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ガテン系の女 愛より、恋より、修業中  作者: うらら桜子(旧 咲良ヤヨイ)
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素直で容易 3




 新年は冬籠もり。

 体が鈍っているのは致し方ない。

 

 千香良は大きく腕を開いて、澄んだ空気を吸い込んだ。

  

 支給されたドカジャンは紺色。

 人工ファーの襟が付いている。

 

 そして背中心に一直線。

【P.K.MURAOKA】

 横配列の白文字をワザと楯に立たせてプリントしてある。

 フォントはブロックのような形だ。


 千香良は洒落が効いていて面白いと思う。


 社名は『株式会社プラスター工房ムラオカ』

 左官屋さんだ。


『蘭々』のアルバイトは夜だけに戻してもらった。

 元々、昼のシフトは千香良の事情を慮って(おもんばかって)のことだ。

『蘭々』的には問題無い。

 奥さんか娘さんが手伝うだろう。


『蘭々』では千香良が、左官屋に見習奉公に行く、と聞いて皆、驚いていたが賛成もしてくれた。

 誰もが「これからは学歴よりも手に職だから」と言う。

 千香良は大人の言っていることは、よく分からない。

 取り敢えず、笑って聞いていた。


 そして今日は『プラスター工房ムラオカ』への出勤初日。

 AM5時半起き。

 千香良は意外と朝に強いみたで、目覚ましが鳴るとパチリと目が開いた。


 下の階は既にヒーターで暖かく、父はダイニングテーブルで新聞を、母はキッチンで朝食の準備。

 千香良は父と向かい合って席に着く。

 朝から、ゆっくり過ごす両親の光景を雑誌のようだと思う。


「千香良は今日からか?」


「うん、免許を取るまで、お願いします」


 千香良は父の問い掛けに戯けた調子で頭を下げた。


『プラスター工房ムラオカ』は鮮魚の仕入れ先に行く通り道。

 千香良が免許を取るまでは、父が車で送ってくれるらしい。


 すると、母が土鍋を2つ運んできた。

 相葉家の冬の朝食は、お粥が多い。

 各自に、小さな土鍋で出される。

 千香良は梅干し、昆布、温泉卵で完食。

 

 そして『プラスター工房ムラオカ』から現場までは龍太さんとKバスでやって来た。

 龍太とは面識はある。

 それでも緊張してしまのは、やはりカッコイイからだろうか……


 現場は畜産研究所。

 牛と豚と鳥が放牧されているのがKバスから見えた。

 千香良は敷地に入るなりにワクワクが止まらない。


 そして今、流れているのはラジオ体操。

 龍太はラジオ体操が上手い。

 千香良は見習いながら体を動かしていたが、何とも鈍くさくて笑える。


(毛森の奴なんかより数段キレがある)


 生活指導の体育教師思いだして忌々しい気分が湧いて出きた。


 高校を退学になってから1ヶ月が経っている。 

 17歳には長い時間だ。

 目的もなく過ごして千香良には尚更だろう。


 現場への道中、千香良は龍太から質問責めにあってきた。


『彼氏いるか?『蘭々』は美味いか?免許はどうする……』


 千香良も来月から運転免許を取りに行く。

 要普通免許なのだ。


 そして最期に『何で、学校を辞めた?』


 千香良は口止めしてから本当に事を話した。


 龍太は『それは言えないな』とあっさり納得。


 千香良は龍太が自分の事を理解してくれたと思い嬉しくて仕方がない。

 そして結果、良いか悪いか……吉か凶か?

 初日から素直で容易。

 あっさりと懐柔されたしまった。 



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