の先輩宅に到着すると、皆は既に揃っていた。
「千香ちゃん久しぶり」
ハイタッチでのお出迎えは三上の高校の同級生の女子2人。
1度しか会っていないのにフレンドリーだ。
「夜中だから」
先輩に注意される。
3人とも肩を竦めて舌を出す。
今回のキャンプは北陸まで行く。
日本海に昇る朝日が眺めるらしい。
サイトのチェックインは12時。
コテージは3時。
それまでは海水浴。
勿論、千香良も水着になる。
急に言われて新調する暇がなかったのが残念。
それでもギンガムチェックのレトロ可愛いワンピースはお気に入りだ。
胸のフリルが千香良の貧乳を多少は大きく見せてくれるし、裾が広がったAラインのスカートはヒップラインを隠してくれる。
そして夜は焚き火でカレー。
勿論、米も飯盒で炊く。
千香良は三上に内緒で、カレールーを持ってきた。
市販のカレールーで作ると聞いているのでサプライズになる。
『プラスター工房ムラオカ』の環境で千香良は自主性を学んだ。
頼まれたこと以外を行動に移すのは、初めてで勇気がいった。
けれども、『赤煉瓦』の賄いカレーは絶品。
喜んで貰えると嬉しい。
「で、俺の車に乗る人の割り振りは……女性陣は2、2で 別れてよ、女性4人が一緒だと俺の車がハーレムになるから」
キャンプサークルに所属している先輩の車は7人乗りのオフローダー。
中古車だろう。
年期が入っている。
「お前の車には誰も選ばん、だから安心しろ……」
自宅を集合場所に提供してくれた先輩が茶々をいれた。
深夜なので大笑いこそ出来ないが、皆、笑っている。
「お前、これは復刻版じゃないぞ」
「女子には分らんよ」
丁々発止の掛け合いが小気味よい。
けれども、仰有る通り。
千香良も車の良さは分らない。
「三上は彼奴のミニバンに乗れ。こっちは運転したことないだろ」
「じゃあ、千香ちゃんもミニバンだから……私達がボロか……」
乗車する車が決まると早速出発。
ミニバンには持主の先輩と三上、千香良、三上の従姉妹、そして、もう1人の先輩。
前回のバーベキューで魚を焼いていた先輩だ。
もう1人のキャンプサークル所属者らしい。
「俺、寂しがり屋だから助手席に千香ちゃんリクエス……」
「ナビゲーターで俺が座ります」
冗談と分かっていてもお約束。
三上が先輩のリクエストを阻止。
そして、千香良は2列目のシートに三上の従姉妹と並んで座った。
顔を見合わせてお辞儀。
「よろしく……っと……」
従姉とは聞かされたが名前は聞いていなかった。
そればかりか三上は千香良に誰のことも紹介してくれない。
確かに学生の集まりなんてそんな感じだが……
「弓さんだよ。そして僕は山田、よろしくね、千香良さん」
後ろの座席から焼き魚先輩が教えてくれた。
山田とは覚えやすい。
「僕は弓さんにアタック中だから協力して下さい……って……」
あけすけな物言いに千香良は目を丸くして、弓を伺う。
弓は満更でもなさそうに艶然と笑った。
女の千香良でもドキドキする。
清楚に見えて案外、違う。
千香良は女子校生活で女子の生態は熟知している。
1番のモテ女子タイプだ。
三上にも運転席の先輩にも聞こえた、だろう。
突っ込みの1つもあってしかるべき。
「千香ちゃん、俺は北村。弓ちゃんは僕も狙っているから」
千香良は斜め上行く話に返答できない。
「先輩、彼女いるでしょ」
弓が口を開いた。
思いの外ハスキーボイス。
魔性が2割増す。
「そうだった……」
「冗談だか本気だか……千香ちゃん、こんな感じだから、気を使わなくていいから」
三上が助手席から体を捻って笑顔を見せる。
千香良も笑顔で頷いた。




