重くて刹那的 3
「悪い……」
三上が首横をさすりながら千香良の目も見ずに謝ってくる。
しかし謝る理由は何もない。
友人共の悪乗りが過ぎるだけだ。
「別に……」
それにしても照れ臭い。
俯く千香良も三上を見られない。
「で、宜しくお願いしまし」
すると三上が右手を差しお辞儀をしてきた。
例にアレだ。
千香良は一歩後退。
真逆の展開にたじろいでしまう。
友人共は固唾をのんで観客と成す。
先程の騒がしさが嘘のように静かだ。
千香良には公衆の面前で断る勇気などない。
それでも暫し考えたい。
千香良の頭に三上の先輩の台詞が過ぎる。
『馬鹿だぜ~好きな娘とは友達の儘が良いだって……』
もしも三上の本心だったら……
千香良の同意だ。
しかし三上が勝手に千香良の手を取った。
唖然とする千香良は言葉も出ない。
そして観客共は拍手喝采。
三上は照れ臭そうに頭を掻いている。
千香良は取り敢えず笑う。
場の雰囲気に流されたとしか言いようがない。
後は野となれ山となれ……
カップル成立でも盛り上がったのも束の間。
何が代わるわけでなさそうだ。
三上相変わらずはグリルの番をしている。
そして皆の興味は漂い始めた川魚の香りに代わる。
先輩の1人がじっくりと串焼き炉端コンロで焼いていたらしい。
強いて言えば千香良が焼きそばの袋を空ける手伝いをした。
バーベキューも〆の段階で、もう誰も見ていない。
三上の従妹と魚を焼いていた先輩が何やら親しげに話し込んでいる。
千香良はバーベキューも悪くないと思った。
そして帰りの車では三上と二人きり。
気を利かせてくれたのだろう。
三上の同級生に女子達は他の男子に送って貰うらしい。
女子2人なら安心だ。
それに今日集まっている男子諸君は不思議と警戒心を抱かせない。
千香良は本能が持つ危険探知能力も侮れないと感じた。
三上の車の助手席で千香良はリラックスしている。
「相葉さん……これからは千香ちゃん、って読んで良い」
照れる。
「じゃあ、私は真君だね」
千香良の成り行きに任すのも自分らしい気がした。
自宅に到着したのはまだ陽の高い時刻。
それでも三上は千香良の体を引き寄せた。
抗う理由はない。
千香良は瞳を閉じて初めてのキスをした。
三上の唇は湿っていて千香良と同じニンニクの味。
軽く舌先で唇の隙間を突かれた。
けれども千香良は開く術を知らない。
三上は千香良の頭を優しく頭を撫でる。
そして唇が離れていく。
「またライン送るよ」
「うん」
素早く車を降りた。
名残惜しさよりも、照れくささで爆発しそうだ。
はにかむ千香良に運転席の三上が手を振る。
発進する四駆を千香良も手を振って見送った。




