表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
83/140

曖昧で累卵 3

 

 

 

 千香良が動く度に大臀筋(だいでんきん)が丸いフィルムに隆起を描く。

 そして湯船に脚を入れると薄らと大腿長筋(だいたいちょっきん)が姿を現した。

 左官仕事でついた筋肉には無駄がなく美しい。


 素より千香良のスタイルは抜群だ。

 女子校でもよく羨ましがられた。

 けれども千香良としてはコンプレックスでしかない。


 一般女性の170センチは無用の長物。

 意味を持たないと思っている。

 そして何より中身とのギャプが大きい。

 千香良は少女趣味で甘ったれ。

 母に‘大人’と言われて動揺するほど精神年齢が低い。


 三上は中学同級生。

 そんな千香良の性質をよく知っている。

 だからこそ三上を選んだ。


 千香良は湯船に浸かるとミントブルーの湯を掬う。

 すると流動に匂い立つミントの香りが鼻孔を擽った(くすぐった)

 清々しくて1日の疲れが取れようだ。


 けれども、のんびりと体を沈めるのも束の間。

 千香良は思いだした問題に唇を尖らかす。

 

(龍兄の第一印象は……)

 

『プラスター工房ムラオカ』に面接に行った日もから、半年以上も経っている。

 千香良は思い出すために瞼を閉じた……

 

 事務所の玄関前。

 出会い頭で肩を引き寄せられてビックリした。

 心臓がドキドキと高鳴り体が火照った覚えがある。

 龍太は確かに頗るカッコ良かった。

 

 けれども思い出すと同時に千香良の眉間に皺が刻まれる。


(あの日も、本当は理想のタイプの出現に心が弾んだ?……でも……)


 龍太は強面だが男前だ。

 180センチを越える体躯は無駄なくマッチョ。

 そればかりか、優しくて、面白くて、面倒見が良い。

 勿論、仕事も出来る。

 そして、何より真面目で嘘がない。


 元ヤン男曰く、男も惚れる男だそうだ。


 千香良はゴシゴシと瞼を擦る。

 泣きたいぐらいに混乱してきた。

 

 すると2メートル400メートル洗い出しの通路が突然、頭に浮んだ。


『色粉を入れてセメントに骨材だろ……埃っぽいしさ……それで午前中は塗り込めた、洗い出を拭いていくだろ……炎天下だよ、四国よりもこっちは蒸し暑くて、水ばっかり飲んでいるから、龍太も吐いてさ……』


 龍太の失敗談に今度は口元が綻ぶ。


 千香良は龍太が大好きだ。

 千香良の手にいつもハンドクリームを塗ってくれる。

 チューブから取り出し過ぎた余りをくれるのだ。

 スキンシップはどこまでも ‘おふざけ’ で意味はない。

 それでも出会いは必然。

 千香良は無意識下で考えたのだ。

 恋心は無用の産物。

 芽吹く間もなく、敬愛に昇華。

 龍太に恋い焦がれていたら一人前の職人になれない。

 仕事所じゃなくなっていた。


 それに千香良は恋愛体質ではない。

 自覚している。

 激しい恋は落ちずに避ける。

 楽な相手に好きになっていく。

 けれども、初めての恋人はそのくらいで丁度良い。

 千香良はこれからも三上との恋愛を楽しもうと思っている。


 なんてったって三上は医者の卵だ。

 勿体ないぐらいの高スペック。

 

 しかしながら千香良は大きな勘違いをしている。

 一体全体……

 高嶺の花は誰なのか……

 本人だけが分っていない。


(今度のお泊まりキャンプで他の女子達と恋愛談義してみたいな……)


 千香良の額に少し汗が滲んできている。

 体も緩み、素直な気持ちが溶け出した。

 18歳の少女が思うこと。


 三上の女友達は男女共学の高校出身者。

 千香良と違って同世代の異性と過ごすことに抵抗がないようだ。

 きっと男子の生態もよく知っている。

 恋愛についての蘊蓄(うんちく)もあるかもしれない。


 千香良のお泊まりキャンプが楽しみになってきた。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ