巧みで愚か 4
看板は雀斑、赤毛の女の子。
店の前にはベスパ125が駐車してあった。
壁面にもコミカルなイラストが描かれていて、オーナーの洒落者具合が見て取れる。
そしてアーリーアメリカンな店内は素朴で雑多。
所々にアメリカンカルチャーのアンティークグッズが飾られている。
三上と千香良は20分ほど並んで入店。
カウンター席でハンバーガーを頬張っている。
千香良は女子に人気のアボカドバーガー。
三上はファットバーガーをチョイス。
パテとベーコンにチーズとオールイン。
ボリューム感は圧巻だ。
2人ともドリンクとポテトをセットにした。
それにしても三上が甘い。
千香良の口角に付いたバーベキューソースを親指で拭うと、ペロリと嘗めた。
絵に描いたようなバカップルだ。
「前から思ってはいたんだけと千香ちゃんって、その龍兄って人の話ばかりするよな」
けれども少し雲行きが怪しい。
確かに今日は龍太の話を多く語った。
講習会で仕入れたばかりだ。
誰かに話したくなるのも無理はない。
「そうか~な~でも、今日は特別よく話している自覚あるな。だけど普段からそんなに話している?していないと思うけど……一緒に仕事をしている時間が長いからどうしても話題に出ちゃうのかな」
三上は表情なく千香良の言い分を聞いている。
そして何気なく千香良の皿からポテトを一本摘まむ。
「あぁ~私のポテト」
気が付いた千香良は唇を尖らせ抗議をする。
すると三上が摘まんだポテトを千香良の口に加えさせた。
ラブ、ラブじゃないか……
「だよな……焼き餅なんて格好悪いけど中々、会えないから俺は不安だわ……」
今度は泣き言なのだろうか?
三上は千香良の顔を覗き込むように頬杖を付く。
見つめられた千香良は挙動不審。
さっきから立て続けに三上は過剰なスキンシップを繰り出してくる。
千香良はその度に、どう反応していいか分からない。
ましてやカウンターの中には同じぐらいの年頃のアルバイトの女子達。
「そんな……龍兄は私なんか女として見ていないから……心配ないよ」
千香良は現状を脱するべく適当な言葉を返した。
意味などはない。
「やっぱり好きなんだ……」
三上の口から思いがけない言葉が吐かれた。
「えっ?」
「だって、その言い方は、そうだろ。相手は女として見ていないけど私は好きってことだよ。大体、俺とのデートに土産のTシャツを着てくる?」
千香良は大袈裟なほど首を横に振る。
どんな理屈でそうなるのか意味が分からない。
Tシャツは洗濯して畳んであったのを着てきただけだ。
確かに龍太の土産だ。
気に入って、しょっちゅう着ているのも認める。
けれども、それは福岡でしか展開していないショップの物だからだ。
「初めから諦めて気持ちを抑え込んでいるんだ」
「ねぇ、それ心理学?」
千香良は自分でも意外なくらいに腹が立つ。
そしてカウンターの中の様子をチラ見。
アルバイトの女の子達は忙しそうに立ち働いている。
千香良は少しぐらいなら揉めてもよさそうだと腹を括った。




