曖昧で累卵 5
三上は後を引かない性格らしく、代らなかった。
しかし平日もアルバイトを頼まれたらしく、会う時間がない。
夏期講習を担当していたアルバイトが辞めてしまったそうだ。
そして日曜日は代らず個別指導。
三上は会う回数が減ると、何度も謝ってくれた。
しかしながら、千香良は寧ろ願っても叶っても。
夏の現場は炎天下。
休日は、極力、体を休めたい。
その代わりラインでの遣り取りは毎日。
しかも1日のラインが随分と頻繁になった。
千香良は現場の進捗状況とその日に千香良が行なった作業の報告。
けれども自分以外の職人の話は極力しない。
また、要らぬ詮索をされるのも困る。
三上は龍太に限らず現場出入りの男達を気にしている節がある。
イメージの問題としてガテン系の男共は女癖が悪く見えるそうだ。
けれども千香良は口説かれた事がない。
入った頃の龍太や他の職人達がプロテクトしたせいだ。
先日の事件のようなことは例外中の例外。
千香良を誘うなんて怖くて誰もしない。
そして三上は生徒達の、あれやこれ。
個別指導と違って生徒間での確執や牽制が見られて面白いようだ。
千香良は悪趣味だと思うが何も言わない。
ワンコが頷くスタンプ等を送っておくだけだ。
千香良は三上に意見をしたり交友関係に干渉したりしない。
三上も比較的、黙っている方だと思う。
世間一般のカップルをネットで調べてもみるが、同じようにはいかない。
千香良が三上に恋をしているかは微妙……
原田の時もそうだった。
彼氏、もしくはボーイフレンド持ち。
千香良にはその事実が大切なのだ。
18歳の恋愛なんて概ね、そんな感じだろう。
【16日深夜出発でOK?】
昨晩、三上から確認のラインが入っていた。
そして千香良は事務所のホワイトボードの前。
『プラスター工房ムラオカ』のお盆休みは長い。
‘山の日’ から10連休もある。
役場や銀行は盆休みでもカレンダー道理。
大手企業でも今年は6連休が一般的らしい。
好待遇と言っていい。
けれども、それは建前。
お盆明けに現場が追われるのが目に見えている。
それ故に龍太や鷹見は動いている現場には行くようだ。
『アカデミーイベント』
8月の第3日曜に記入されている。
調度、お盆休みの最終日だ。
「龍兄、アカデミーのイベントって何ですか」
龍太は日報を記入中。
緑だった髪暫く前に漸く全部黒になった。
千香良は長いような短いような……
時に流れを感じる。
千香良の龍太に対する態度は代らない。
畜産試験場の現場を外されたのが幸いした。
3日間も会わなければ気持ちも落ち着く。
「それか……毎年やっているぞ。小学生とその親御さんで壁を塗る体験教室を開催するんだ。千香良も来るか?」
「行く」
三上からの誘いは悩む。
けれども龍太とのイベントは即答。
曖昧で累卵な千香良の乙女心はどこに向かうのだろう。




