曖昧で累卵
三上の四駆が停まると玄関アプローチの管知式ライトが点った。
それでも薄暗い車内。
唇を合わせると必ず舌が侵入してくる。
千香良は絡まってくる三上の舌を転がしては吸い付いてと堪能していた。
深いキスに応える術はいつの間に覚えのだろう。
それでも官能的とは言い難い。
心が甘くなるだけの辿々しいキス。
そして離れていく唇。
千香良は決まって俯いてしまう。
高城のエロ、エロキスは違う次元の行為だ。
千香良にはまだ早い。
未だに思い出すと下着が濡れて困る。
龍太に嫉妬するぐらいだ。
三上に高城の存在は絶対に知られたくない。
母はリビングにいるだろう。
相手の男に興味津々のはずなのに、車の音に出てこない。
必要以上に干渉しないのが放任主義だ。
千香良が嫌がると承知している。
初めての喧嘩。
仲直りのキス。
千香良は少し芝居がかっていると思う。
けれどもお互いに、承知で青春を謳歌している。
「今度、皆と泊まりがけでキャンプに行くんだけど、皆が千香ちゃんを誘っえて、五月蠅いんだ。都合も千香ちゃんに合わせるって言っているから、お盆休み中にでも、どうかな?」
三上の誘いは躊躇いがち。
丁度、千香良が膝の上のトートバックを肩に掛けた時だった。
「泊まりは無理だよ」
千香良は即答した。
外泊なんて考えたこともない。
「どうして、即答?2人きりじゃないよ。それに千香ちゃんは社会人だろ」
また少し三上の機嫌が悪くなった。
「でも……外泊なんてしたことないから、許してもらえるかな」
千香良も行きたいような気もする。
けれども両親に説明するのが面倒くさい。
三上を紹介するのも、まだ早いと思う程だ。
「ご両親に聞くだけ聞いてみてよ。グループ交際って言えばいいよ。実際、そんな感じだし……女の子も、この間の娘達3人が来るから」
随分と言い寄ってくる。
三上が引かないなんて初めてだ。
「うん、聞いてみる」
千香良は取り敢えず返事をしておいた。
両親に聞いてみるかも悩んでいる。
けれども必要に拒んでいると帰れない。
それに、また喧嘩になっても嫌だ。
「じゃあ、行くわ。楽しみだね」
「うん」
千香良は漸く助手席から外に出た。
三上は千香良が来ることが決まったように上機嫌。
千香良は複雑だ。
今日の三上は随分と子供っぽい。
嫌でも龍太と比べてしまう。
そして忘れていた疑心が、ぶり返す。
千香良はじっくり考えてみようと思った。
自分の心だ。
見て見ぬ振りは出来ない。
千香良は確実に大人になっているようだ。




